「…………『法皇の緑』。自分の前に辺り構わず『触手の結界』を張り巡らせ……
 網状にして絡めとり……弾丸の威力を激減させた」
「でも血だらけじゃねぇかッ! 全部防げなかったんだろ!? 急いで傷を埋めて……!? 」

F・Fの手が止まった。いや、俺が止めた。
治療の邪魔をするなと言わんばかりの顔。刺し殺されそうな鋭い視線が今にも俺を貫きそうだ。だが、退くつもりはねぇ。

「止めろ……もう手遅れだ。傷口を塞いだとしても……流れた血液は戻らねぇ。
コイツはお前と出会う前から負傷に負傷を重ねて来たからな……どのみち失血死するぜ」
「ちょっと待てよッ! 確かにアタシと人間の造りは違うけど……
 アタシはこれまでどんなに酷い怪我をした奴も皆治療してきた。血液の代用が出来ていないとは限らねぇぞッ! 」
「じゃあ花京院の傷を全部埋めてる間に……こっちがどうなってもいいんだな」

俺は旦那を指差して、F・Fに詰め寄る。

「旦那はスタンド使いじゃあない……ただの人間だ。俺たちよりも脆い。
 片や治る見込みの薄いスタンド使い、もう片やほっとけば危険な一般人……どっちを治すかは明白だろうがッ!
 てめーだって酷い怪我なんだぜ? いくらプランクトンでもこれ以上『身を削る』って大丈夫なのかよ」
「一匹でもいれば『水』がある限りアタシは復活するぜッ! 」
「その『水』がないんだろうがよ……今ここにあるのは支給された『水』だけなんだぜッ!
まさか旦那や花京院の分の『水』を使うとか言いだすんじゃあねぇだろうな?
「何言ってんだ……アタシの持ってる水2つ分を使えば……ハッ!
 そうだ……アタシのディバッグは…… さっきエアロスミスの銃弾を受けて穴ボコになっちまったんだッ!
 やべぇ、やべぇよぉやべ―――――――――――――」


ドグォオ―――オオオオオオ―z___ンッッッ!!!



……泣きっ面に蜂ってのはこうゆう事を言うんだろうな。
慌ててバッグの所へ走っていくF・Fが光に包まれていく。
その光が……俺にはあの世からのお誘いにしか見えなかった。
それだけ……俺の精神も相当動揺してるってことか。
そんな気分にさせる位の現実が…………今、俺達を包んでやがる。


「熱……い……体が……焼ける………アタシのデェいバッグガァぁ……『火』を……吹いたァ……
 まるで……爆、弾でモ……仕掛……けぇられ……てた……みてーに……なん……て、こ、た……
『ライク・ア・ヴぁーじん』………子、機が……4、コ入っ、てた……それが……えあろすみすの……銃、撃で
 破、壊?……仕掛……け……られていた……爆、弾に……引、火……何と、かし、な、いと……皆…治せ、な……こ……
 こ、こ、焦げ、るゥ……焦げ……こげ……
 コゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲ……」


…………ナランチャ達も行方知れずだしよ……もう、駄目だな……このチームは。
完全解散だ……。

「旦那、ちょっとの間我慢しててくれや……」

俺は旦那を担いでこの忌わしき路地を後にした。
向かう先は【D-6】の病院だ。回復役が死んじまった今……俺にはこれしか旦那を治す手段は無いからな。
悪く思うなよ花京院、F・F……これはてめーらの自業自得だぜ。
お前らを恨んでたわけじゃあねーがよ……だからと言って救う義理はねぇ。
ま、ここまで無事に生き残れたのは素直に感謝してるがな……。
それじゃあな。俺が地獄に行ったら、天国から祝ってくれよ。

……ん?
……何だ……この大声は……誰かがスピーカーかなんかで喋ってんのか……?
………………………承太郎!? 4時から5時だって!?…………場所は…………なるほどな。
大体……理解したぜ……なるほど仲間集めをしようって腹づもりか。
だが今は旦那を病院に連れていくのが先だ。どうするかはその後考えればいい。
次から次へと……神様は中々休ませてくれねぇな…………。


