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I'm only sleeping


Title:I'm only sleeping
Rating:John,Paul(Fan-fiction)
Pairing:P/J?J/P? I Don't Know!
BGM:Randy Scouse Git(the Monkees)






「さて、どうしたもんかな」
 ジョンはそう一人言ちた。トラブルメーカーの自分がしでかしたこととはいえ、今回の騒ぎの広がり方には、まったく驚きの連続だといえる。

 最初は、友人に漏らした一言だった。

「キリスト教なんて、いつか滅びるんじゃないか? だって教会へ行く奴の数より、俺たちのライブに来る奴の方が多いじゃないか」

 友人は、笑って受け流した。インタビューとはいえ相手は気を許した人間だし、雑談じみた内容でもあった。

 しかし、土地が変われば受け取り方も変わるもの。その一言は、彼らの大手のお客様――アメリカで大層騒がれ、今までの態度を取って返したよう騒ぎになっていた。
 レコードが踏みつけられる。写真が焼かれる。
 一体今までどこに居たのか、すさまじい数の「アンチ」が現れて、それはそれは嬉しそうに、自分達や、自分達の今までを断罪している。
 わからねえもんだな、とジョンは疲れた身体をソファに沈めた。勢いのある時は見えなかったものが、ここにきて、よく見えるような感じがした。なるほど、自分は自分が思うほどには、受け入れられてはいなかったようだ。いや、それとも、騒ぎの尻馬に乗って、面白がって騒いでいるのもあるんだろうか。いやいや、元々大して好かれてなんか居なかったのかもしれない。
 今の自分と今までの自分と過去の自分を思うと、ついジョンの口から短い笑い声が漏れた。今まで、必死に走ってきた。デビューを目指して走りトップになるために走り、トップになったら、追い落とされないために走り、火の粉を逃れるために走り、ハードキャンディーが投げつけられようと雨にさらされようと、ピンバッチが飛んでこようと、とにかく走り続けてきた。
 そして、つい足元がおろそかになった。
 そしてこの、体たらく。
 自分とは、一体なんだったのだろう。
 機嫌がいい時には撫でられて、飽きたり飼い主の手を引っかいたら、手が飛んでくる。
 体のいい、ペットみてえなもんか。そんなことを思いながらジョンはおなじみの、違法タバコに火をつける。しかし、大概は三回吸い込んだら効いてくるのに、今はまったく効いてこなかった。
 『殺されるわ!』 アメリカに行くと聞いて、ファンの一人が泣いて叫んだ。まさかね、そう冗談にしたくても、その必死の形相が胸の奥から消えてくれない。ブライアンはまごまごしている。その様子が腹立たしくて、つい怒鳴ってしまったけれど、元々は自分が悪い。そう思ったら落ちこんで、ついでにマルが気を使って呼んでくれたかわいこちゃん相手にも役に「立って」くれなかった。悔し紛れに相手をベッドから引きずりだしてすっぱだかのまま廊下にたたき出す。そしてため息をドアにつく。弱いもんだなあ、男ってやつは。そう呟くが、今自分がやったことを考えて「どこがだよ」と思い直した。

 カーテンの向こうが、明るくなって行く。
 景色が広がってゆく。

 今、自分達を思ってくれている人間は居るんだろうか。
 世界は広いから、きっとどこかしらには居てくれるさ。
 そんな、楽観的なことを思いついても、次の瞬間覆される。
 『きっと、肩身の狭い思いをしてるんだろうな』
 そう思うと、自分の発言が恨めしくもあるし、「なんだってそんなことを拾い上げたりしやがったんだ」と相手を逆恨みにしそうになる。だめじゃん、自分。思考の堂々巡りで夜が明けた。まったく眠れなかったけれど、大して眠りたいとも思わない。弱いもんだなあ、男って。同じ言葉を繰り返す。

