アットウィキロゴ
燃え盛る炎。辺りを覆う死臭。
あちこちに瓦礫や破片が散らばっている。
クロウがこの戦艦に侵入した時に開いていたシャッターは、塞がってしまっている。
偶然にも、シャッターを覆う様にして人型の兵器の残骸がそこに倒れていたからだ。
ここからは脱出できそうにないな、とクロウはぼんやりと思った。
だが、直後に背中から走った激痛に、そんな考えは一瞬にして消え去った。

「ぐうっ…!!」
目の前のウォルフは、未だ銃を構えたままである。
そのウォルフを避ける様にして、一瞬よろめいたクロウは地面を蹴った。
「な…に…!?」
撃たれた。後ろから。
ウォルフに神経を集中していたクロウは、背後の殺気に気づくのが一瞬遅れてしまった。
銃弾はアーマーを易々と砕き、クロウの右肩に多大なダメージを負わせる。
「おや、どうやら少しばかり腕が鈍った様ですね」
クロウの背後にいた人物は、そう呟いた。
地面を蹴ったクロウは左に横っ飛びし、ウォルフと背後の男から遠ざかる。
そうして着地した所で、やっとクロウは自分を撃った者の顔を確認できた。
「なっ…!!」


部屋にノックの音が響いた。
部屋の主は背中で腕を組み、部屋の奥の窓から外を眺めながら、言った。
「入りたまえ」
ドアがゆっくり開き、一人の男が入ってくる。
「失礼します、署長」
「…今君に構っていられるほどの心の余裕が私には無い。用件だけ言ってくれ」
部屋の主である署長は、ずっと窓から見える夜景を見つめ続ける。
既にあと1時間で朝日が出るという時刻である。
部屋に入ってきたカーネル・ジョンソン警部補は言った。
「…少し現場の状況が気になりましてね。
ICSOという組織の活動ぶりはどうなのです?」
「…これはあまり口外して欲しくないのだが、君を信用しているからこそ話す。いいな」
そう言うとようやく、署長は振り向いた。その顔には疲労の色が滲み出ていた。
目の下には隈ができ、頬も心なしか痩せ、普段は立派な髭も今は萎れている。
署長は、専用の通信設備が設置された自分のデスク座ると、静かに言った。
「隊員の一人が裏切ったらしい」
途端に、カーネル警部補の顔に緊張の色が浮かんだ。
「更に先程の報告では、現場は莫大な数の死者が出ているらしい。
私の胸中を察してくれ、カーネル君」
そう言うと署長は、暗い顔のまま俯いた。

「オウル警部と話がしたいのですが、できますか?」
そんな署長の表情をよそに、カーネル警部補ははっきりした口調で尋ねる。
数秒間署長は絶句していたが、気を取り直して言った。
「…カーネル君、今言っただろう。
私もオウル君も、今君に構っている余裕など無いんだよ」
カーネル警部補は、事務的な口調のまま言った。
「私の報告がそちらの…空族退治の件に関係のある事でも、ですか?」
「カーネル君、君には君の仕事がある筈だ。無駄な事に労力を使えとは命じていない」
もう我慢できないとでも言う様に、カーネル警部補は声を張り上げた。
「『私の仕事』をしている時に偶然知った事なのです!
署長、あなた方の心労は十分察していますが、これはそれ以上に重要な話です。
オウル警部に繋いで下さるまで、この部屋を出て行くわけには行きません!」
疲れていたせいか、署長は簡単に折れた。
「もういい、分かった。君の好きにしたまえ」
署長はデスクの通信機のスイッチを入れ、オウル警部側に呼びかけた。
「警部、聞こえるかね?」
『署長?一体どうしたのです』
署長とは対称的に、オウル警部の声は未だ緊張感を帯びていた。
「カーネル君が君に報告があるそうだ。私は止めたのだが、どうしてもと言うのでね」
署長に続いて、カーネル警部補は通信機に呼びかけた。
「ICSOのアルバート・ブライアン隊長はそこに?」
『…何の用だ』
アルバートは、これ以上何も聞きたくないとでも言う様な、不機嫌な声で応じた。
「まずは挨拶を。私は警部補のカーネル・ジョンソンという者です。以後宜しく。
 そして、早速一つお聞きしたい。あなたは他の隊員と、どこで初めてお会いに?」
『…何を意図した質問だ?』
「答えて頂きたい。以前より知り合いだったのか、それとも…」
カーネル警部補の言葉を遮る様に、うんざりした声でアルバートは言った。
『うるさい、分かったから黙れ…!…空港だ、この島の』
「な…!」
警察署側の署長と、現場側のオウル警部が驚愕の声を上げたのはほぼ同時だった。

