檻と鍵
彼は檻の中に居る事に気付いた。
檻の外に、知らない男がいる。
檻には頑丈な鍵が掛けられていた。
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「私は何故、此処にいるのですか?」
彼は男に聞いた。
男は少し驚いた顔で言った。
『そんな事、私は知りませんよ。
貴方が自分でいらっしゃったんじゃないですか。』
「私が、自分で?」
『それとも誰かに連れて来られたのですか?』
「いえ、覚えがありません」
『なら、ご自分でいらしたのでしょう。』
「こんな場所に?何故?」
『私もいるのに、こんな場所とは、言ってくれますね。
貴方が何故居るのか?私は知りませんよ。』
「貴方は檻の中に居る訳じゃないですから、
立場が違いますよ。」
『檻の中ですって?此処は檻なんですか?』
彼は鉄格子を挟んだ先の男を凝視した。
まさか、檻を知らない訳ないだろうに。
「ええ、どう見ても檻ですよ。
そして、貴方は檻の外、私は中。」
しばし沈黙が流れると
男は訝しげに口を開いた。
『好きで其処にいらっしゃるのではないので?』
「まさか。こんな場所が好きだなんて。」
『嫌なら、嫌ではない場所に行けばいいですよ。』
彼は信じられない、という顔で男を見た。
「行けるなら、とっくに行ってますよ。」
『行けないのですか?』
「頑丈な鍵がついてますからね。」
『鍵が?』
「ああ、そうだ。
此処にいるって事は、貴方、鍵をお持ちではないですか?
開けて戴きたいのです。私はここから出たい。」
男は困ったように言った。
『私が其れに見合った鍵を持っているのか、
そしてどれがその鍵なのかもわかりませんが…
そんな事より…。』
少々、迷ったように口篭った男は
決心した様に再度口を開いた。
『そこに鍵なんて、掛かってませんよ。』
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Q.どちらの言い分が本当なのか。
この中にどちらが真実、なんて事はない。
真実は、ない。
其々の事実の話。
A.答えはどちらも事実。
最終更新:2007年04月21日 04:16