*  *


視界がかすんでゆく……肉体が崩れてゆく……。

――――どうしたのかね……花京院君。折り入って話がしたい等とは――――
――――放送までもう時間がありません。ジョースター卿、単刀直入にお話したい事があります。
    …………ポルナレフの事です。奴の正体……奴の真意の全てをお話します……! ――――

ホル・ホースは……行ってしまった……ジョースター卿をつれて……。

――――……なるほど。彼もまた、DIOの腹心だったわけだな――――
――――僕はこれからF・Fさんやナランチャ君にもお話しようと思ってます。奴を野放しには出来ない――――
――――……花京院君、その必要はない――――

最初からわかりきっていた事だったのに……。

――――彼は……『J・P・ポルナレフ』だよ。正真正銘…………私達の仲間だ。
    君が言っているホル・ホースという男とは別人だよ――――
――――……なぜ奴ををかばうんですかッ!? あいつは絶対に我々を裏切りますッ! ――――
――――私達が最も憎むべき敵は彼ではない……荒木だ。
    今すべき事は……皆が一致団結して奴を倒すことなのだよ。それは彼もわかっているはずだ。
――――ジョースター卿……あなたはお人好しすぎます!! 奴は心の中であざ笑っている! あなたを! ――――
――――君がこれから……F・F君達にそんな事を言えば……彼らはポルナレフ君を問い詰めるだろう。
    だが、それだけでは終わるとは思えない。一度そんな事が起こってしまえば……。
    また誰かが誰かを疑い、問い詰め、争いを起こすやもしれん……。
    私は……皆がお互いを信じられなくなるような関係にはしたくはない――――

僕は……止める事が出来なかった……。

――――……もうすぐ放送だ。私はこれから1階のロビーに行くよ。F・F君たちがいるはずだ。
    花京院君も後でナランチャ君と一緒にロビーに来てくれ。勿論、ポルナレフ君の事は喋ってはいかんぞ――――
――――……ジョースター卿、あなたの考えはよくわかりました。この事は誰にも話しません――――
――――ありがとう花京院くん。君は本当に優しい青年だ――――
――――その代わりに約束してください……『1人で勝手にDIOに会わない』と。
――――なん……だと? 私が……DIOに?―― 
――――まさか気づいていないとお思いですか。あなたは……たった1人で奴と決着をつけようとしている。
    DIOは僕達の共通の敵のはずです。1人で全部背負い込もうなんて無茶です。
    僕達を巻き込きたくないから? ……ふざけないでください。
    卿が僕達に内緒でやろうといている事は……卿のおっしゃる『信じていない』のと同義ではありませんか。
    それだけは……止めると『約束』してください。絶対にッ!
    僕達を信じたいのなら……僕達を裏切る行為は止めていただきたいッ! ――――
――――…………君には適わないな…………わかった…………約束しよう――――

F・Fさん…………治、療を……。

*  *


俺、ナランチャ・ギルガはアヴドゥルを始末した後もジョンガリ・Aと共にいた。
早くジョージさん達と合流したいところだが、ジョンガリ曰くまずはF・Fさんの捜索が先決らしい。
彼女の持ってる『ライク・ア・ヴァージン』の親機から離れてしまうと、
ジョンガリの手首についている子機が爆発するからだ。
確かに今コイツに死なれたら俺が路頭に迷っちまうからな……付き合うしかねぇ。

「なぁ……ジョンガリよ……F・Fさんは見つかったのか? あんまり黙られても困るぜ」
「お前は俺に縛られた縄をしっかり持ってればいいだろう……俺は自分でこれを外せないんだからな」
「っつっても」
「ムッ! 今何か聞こえなかったか!? 」
「な、何がだよ」
「耳を澄ませろ……これは……」

――……しは!!!承太郎の支給品!!!ヨーヨーマッです!!!
  花京院!!!ポルナレフ!!!アブドゥルに連絡です!!!
  承太郎は!!!4時から5時まで!!!
  運命の車輪戦の休憩所!!!ダニエル・ダービー戦の戦場に居ます!!! ――