「つまりあなたは、この島に着いてから初めて部下の二人と顔を合わせた。
しかし組織のメンツの為、もしくは我々への対抗心からか…それを言いはしなかった」
あくまでも冷静に話を進めるカーネル警部補。
対して、やはりアルバートは不機嫌そうに言った。
『今更そんな事が判明した所で、何の意味がある?』
「それについては後ほど。それよりも、もう一つ質問があります。
空港で部下達と合流した後、あなたはどこへ行きました?」
このカーネル警部補の質問は、アルバートを怒らせるには十分だった。

ついに耐え切れなくなったアルバートは、怒鳴り声で返答した。
『警察署に決まっているだろう!!
これは尋問か?誰の許可を得てやっている!?
尋問ではなく報告と言うなら、もったいぶらず、早く済ませろ!!』
「言われなくとも、そのつもりです」
冷ややかにカーネル警部補は答え、話を始めた。
「アルバート隊長は御存じ無いかも知れないが、私はある殺人事件を追ってましてね。
丁度、この作戦についての会議があった日に起こった事件です。
ゴミ処理場に、身元不明の死体が二体発見されたのが発端でした」
そこで一呼吸置いて、カーネル警部補は言った。
「先程、死体の身元が分かりました。二体ともです」
ここまでカーネル警部補が言うと、署長が割り込んできた。
「カーネル君、確かにオウル警部は君の直属の上司だ。
しかしだからと言って、今報告すべき事でない事くらい分かるだろう?」
「まだ分かりませんか?署長」
カーネル警部補の言葉に、署長は疑問符を浮かべた。警部補の話は続く。
「知っていますか?この町のゴミ処理場の位置。
丁度空港の真横に位置しているんですよ。」

「…まさか…」
アルバートは、思わずそう口走っていた。
横のオウル警部も事の真相に気づいたらしく、驚愕の表情を浮かべている。
『アルバート隊長、あなたは空港で、自分の部下をどう判別されました?』
信じられない、と言った表情で、アルバートは呟いた。
「確かに…本部の上官から渡された部下の顔写真と幾分顔が違うとは思った…。
だが、数年を経れば人の顔も変わるだろうと…」
『もう一度お聞きします。どうやって空港で自分の部下を見つけたんですか?』
カーネル警部補の極めて事務的な口調が、その真相を物語っていた。
その言葉に責め立てられる様に、アルバートは頭を抱えた。
「上官は、私の部下となる者は制服を着て来るから、すぐに分かると言ったんだ…。
 だから私はすぐに見つけた…一々資料と照らし合わせる必要など無かった…。」
既に力無い言葉。アルバートは、既に半ば放心状態と化していた。
『ちゃんと、その者達が本人かどうか、確認しなかったという事ですね』
通信機の先にいるカーネル警部補は、静かにそう言葉を締めくくった。
数秒の沈黙。どうやらあちらにいる署長も言葉を失っているらしい。
カーネル警部補は、今までよりはっきりした口調で、ようやく『報告』を始めた。
『ICSO職員、レナード・ガットマン。並びにウォルフ・グロッグ。
ゴミ処理場で見つかった二名の遺体は、この二人だと判明しました』
通信機から聞こえる言葉は、静かに室内に響き、そして消えた。


