03-368 :名無しさん@ピンキー:2010/12/03(金) 03:26:53 ID:KOU4EZ2c
「ダメだよローザ……君には彼氏が――イテッ」
舌を噛まれたらしい。
とっさに突きだした腕をかいくぐって、少女の柔らかな肌が
ぴったりとくっつく。
冷たい絹のような金髪が首筋を撫で、僕はひどくうろたえてしまった。
「ボーイフレンドなんていっぱいいるわ、ユーイチ」
最近ようやくたどたどしさが抜けた日本語。英語で話すときより
やや低い声が耳朶を這う。息をふう、と吹きかけられて
肌が粟立った。

「でも愛してるのはあなただけ」

つい三ヶ月ほど前までは、この少女からジャップだのチビだのと
散々いじめられていたはずなんだけど。
ボーイフレンドを使って僕を殴らせて遊んだのは誰でしたっけ……。

ただ、僕は嫌がらせの数々をいつもへらへら受け流していた。
理由はひとつ。面倒だったからだ。

一応ホストファミリーの一員なので彼女には優しくもしたし、
「ローザは本当にきれいだね。女神のようだ」と日本人らしさを
かなぐり捨てて褒めちぎったこともある。
殴られたときだって、最終的には叔父に鍛えられた空手で
ボーイフレンドをのしてしまった。

そのあたりから「見直したわ、ただの子ザルじゃないのね」
なんて少し態度が軟化して、そのうち「日本語を教えなさいよ」
と頼まれてよく話すようになって、

『仕方ないからジャップじゃなくて、ユ、ユーイチって呼んであげる』

『今日はエリックじゃなくてアランとデートなの。彼の家に泊るわ。
 ……ねえ、泊っちゃうわよ、いいの?』

『ユーイチ、日本語で愛してるってどう言うの? べっ別にちょっと
 気になっただけよ! 意味なんかないわよ! わかってるの!?』

あれ?フラグ立ってた?

走馬灯のように記憶を掘り起こしている間に、ローザは僕の
シャツを手際よく脱がせてしまった。
「ウィルに買ってあげたけどサイズが小さかったからあげる」と
ほとんど無理やりプレゼントされたブランドものの小奇麗なシャツ。
それが床にパサリと投げ出され、ローザの手が僕の胸を這う。

参ったことに、ローザはすでに生まれたままの姿だった。
「ユーイチ……」
柔いふとももで僕の腰を捕まえ、ローザが熱いため息をつく。
ちいさな爪先がツツツ、と僕の脇腹をつつき、くすぐったいより
別の何かがぶるりと沸きあがった。
どうしよう、いよいよ貞操の危機だ。


最終更新:2011年01月19日 11:36