「い、今花京院とポルナレフって……」
「承太郎……空条承太郎か……我が心の支え……DIO様の宿敵……」
「おいおいジョンガリ…………?」
「…………花京院、アブドゥル…………これは……」
「おいジョンガリ聞いてんのかよッ! おめーまさかあの放送で言ってた場所へ行くんじゃあねーだろーなッ!? 」
「聞いてるぞこの腐れ脳みそ……F・Fの話を忘れたか? 全ては奴と合流してからだ」
「そ、そうかよ……後な、おめーが言わなくても今の話……俺はジョージさんに話すぜ」
「勝手にしろ。どうせこの大きさの音なら奴らも聞いているだろう」

……なーんか怪しいけど、俺もジョージさん達には早く会いたいし……。
まぁ、アヴドゥルの始末に色々と手助けしてもらったからな……さほど気にするまでもないか。

「おいナランチャ、ちょっといいか? 実は頼みがあるんだが……」


*  *


――……運命の車輪戦の休憩所!!!ダニエル・ダービー戦の戦場に居ます!!! ――

……花京院達との戦闘が終わった矢先にこのような“知らせ”を入れてくるとはな。
荒木……偽者の花京院の次は偽者の承太郎か? 【E-6】を根城にさせまいと私に餌を吊るしたつもりか。
片腹痛い。その手には乗らんぞ。せっかく汗水垂らして得た安息の場を捨てるはずがなかろう。
この【E-6】が見るも無残な景色になるまでは……私の背中が脅かされる環境にならない限りはここを動かん。
ナランチャ達は私がエアロスミスにやられたと勘違いさせたから、しばらくは安心だろう。
エアロスミスの銃撃による街の被害は小さくはないが、隠れる場所はまだいくらでもある。
天ぷらのカスが置かれたネズミとりのように……ここにやって来たネズミ共は確実に潰してやる。

「……なにかの間違いに決まっている…………何かの間違いさ」


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

……そう、意外とネズミという物は総じて鬱陶しいものだ。
何でも食べるいやしさ……、
場所を選ばず寝る浅ましさ……
ところ狭しと繁殖し続けるしぶとさ……
食う、寝る、子どもを産むの3つしか行動概念がない。

「ほら……しゃべり出すぞ……今にきっと目を覚ましてくれる……」

そのガツガツしたところが……自身が人間で良かったと私に気づかせてくれる。
やはりネズミはどこまで行ってもネズミだ。潰せる時に潰しておこう。
私と同じく、ヨーヨーマッという者の放送に導かれたネズミめ……これも定めか。

「アヴドゥルさん……そうでしょ?……荒木に操られているんでしょう?
 し……正気に戻ってくれ! たのむ……アブドゥルさん!! 」

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド





「生きていたか花京院……いや、花京院典明の……まがい物が」

* *


「……再起不能にならなかったのか? エアロスミスの銃撃で」

僕の目の前に立つ男は……僕の死に驚くわけでもなく、相変わらず冷静だった。まるで他人事のように。
思えば彼とは数十日の間しかの付き合いしかない。だが、彼は真に気持ちがかよう人間の1人だった。
承太郎とポルナレフはどこにいるのだろう。ジョースターさんやイギーのことを考えると背中に鳥肌が立つのはなぜだろう。
それは彼らが目的の一致した初めての仲間だったからだ。DIOを倒すという……目的!
この世界でもそれは変わらない。荒木を倒すという……目的!
いずれは彼らとも気持ちがかよい合っていたはずだ。ジョースター卿、ナランチャ君、そして…………

「アタシが……花京院を治療したんだ。間一髪だったけどな。
 ジョースターさんのおかげだ……あの人が自分に支給された水をこっそり置いていってくれたんだ。
 花京院の分の水だけじゃあ…………『水分』が足りなかったぜ。マジで感謝してるよ………」

……F・Fさん。感謝しているのはこちらのほうです。
燃え尽きようとするギリギリの所で、あなたは自分の体の中にあるほとんどのプランクトンを僕に注いでくれた。
ただ……その突貫工事のせいで彼女は首だけになってしまった。
ライク・ア・ヴァージンの爆破の被害も重なって、もとあった彼女の体は水分ゼロの死体となり、
彼女の首輪もライク・ア・ヴァージンの爆発で誘爆してしまったらしい。
今、彼女の生首は……僕の胸部と融合している。自分の体にもう一つの顔があるのは実に奇妙な感覚だが……。
水分共有の為とはいえ……首輪が無くなった代わりに僕の体に寄生しなければならないとは皮肉なものだ。