 いや、弱いのは自分だろうか。

 TVが「おはようございます」と、余計なことを明るくわめいた。




 そしてその日、ニールから決定的なことを聞いた。
 今回の騒ぎで一旦は懸案となっていたアメリカへのツアーは、中止にならなかった。
 ジョンは思わず絶句した。
「ブライアンが、アメリカに行ったんだろ。それで、どうして!!」
 どんなことがあろうとも、自分達を危険な目に合わせないと思っていたマネージャーの名前をだして、ジョンはニールに詰め寄った。『殺されるわ!』最悪のタイミングで、ファンの形相が思い起こされる。焼かれる写真、割られるレコード。怒鳴り声。全てがジョンを追い詰めていく。
「その、ブライアンが決めたんだ」
 ジョンの気持ちが分かって、ニールが辛そうに告げた。
アメリカに渡って、その様子を見て決めたんだ。騒いでいる連中は、派手に動いているから目立つだけで、他の人たちはお前達を待ち望んでいる。それに答えなきゃ、その人たちの信頼まで失ってしまう。
ジョンは再び絶句した。まさしく、それは正論だった。どう転んでも自分に勝ち目はない。

 例の声が耳に響く。『殺されるわ!!』
 まさかね、といいたいのに口が凍ったように強張っていく。

「ジョン、それで」
 青を通り越して真っ白になった顔色のジョンに、「後でブライアンからちゃんと話が来るけど…」と前置きして、ニールは言いたくもない言いつけを伝えた。ツアーを行う前に記者会見をして、今回の騒動をジョン自身から謝罪しなければならない、と。
 疲れきったジョンの頭は、その言葉の意味が一瞬取れなかった。
 しかし次の瞬間、怒りが疲れを凌駕した。ニールの襟元がすばやく掴まれて、ジョンにぐいっと引っ張られる。目の前が全てジョン、目の前が全てニールの状態で、ジョンが勝手な言い草を披露する。
「なんで俺が、わざわざノコノコ出張って頭を下げなきゃならねえんだよ!!」
「そうしなければ、話が収まらないんだ」
「ブライアンはアメリカまで行って、何してきたんだ!? やつはマネージャーだろ? 代わりに頭を下げて当然じゃないか!!」
「下げてきたんだよ、ジョン!」
 締め上げられていたニールがとうとう、耐え切れないとばかりにジョンを振りほどいた。そして自分の胸倉を掴んでいたジョンの力が思っていた以上に強かったことに驚いた。しかし、すぐに表情を改めると、諭すようにジョンに言った。
「ブライアンは、いろんなところで頭を下げた。キャンセル料の話が出た時は、すぐ小切手を切ろうとまでした」
「なら、なんで!?」
「今、言っただろ。これ以上信頼を失わないためだ! フィリピンで何があった。もう忘れたか!!」
 ジョンの息が、ぐっとつまった。大統領夫人の昼食会をすっぽかした話だった。
 それは、ジョン達のせいでばかりではなかった。ブライアンは断ったのだ。
「誰であろうと、ボーイズは午後3時以降ではないと動けません」
 しかし、相手はそれを冗談と受け取った。まさか、大統領の招待を断る輩も居ないだろう、と。
 しかし、彼らはそうした。
 そして、袋叩きにあった。
 もう二度とくるもんか、こんな国―――。飛行機が出た時、ジョンは履き捨てるように呟いた。
しかし、もしかしたら、そんな場所が確実に、もう一つ増えるかもしれない。それも、巨大すぎるあの国が、完全な敵になるのかもしれない。
「もう、そんなに時間がないから、会見の原稿を作らなきゃならない。原案をまとめる時間は取れそうか」
 襟元を調えながらニールがジョンに尋ねた。
 ジョンは、呆然と突っ立っていた。
「ジョン?」
 その様子を奇異に感じて、彼はジョンに近づくとその肩を叩く。
「聞いてるか?」
 その時
 ニールの肩に、ジョンが崩れこんだ。
 その腕を、ジョンは掴んだ。
 それは、胸倉を締め上げていた力と同じだった。
「ジョ」
 声をかけようとして、今度はニールが絶句した。
 ジョンは震えていた。
 まるで瘧にかかったように、身体が大きく震えている。ジョンが触れている場所全てから、細かい摩擦をニールは感じた。
 腕を掴んでいるその手が、汗で濡れシャツにしみこんでくる。
 ああ、そうか。ニールは分かった。胸倉を掴んだのは、あれは、こっちを締め上げていたのではない。
すがり付いてきてたんだ。
 今まで見てきた以上に、弱弱しく立ちすくむ旧友にかける言葉が見当たらず、ニールは、ただ黙ってその、音を立てて震える肩を支え、そのまま寄りかからせていた。

