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マザー・セラとマザー・ユーナの居る司令室。
スティーブからの通信が途絶えて数十分。既にデコイの職員達がまた席を埋めており、各拠点との通信や電子的な地図などが画面に映し出されている。
そんな時だった。ある通信が届いたのは。
「カーネル・ジョンソン警部からです」
マーク・ウィルクスが、二人のマザーへとそう告げる。
「分かった。出せ」
やがて、司令室内のスピーカーの一つ、マザー二人に近い席のものから、カーネル・ジョンソン警部の声が聞こえてきた。
『マザー、プリズナの町に至急連絡したい事項があるのだが、可能か』
「向こう側の人手不足でな、現在こちらから連絡の取れる人間はレオン・トラヴァースだけになるが、伝えよう」
少しの沈黙の後、カーネル警部が言葉を継ぐ。
『プリズナの町の件がジェラルド・クルーガーに知られた』
「…そろそろだとは思っていた」
プリズナの町をビートルジュースの『ゲーム』が襲ってから、まだ一日ほどしか経っていない。
だが、それは『まだ』と見るか『もう』と見るかで変わる。
既にマスコミはプリズナの町で起きた事象について、声高に書き立て始めていた。
事が事だけに、マザー達が持っている権限だけでマスコミを黙らせられるわけも無く、また町の住人全員が目撃者だ。彼らの口を塞ぐのはマスコミ以上に至難の業に近いだろう。
「それで、あ奴はどういう行動に出るつもりだ」
『マスコミが流した映像に、プリズナの町の住人が撮影した当時の映像があった。そこに、戦闘を行うクロウ・エリュシオンの姿も確認されている。この映像がジェラルドに伝わりました』
カーネルの言葉に、セラは舌打ちした。
町の住人が撮影をしているという可能性は考慮に入れていないわけではなかった。だが、ロックマン・ミラージュの戦闘がしっかり映っていたというのはまずい。
「それじゃ、まさか…?」
ユーザの言葉に、カーネルは相槌を打つ。
『ええ。こっちでは未だにクロウ・エリュシオンは警察車両を襲撃した一味とグルと見なされている。重要参考人として、逮捕に向かう準備を進めています』
「プリズナの町の警察にも連絡を入れているのか」
『それについては…恐らくそちらで起こった事件の影響でしょうが、まだ電話が繋がらないらしい。電話が繋がり次第、クロウ・エリュシオンを逮捕するように連絡を入れるつもりだ』
「時間の問題というわけか」
セラがマーク・ウィルクスに視線を向ける。
彼は少し考えつつ言葉を紡いだ。
「まだ事件から一日程度しか経っておらず、市民の混乱も収まっていない筈。プリズナの警察も、まずは組織が正常に動くように再編してるでしょう。それとは別に、町の外への連絡も急務の筈だ。電話線の修理もまた迅速に行われている最中でしょうね」
「…時間はあまり無い、というわけね」
冷や汗を流してユーナがそう呟く。
通信機から、カーネルが再び言葉を告げた。
『電話が繋がらないことに、ジェラルドは痺れを切らしています。プリズナへと人を派遣するのも時間の問題かと』
話の内容に、セラとユーナが視線を交わす。
そしてセラは、通信機越しにカーネルに言葉を告げた。
「良く分かった。その件以外に報告する事項はあるか」
『さてね、連日街のどこかで分裂したマフィアの抗争が発生してます。一々報告してたら日が暮れますよ』
「分かった。協力に感謝する。プリズナの方には必ず伝えておく」
こうして、セラはカーネルとの通信を切った。

「レオンとの通信は」
「約2時間後に彼の方から定時連絡してくる手筈です」
ウィルクスの報告に、セラは頷く。
「他に通信が繋がる者はいるか」
「スティーブ・ハントは行方を晦まし、ゼゼは動けず、クロウ・エリュシオン当人も同様。レベッカ・ファーガソンもまだ病院で覚醒したという報告を聞きません。レオン以外は動けないのが実情ですね」
彼の返答に、苛立ったような声でユーナが尋ねた。
「もどかしいわね…こちらから彼に連絡はできないの?」
「それが…彼も我々からの指図を受けるのが嫌なようで、定時連絡の時以外は通信機を切っています」
「むう…連絡してくるだけマシと思った方がいいのかな」
焦ったように声を漏らすユーナ。
「少なくとも」
腕を組み目を瞑って、宣告するようにセラは言った。
「このままロックマン・ミラージュ…クロウ・エリュシオンを逮捕させるわけには行かん。レオン・トラヴァースと連絡が取れ次第、あ奴を町から出す算段を立てる。それで良いな?」
ユーナとウィルクスは頷いた。


早朝から店の準備を始めたケイン・アースガルド。
ジャックとミラは一日前の惨事から一転して、警察から事情を聞かれたり色々あったが、今は二人とも各々の自宅で、まだ寝ている時間だ。
ビートルジュースの『ゲーム』が終息し、日が暮れてからここまで、騒動の収集にケインも動き続けた。そして一睡もしないまま、もうすぐ朝が訪れようとしている。
流石にそろそろ自分も休まなければならないが、きっとこの店の常連達は、こんな時だからこそ集まって酒を飲みたいだろう。
そう思うと、店の支度をせずにはいられないケインなのだった。
そんな時。
「どうした。こんな朝早くに」
まだ準備中の札を掲げた彼の店に、一人の男がやってきた。

「礼を言いに」

大きなボストンバッグを肩から下げ、ジョン・クラフトはケインに頭を下げた。


最終更新:2022年10月16日 20:56