「いくら命の恩人とはいえ……いや人ではなかったか。そんなにその生首が大事か? 」

せせら笑う友人を僕は黙殺し『法皇の緑』を出現させる。
状況が状況なだけに本来の威力でエメラルドスプラッシュを打ち込むのは難しい。
そして本体が両肩を負傷しているとはいえ、『魔術師の赤』の戦闘力には適うとは思えないからな。
だがやるしかないッ!一瞬だ……全ては一瞬で終わる。近距離で、高圧縮に高圧縮を重ねて!

『おいアヴドゥル。こいつらビビッてるねっ! せっかく背中のハンデがあるのにさぁ~お前よっぽど強いんだねっ! 』
「黙ってろと言ったろうチープトリック。……花京院、貴様何か企んでいるな」
「答える必要はない! 」

背中から聞こえるチープ・トリックのヤジなんぞ気にしている場合じゃあない。
一歩ずつ距離を詰める……アヴドゥルさんは壁にもたれているから横移動しか出来ない。
彼が『法皇』の攻撃を左右に回避できるかどうかギリギリの距離まで、
つまり自分にとっては、彼の「C・F・H」が回避できるかどうかギリギリの距離まで……僕は詰め寄る。
そこに、合図などいらなかった。

「エメラルド・スプラッシュ!」
「C・F・H(クロスファイアハリケーン)ッ!」

*  *


……一つの闘いが幕を閉じた。
アタシはただ見てることしか出来なかったけれど……この二人の対峙は忘れないだろう。
徐倫の父親はこんな奴らと旅をしていたんだな。

「終わったな。花京院……アタシ達の勝ちだ」

花京院がホッと胸を撫で下ろしたのか、安堵の息がアタシの頭に吹きかかった。
『魔術師の赤』も動かなくなった。くちばし、両手、両足は完全に封じられている。

「『タイラップスネーク』……『法皇の緑』を糸状にして、『魔術師の赤』の手足とくちばしを縛り上げた。
 これでもう炎は出せませんし、アヴドゥルさんは動けません。いつもより高密度の糸ですから千切られませんよ」

最初から『C・F・H』はよける気満々で本当の狙いは生け捕りだったなんてなー……てっきり殺すんだと思ったぜ。
花京院の足下では、当のアヴドゥルが間抜けなポーズで座り込んでいる。
背中が見えないように壁にもたれさせたのは、花京院なりの武士の情けかね。

「アヴドゥルさん……聞いてください。僕はあなたを殺すつもりはありません。
 あなたが何故僕達を殺そうとしたかはわかりませんが、何か事情があるのでしょう。
 しかし出来れば……アナタに協力してもらいたいのです。荒木、DIO打倒の手助けを」

……はあああ!? 何言ってるんだよ花京院ッ!? 依頼はともかく理由を言えーーッ!!

「あなたならきっと妙案を思いつくはず。
 ……この街は謎だらけです。あなたは何故生きているのか……?
 そしてF・Fさんは首輪が破壊してもどうして何事もなく生きていられるのか……?
 首輪なんて彼女には何の脅威にもならない事くらい荒木だってわかっていたはず。
 とにかく……僕はあなたを僕達の仲間として改めて迎えいれたいのです……ナランチャ君は怒るでしょうけど」

もう……びっくりし過ぎて声が出ねえ……どんだけお人好しなんだよ……ハッ!