 書いては破り、書いてはペンをぐしゃぐしゃに走らせる。
 タバコは旨くないし、ただ無意味に時間だけが過ぎていく。
 ジョンの様子をみてシンシアが、ジュリアンをリバプールのミミの家へ預けた。だがそんな心遣いが、ジョンの心を逆撫でした。彼はとりあえずシンシアを一発平手で殴って、部屋に引きこもった。マリファナは効かない。LSDを決めたくても、そんなことをしている暇はない。しかし、眠れないから時間だけはあるような錯覚を起こす。
 弱いもんだなあ、男って。
 シンシアを怒鳴りつけた後、ふと空白になった頭にそんな言葉が浮かんだ。
 あれ、誰だっけ。こんなこと言ったの。
 ジョンは頭をかしげた。しかし、思い出せなかった。いらいらしたまま机に向かう。しかし、何が出てくるわけじゃない。
 そして、「もしキリストが女だったら、トップレスで十字架にかかったのかなあ」と考え付いて、ぐちゃぐちゃになった紙に、イラストを書いてみた。
 書き終わって「ふむ」と見直し、彼は笑った。
 笑いながら、絵を破り、引きちぎり、丸めて最後は回りにばら撒いた。「反キリスト、ジョンレノンがまたやりました!」と笑いながら。
 そこまでやっても、まだ眠れなかった。

 あれから何時間たったのか。
 カーテンを閉め切って、暗くした部屋では分からない。
 違法タバコの、紫の煙が立ちのぼる様を、ジョンはぼんやりと眺めていた。
 やめちまおうか、と思っていた。
 もう、グループなんて辞めて、今ココからどっかへ逃げて、ギターも歌も捨ててどっか田舎の片隅で、羊でも飼って暮そうか。ああ、そりゃあいいなきっとこの世で、ただの農夫を殺そうとする人間なんていないだろう。写真を焼かれることもレコードを踏みつけられることもない。大体、農夫がレコードなんてつくるか? 作らないだろ、普通。
 そんな、まったく建設的ではない考えに取り付かれて、つい面白くなってそのまま考えを進めていったら、「ジョン、羊に歌う曲を考えたよ」と呑気に笑うポールが現れた。むかついて、「だから俺はもう歌わないんだって」と、そう言って殴ろうとしたら
「歌わないの?」 と声がかかった。
 思わず身体が、飛び上がった。
 声の方に目を向ける。
 そこには、やはり驚いた顔を向けたポールが、「なんだよ」と呟いてこっちをみていた。
「懐かしい部屋の様子だなあ」と、ちょっと落ち着いたポールはぐしゃぐしゃになったジョンの部屋に、すいすいと入っていった。こんな状態のジョンには、シンシアだって近づけないのに、ポールは返ってそんな時は「僕、何も知りません」てな顔を浮かべて、ジョンの側に無遠慮に近づいていった。
「何しにきたんだ」
「様子を見に」
「余計なお世話だ」
「そうだよね」
 かみ合ってるんだか合ってないんだか、よく分からない会話を交わす。なんだかジョンはばつが悪くなって
「……懐かしいってなんだよ」
 と、ぼそりと悪態をつく。ポールはカーテンを開けようとせず、どさりとジョンの横に座ると、テーブルの灰皿から上がる紫煙を拾い上げ、これ見よがしに吸い込んだ。
「…これはひどいね」
 ポールが眉を顰めて言った。こんな代物じゃ、効かないよ。そう言って、ぎゅっと灰皿に押し付けた。
「上物のはずだ」
「そうかな、そうは思えなかったけど」
「売った奴はそう言ってたぞ」
「売った奴がそう言っただけさ」
 「ん?」とポールが首をかしげて、ジョンを見た。
 こっちがあせってるってのに、相変わらず呑気な垂れ目をしてやがると、ジョンは忌々しく思いながらも「そういわれたら、そうかもしれないなあ」と、ポールの言葉で自分の思考を考えなおした。人に言われて、そうなのかと思い込んでいることって結構あったりするのかもな。
 『ジョン、殺されるわ!』
 ここ数日、ジョンを脅かしていたこの叫びも、そう思ってみたら「ただ、そう思い込んでしまっただけなのかもしれない」とジョンは何故か起きているのに目が覚めた思いがした。『アメリカは、俺達を嫌っている』そう思い込んでいるだけ。『誰も俺たちの――俺のことなんて好いちゃいない』そう思い込んでいるだけ。『この公演は失敗する。KKKが空港に爆弾を仕掛けて俺達を抹殺しようとしてる』そう思い込んでいるだけ『男って弱いものだな』…そう、思い、こんでる、だけ。
 なんだよ、結局精神論じゃねえかとジョンは思い当たって、ポールに突っ込もうとした。しかしそう思っても、瞼が思うように開けていられない。身体から、力が抜ける。頭がやたら重く感じる。
 あれ? 効いてきてる? ぼやける目をこすってジョンは、「やっぱりアレは、上物だったんじゃないか」と心の中でぼやいた。隣を見ると、ポールはけろっとしている。その横顔はやっぱり呑気に見えた。
「…なにが?」
「へ? なにが?」
「なにが……懐かしいって?」
「ああ、その話か」
 なんてことないよ、ドイツを思い出したんだ。あの頃の部屋も、こんな感じだったよねえ。
 そういわれてみれば、そうかもしれない。「男所帯だったからな」とジョンは答えた。あの頃は夢中だったなあ。どこでボタンを掛け間違えたんだろ。
「裸でいるよりマシさ」
 そんな声が、聞こえた気がした。服の話じゃねえよ、と言い返すと「服の話じゃないの?」と聞き返してくる。なんだお前は、オウムか? と腹立ち紛れに突っかかると、なんだか聴いたこともないような、適当な鳥の鳴きまねが耳に飛び込んできた。
 それがやたらと可笑しく聞こえて、ジョンは思わず吹き出した。
 いつの間にか新しいタバコをに火をつけていた、ポールもつられて吹き出した。
その体温を肩に感じつつ、ジョンは身体を支えていられなくなっていた。知らずと、ポールに寄りかかっていくのを止めることができない。
 そして、ポールも特にそれを咎めることもなかった。
「歌わないの?」 隣から、尋ねる声がする。
 ああ、知らねえよそんなこと。重い頭をポールに預けながら、適当にジョンが答える。するとまた「歌わないの?」と尋ねてくる。「歌わない」「歌わない?」 そんな下らないやり取りを三回くらい繰り返してやっとジョンが頷いた。ああはいはい分かりました、歌いますよ。歌います!
 そして「フロムミートゥーユー」の出だしを超絶適当に口ずさむと、「ちょっと違う」と結構真面目な声が返ってきた。

