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Eの手紙――月曜日



ここに、一冊の物語があります。読みますか?
こんな奇妙な文で、手紙は始まっていた。ポールは差出人の住所もないましてや悪戯のような突然の手紙に驚いた。
ポールは首をかしげながらトーストをかじり、紅茶を飲む。アッシャー家のような家庭では行儀が悪いと思っていながらも、ポールは続けた。
目で、追ってみると更にこんな文章が続けられていた。
“この物語は、あなたにのみ読む権利を持った特別な物語です。もし、あなたがこの物語を読みたいと思うならこの手紙の返信を出して“YES”と書いた紙を白い封筒に、読まないのなら“NO”と書いた紙を黒い封筒に入れてポストに入れてください。
あなたがこの物語を読み始めたとき、あなたは必ずこの物語に名前が刻まれるでしょう。
あなたはこの物語を読み終わったとき、あなたにかかった魔法が解けあなたは物語となるでしょう。


愛をこめて  Eより“
「なんだ、悪戯か」ポールは手紙をくしゃくしゃに丸め、ゴミ箱に突っ込む。
ジェーンは、紅茶をすすっていた。「何なの?」彼女は、規則正しく音を立てずに紅茶を口に運び、トーストを食べている。
「うん、変な手紙が来たんだ。物語があって、もし読み終わったら読んだやつは魔法が解けて物語りになるんだってさ」ポールは呑気そうに云う。
「変な手紙ね。それになんだか不吉だし・・」ジェーンが眉間に皴を寄せる。そして、トーストの最後の一切れを口に放りこむと、ごちそうさま、席を立って流し台に食器を運んでいく。
今日は、ポールは久しぶりの休みなのでゆっくりしようと自分の部屋に向かい、昼寝をしようとする。
目をつぶってみても、やはりあの不気味な手紙が浮かんでしまう。
忘れよう、また目をつぶる。眠れない。ポールは、階段を下りてあの手紙をまた持ってくることにした。
すっかり皴皴になった紙を丁寧に広げ、読み直す。
“あなたがこの物語を読み始めたとき、あなたは必ずこの物語に名前が刻まれるでしょう。
あなたはこの物語を読み終わったとき、あなたにかかった魔法が解けあなたは物語となるでしょう。“
この二行が、なぜか引っかかる。くだらない、破ろうとしてもまた気になってしまう。
「ま、どうせ悪戯だろうけど、全部読み終わらなければ言い訳だし、書いたやつはどんなやつか見てやろうじゃないか」早速ポールは引き出しからペンと便箋を出してさらさらと整った流暢な字で“YES”と書き、白い封筒に入れポストに突っ込んだ。
外で、野良猫の鳴き声が雨音に混じって聞こえた。

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最終更新:2009年04月28日 16:02