「もしジョースター卿がここにいたら……きっと僕と同じ事をしたと思うんです。
 あなたは僕を信じていないかもしれませんが……僕はあなたを信じますよ。それが『仲間』でしょう?
全ては……そこから始まるんですかっ……ら」

……すげー……すげーよ花京院。お前のような奴を……本当の仲間っていうんだろうな。
過去にアタシと戦った徐倫を見てるみてーだ。あの時も……アタシはこんな感じで生首状態だったんだよな。
アヴドゥルは声には出してあいが、顔を見れば驚いていることがありありとわかる。
そりゃそうだよな。仲間のアタシだってびっくりしているんだから。
まぁ……これでひとまず一件落着ってところか。
アタシも本格的に回復しないと皆の治療は出来ないし、ジョージさん達も探してぇ(ポルナレフは後でボコるがな)。

「なぁ花京院……そろそろジョンガリにやった時みたいに『法皇の緑』を侵入させたらどうだ。
 アヴドゥルの体内によ……今のお前じゃ運ぶ気力はねぇだろ? 」

その時、アタシの頭にポタポタと何かが垂れてきた。なんだ? 雨……か?
こんな街でも雨が降るんだな。荒木が支配した世界だから常に晴れ模様だと思ったのに。
今のアタシは顔を見上げる事が出来ないから雨が見えないのが残念だが、これで完全回復が出来るぜ。

「なぁ花京院……アタシ達はマジで運が良いよなぁ……? 」

*  *


「お~いジョンガリィ……どうだ? 色々とわかったかよ?」
「ああ、色々とわかった。これでお前のスタンドの基本性能は把握した。
 弾丸のスピード、射程距離、破壊力……面倒をかけたな」
「別にいいって……しっかしジョージさん達遅いよなぁ……全然現れる気配がしねぇ。
 やっぱり何かあったんじゃあねえか? その腕輪も警報鳴らさなくなったしよぉ」
「わからん……だがこの腕輪はF・Fと俺が近づきすぎると警報を鳴らさなくなるからな……」

ヨーヨーマッというスタンドからの放送を聴き終えた俺達は、しばらく【E-6】の端にいた。
ライク・ア・ヴァージンが爆発する様子もないし、いずれジョースター共がここに来るだろうと考えた。
そして奴らが俺達の所に来るまでの時間稼ぎの為……ナランチャに頼んでエアロスミスの性能を調べさせてもらったのだ。
だがこれは建前。
ナランチャにはまだ話していないが、我がマンハッタン・トランスファーは弾丸の進行方向を変える能力がある。
エアロスミスの弾丸が俺のスタンドでも運搬可能なのか……これが本当に調べたかった事実。
スタンドの発射する弾丸にそれが通用するかどうかは微妙な線だったが……どうやらこの世界では可能らしい。
嬉しいよ。これで俺はますますナランチャを利用できるんだからな。
ライフルの時のように一度に何発まで転送可能なのかはわからんがな……少なくとも転送は可能なわけだ。
しかし……てっきりジョースター共と一緒にいると思っていたのにな。
風の流れでお前達を発見した時は本当に感動したよ。
エアロスミスがアヴドゥルを攻撃して間もなく、俺の体に巻きついていた『法皇の緑』がほどけて消えた時……
まさかとは思ったが……よりによってアヴドゥルと行動を共にしていたとはな。……どうゆう風の吹き回しだ?
俺は風の流れを察知する。アヴドゥルは……仕留め損ねたみたいだな。ナランチャには黙っておくか。
これで二回もミスをしたことになる……チッ、久々の転送能力の使用で勘が鈍ったのだろうか……。
流石にもう一度狙撃したらバレるかもしれん……まあいい。弾丸は確実に頭部を破壊したのだからな。
誰も俺が暗殺をした事実に気づいてはいまい……弾丸を撃ったナランチャ本人ですらな……クックックック……



これでカリは返したぞ……………花京院典明!!


*  *



*  *


「うわああああああ花京院ンンンーーッ!!しっかりしろぉーーーッ!! 」

……何が起こったのかわからなかった。
私、モハメド・アブドゥルを説得していた花京院典明が……気がつけば頭から血を流し、脳漿を垂らしていた。
当然奴の体はそのままバランスを崩して地面に倒れ臥す……私を拘束していた『法皇の触手』もボロボロになって消えた。
今は……生首女が花京院に大声で叫び続けているが、返事はない……まさに一瞬だった。
生首女は私の顔を睨み付ける。奴の髪は花京院の頭から流れた血ですっかり真っ赤に染まっていた。
だが、私には何も言い返すことができない。
私にも状況が理解できていないことは……向こうにもわかっているだろうがな。