 どこまでが本気で、どこまでが冗談なんだか。

 そんなことを思いながら、ジョンは100tくらいに感じる瞼を閉じて、これからのことを思った。
 分かったよ、歌っていくよ。
 結局は、それしか出来ないからなあ、俺
 写真も燃やせ。レコードも割れ。
 そんなことをしたって、俺の大事なモンは壊せない。
 片っ端から壊される横から、端から順に、また作っていくさ。
 作って壊して、壊して作って。莫迦みてえ。あ、でもコレも一つの会話(コミニュケーション)みたいなもんかなあ。
 なんだかよく、わかんねえや。
 「でもその前に、謝らないとねえ」
 誰かが、その時突込みを入れた。うるせえよ、と隣を見ようとしても、やっぱり瞼が邪魔をする。
 そしてジョンが久しぶりに寝入る直前、ポールの声が「ジョン、羊に聞かせる曲を作ったよ」といったような言わないような気がした。


 肩口にぐったり寄りかかってぐっすり寝入るジョンを見て、ポールは何故だかホッとした顔をすると、ゆったりと煙を吐く。
 そして「……うん、上物だ」と笑って呟くと、小さな声で歌いだした。


『メリーの羊は、雪みたく白い。そしてメリーが行く先々についていく……』 



 なんだ、やっぱり羊かよ。そんな寝言をジョンがいった。
 ポールが思わず、吹きだした。









                 861Hedge-hog’s
               「I’m only sleeping」
                  *the end*

※投下時にコレを読んで、不愉快な思いをされた方々に、心よりお詫びを。
…あ、でもそういう方は、改めてコレなんか読まないか。うわ失敗した(泣)。
莫迦をさらして、幾星霜(泣)。それでは、またノシ                     861

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最終更新:2009年12月20日 05:58