「アヴドゥルッ!てめーの水をアタシに借せッ! てめーの水分を利用して花京院の傷を治療するんだ」

何を……馬鹿な事を言ってるんだコイツは。頭が吹っ飛んで脳が出ているんだぞ。治療もクソもない。
しかも私の体から水分を抜くだと……ふざけた事を言ってくれるな。
そんな言い分が通ってたまるか。ただでさえ私はコイツ……花京院のことを疑っているのに。
だが……気になるといえば気になる。偽者にしては……意外にも正義の意志を私は感じた。
それほどまでに……精巧につくられているのだろうか……昔戦った『審判』の土人形ですらここまでのレベルでは……。

――……この街は謎だらけです。あなたは何故生きているのか……?
  そしてF・Fさんは首輪が破壊してもどうして何事もなく生きていられるのか……? ――

うーむ……反論したい事もあるが、確かにこの世界は不思議なことばかりだ。
荒木も一度私の炎をかき消しているし……一体全体どうなっているんだ?

「おいッ! 時間がないんだよアヴドゥルッ! 水分ならなんでもいいんだよボケッ!
お前の体でもいいんだよォォ水分があればァァ……さっさとよこせよコン畜ショォォッ!? 」
「……調子に乗るなよ下等生物がッ! 頭部を破壊されて無事な人間がいるか……それとも何か? 
 この花京院は水をかけたらすぐ元に戻る土人形とでも言いたいのか?
 確かにこいつが言っていた謎や仲間云々には一理あるが……だからといって偽者を治す義理はないッ!
第一何故この私が見ず知らずの貴様なんぞの頼みを受けねばならんのだ…………

 プランクトン如きが偉そうな口ぶりで命令するんじゃあないッ! 」

下等生物を横目に私は花京院からディバッグを奪い取る。
そして私が合図を送ると、『魔術師の赤』は目の前にいるうるさい生物に炎を炸裂させた。
炎は段々花京院の死体にも広がっていき……一気に全てを焼き尽くしてゆく。

「うおぁぁぁぁぁぁぁぁみんなァァァァ徐リィィィィィィン………………」

奴が黒コゲを通り越し完全に消滅してゆくのを確認し、私はバッグの荷物を確認する。
肩が少しばかり痛むが我慢して調べてみるとそこには食料一式、アーミーナイフか。
食料意外、どれも私には必要のないものだな。ついでだ、こいつらもまとめて焼却処分してしまおう。

「ん?……何故だ? これは……CDか?それも二枚。何故だ?ナイフは黒コゲになったというのに……。
 まるで壊れていない……これはいつからあったんだ? ……まあいいか。別にこんな物に興味はない」

……こうして、新たな食料を手にいれた私は今、偽者の花京院との決闘の場を後にしようとした。
しばらくはこの【E-6】に潜伏しよう。街が崩壊して隠れる場所が無くなったらまた考えればいい。
ん?……そういえばチープ・トリックはさっきからずっと黙りっぱなしだな。まさか消えたなんてことは……。

『何こっちを見てんだよ……喋られたら困るんだよねっ? だから黙っててやったんだからねっ!
 勿論……誰かとまた遭遇したら能力説明するんだけどねっ……』

やはり現実はそう甘くはないか。
こんな事だったら支給品をちゃんと確認しておいて、紙を誰かに開けさせるんだった。
……あの半狂乱のハンサム男とかにな。


*  *



ハアッ……ハアッ……冗談じゃあねぇ……冗談じゃあねぇよォ……。
広瀬康一……なんて事しやがるんだよォ……ゲームに乗ったとか、スタンドで言い触らしやがってッ!
畜生……耳が痛ぇ。
おかげでどいつもこいつも容赦無く俺を襲ってきやがるゥ……もう嫌だ、俺はもうゴメンなんだよォ。

仲間呼び集めたきゃ勝手にやっててくれよォ……そんなに人を殺したいんなら俺以外の奴を殺ってろよォッ!
あのブ男……『ホテルから出てきた奴らを襲うフリをしろ』とか無茶な命令しやがって……。
危うくこっちは死にそうだったんだぞッ!
火……火…火ィィィ……火なんかッ使うんじゃねぇよッッ……。

ああ……もう、限界だ………隠れよう……街の外れに……ひっそりと隠れよう……。
あそこがいいな……あの別荘地帯の辺りなら……流石に誰も来やしないさ……きっと……。 





【別荘地帯への道(D-7)/一日目/日中~午後】
【噴上裕也】
[スタンド]:『ハイウェイ・スター』
[状態]:無傷。疲労。全身に返り血。錯乱。耳が痛い。
[装備]:無し
[道具]:無し
[思考]:
1)死への恐怖 。康一のエコーズの断末魔が他の人に聞かれていないか不安。
2)特に、ジョースター一味やリキエル達に出会い、殺される事への恐怖。
※噴上の走り去る方向は北(別荘地帯)です。
※ヨーヨーマッの放送は聞いてました。


【お人好し過ぎる司令塔をフォローする会(会員2名・非会員ジョージ他1名)A班】
【杜王町東の病院の近くの道(E-6)/1日目/日中~午前】

【ジョージ・ジョースター1世】
[スタンド]:なし
[時間軸]:ジョナサン少年編終了時
[状態]:腹部に一発銃弾が被弾。未治療。
[装備]:レミントン2連装デリンジャー(予備弾あり)、トニオさんの包丁
[道具]:支給品一式(狙撃銃の予備弾、水はありません)ライター
[思考・状況]
1) 気絶?
2)【E-5】へ拠点を移し、今後の策を練る。
3)危険人物相手には実力行使もやむを得ないが、出来る限り争いは阻止
4)荒木の打倒
※『ホル・ホースの正体を花京院がバラさない』の交換条件として『第三放送後一人でDIOに会わない』に合意しました。
※ホル・ホースの正体に気づきましたが、知らない振りをしています。
※アヴドゥルが炎の探知機が使えることをしりません。

【ホル・ホース】
[スタンド]:『皇帝』
[時間軸]:エジプトでDIOに報告した後
[状態]:軽い怪我は全身にしているが、F・Fの治療により大体健康
[装備]:狙撃銃(フル装填)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
1)旦那……しっかりしな。
2)病院へ行こう。アヴドゥル、ナランチャ達とはこのまま会えなくなってもいい。
3)第三放送後に杜王グランドホテルへ行く予定だが、あくまで予定。
4)ジョージを上手く利用してとにかく生き残りたい
※ジョースター卿が、DIOの父親ということはやっぱおかしいと思っています。
※DIOから『ジョナサン・ジョースター』の名を『肉体を奪った相手』という情報と、
 プッチ神父がDIOの仲間だという事を忘れています。(ナランチャの伝言を聞いてもピンとこなかったようです)
※アヴドゥルが炎の探知機が使えることをしりません。


【お人好し過ぎる司令塔をフォローする会(会員2名・非会員ジョージ他1名)B班】
【市街地(E-6)/1日目/日中~午前】
【ナランチャ・ギルガ】
[スタンド]:『エアロスミス』
[時間軸]:ヴェネチア入り後
[状態]:失明(F・Fの処置により傷は塞いだが、視力は全く回復していない)
[装備]:ヌンチャク、ハート型の飾り(@DIO)
[道具]:支給品一式 ・拾ったガラスの破片
[思考・状況]
1)ジョージさん、F・F達と合流したい。
2)1の後、E-5へ移動する。
3)DIOは恐いが、DIOを恐れて人を殺すのはもっとイヤだ。
4)ブチャラティやジョージさん達に会いてぇ。まさか、俺みたいになってねぇよな?
5)色々ありすぎてこんがらがってきた。わけわかんねぇ。
※ナランチャは、マンハッタン・トランスファーの能力を『気流を読んで情報収集』だと思ってます。
 銃弾の進路を曲げ、中継する能力をまだ知りません。
※アヴドゥルが炎の探知機を使えることを知りません。
※アヴドゥルは始末したと思っています。
※自分が花京院を殺したとは気づいてません。

【ジョンガリ・A】
[スタンド]:マンハッタン・トランスファー
[時間軸]:徐倫にオラオラされた直後
[状態]:胴にF・F弾の傷(止血はして貰ったが、F・Fの治療は無し) 両手を縛られた状態。
    逃げられないようにナランチャが縄紐をしっかり持っている。
[装備]:無し
[道具]:『ライク・ア・ヴァージン』子機(右手首装着)
[思考]:
1)F・F(『ライク・ア・ヴァージン』の親機)を探した後、【E-5】に行く。
2)ナランチャを利用して、ディオ以外の人物の抹殺。
3)DIO様の伝言は何か、ナランチャから訊き出す。
4)3の後、こいつらから逃れる術を見付ける。(ヨーヨーマッの放送も意味も気になる)
5)徐倫の名前が放送で呼ばれたら、その12時間後に『トラサルディー』へと舞い戻る。
※ジョンガリはアヴドゥルが炎の探知機を使えることを知りません。

[備考]:『ライク・ア・ヴァージン』子機×1
    『ライク・ア・ヴァージン』は、優勝者が身につけていた場合、『荒木』が解除してくれます。
    それ以外の方法では事実上『解除』は不可能に近く、親機から50m以上離れた子機は爆発します。
    威力は手首を吹き飛ばすに十分なもの、下手すれば死ぬこともありえます。
    また、爆発の前や親機から離れすぎると警報音が鳴り響きます
    【E-6】のどこかに黒コゲになった親機がありますが、警報が鳴らなくなった理由はF・Fの首輪の破壊です。
    これにより持ち主=死亡と誤認されたために機能凍結し、アヴドゥルが燃やした事により機能停止しました。

【市街地(E-6)/一日目/日中~午後】
【モハメド・アヴドゥル】
[スタンド]:『魔術師の赤』
[状態]:両肩破壊。両肩にダメージ。両腕が辛うじて動かせる程度
[装備]:背中に『チープ・トリック』
[道具]:支給品一式(食料のみ2人分)
[思考・状況]
1)『ゲーム』全てを自分の幻覚の世界だと思い込み、スタンド能力の本体である荒木を倒そうとしている。
2)登場人物は全て荒木のスタンドの一部なので、全員自分を騙し攻撃しようとしていると思い込んでいる
3)街が崩壊するまで【E-6】で潜伏。待ち伏せて敵を倒す。
※アブドゥルは『チープ・トリック』の存在に気づいています。
※花京院の言っていた言葉がちょっと気になっています。
 ・自分が生き返ったという花京院の意味
 ・F・Fの首輪に対する謎
※アヴドゥルは、マンハッタン・トランスファーの能力を『気流を読んで情報収集』だと思ってます。
 銃弾の進路を曲げ、中継する能力をまだ知りません。

※【E-6】の花京院の遺体とF・Fが燃えた尽きた物の側にはこれらが放置されています。
 ・アーミーナイフ(黒コゲ)
 ・フー・ファイターズのスタンドDISC(スタンド能力が使用可能になるかはわかりません)
 ・フー・ファイターズの記憶DISC
 (体内に装備すると『F・Fがアヴドゥルに燃やされるまでの記憶』が見れる可能性があります)     
※・『ライク・ア・ヴァージン親機』は【E-6】のどこかにありますが、
  F・Fがライク・ア・ヴァージン子機×4の爆発に巻き込まれた為、黒コゲになっています。


【花京院典明 死亡】
【F・F    消滅】


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94:《UNLUCKY COMMUNICATIONS》 その② 花京院典明
94:《UNLUCKY COMMUNICATIONS》 その② ナランチャ・ギルガ 98:因果
94:《UNLUCKY COMMUNICATIONS》 その② ホル・ホース 98:因果
94:《UNLUCKY COMMUNICATIONS》 その② ジョージ・ジョースター1世 98:因果
94:《UNLUCKY COMMUNICATIONS》 その② F・F
94:《UNLUCKY COMMUNICATIONS》 その② ジョンガリ・A 98:因果
94:《UNLUCKY COMMUNICATIONS》 その② モハメド・アヴドゥル 98:因果
94:《UNLUCKY COMMUNICATIONS》 その② 噴上裕也 102:『誤解』と『信頼』

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最終更新:2008年02月05日 16:49