「…オウル警部、頼みがある」
静まり返った室内で、アルバートは突然言葉を発した。
「何です?」
「ヘリを一台借りたい」
その言葉に、オウル警部は何度目かの驚愕の表情を示した。
「まさか、あの戦艦を追うつもりですか!?」
「当たり前だ。まだあの中には生存者がいる可能性がある」
「しかし、エリュシオンは全滅と…」
突然、アルバートは声を張り上げた。
「あんな若造の言葉を、簡単に信じるのか!?いいかオウル警部!
この作戦の失敗、そして多数の死者、これら全て我々ICSOの、いや私の責任だ!
ならば責任を取る者として、最後のケリまでつける必要がある!
生き残った部下達は退却させろ。ヘリに私を乗せ、戦艦に接近させろ。
それが私の要求だ…判断は、お前に任せるしかないがな」
「…あなたも、相当な頑固者ですな」
溜め息をつきつつ、オウル警部は言った。
「いいでしょう、どの道あの戦艦を放って置くわけには行かなかったのです。
ただし、行くのはあなただけじゃない。私も行きましょう。
それに、まだ突入班も残っています。
これから何が起こるか分からないが、警察として、職務は最後まで果たすべきだ」
オウル警部は署長側に再度連絡を取り、ヘリの要請にかかった。


「くっ…」
銃撃を受けた右肩を押さえながら、クロウは呻いた。
激痛は時間が経つごとに増している。
しかし、クロウは何とか立ち上がった。
そして、銃弾を喰らわせた人物を睨みつけた。

レナード・ガットマンを。

その右腕は、肘から先が腕ではなくなっていた。
この戦艦内にいたロボット兵士の様に、機関銃が腕に取り付けられていた。
クロウは、それで理解した。
「お前がギャスパー・ゲイルだったのか…!」
腕についた機関銃のマガジンを慣れた動作で取り替えたレナードは、顔を上げた。
その顔にはウォルフと同じ様に、邪悪な笑みが張り付いている。
「気づくのが遅すぎますねぇ、ヒーローさん」
クロウが顔をしかめた時、二度目の銃声が響いた。
「ぐあっ…!!」
銃弾はクロウの左足を射抜いた。今度はウォルフが発砲したのだった。

ウォルフは先程の笑みを消し、再び無表情に戻っていた。
だが、今までとは違い、クロウに言葉を浴びせる。
「足を潰させてもらうぞ。余計な真似は歓迎できない」
クロウは膝をついた後、今度はウォルフを睨みつけた。
「貴様…」
「何故今まで喋らなかったのか…とでも聞きたいか?
簡単な事だ。俺は嘘が苦手なんだ」
レナード、いやギャスパー・ゲイルは、満足そうに笑った。
「ハッハッハ。なるほど、話に聞いていたよりも随分人間味がある様で安心です。
旧式とは言え、我々の兵器三体をたった一人で倒したと聞いた時は驚きましたねぇ。
それがこうも簡単にこちらの罠に引っかかってくれるとは」
ウォルフは銃を下ろした。もう撃つ気は無いらしい。
それを確認すると、クロウはギャスパーを睨み、言った。
「何が目的だ。警察に大打撃を与えても、自分の戦力にあれだけ損害が出れば意味が無い。
おまけにお前の忠実な部下まであんたの兵器を壊していたぞ」
目線でウォルフの方を示しながら、クロウは言い終えた。
「仕方が無い、教えてあげましょうクロウ・エリュシオン。
私はね、もう空族という稼業からは足を洗おうと考えているんですよ」
「何…!」
「今までお世話になった警察の方々にお礼をし、こうして住み慣れた船を爆破する。
 そうして私の死を認知させ、当の私本人は高飛び。面白いでしょう?」
クロウは、目の前の男が完全に狂っている事を確信した。

「ICSOの者に化けたのも、兵器を全て俺に破壊させたのも、その為か…!」
「当たり前でしょう。しかし、傑作ですねぇ。
ターゲットがこんなに近くにいたのに、あなた達はただの一人も、気づかなかった。
顔を整形し、髪型を変え、精巧な義手を仕込んだだけでね。
おかげでこうやって最後の計画も達成できそうですよ。どうも、ありがとう!」
ギャスパーは一頻り、笑い続けた。
「ならば…何故船を動かした…何故俺にだけ正体を晒した…!?」
このクロウの問いに、急にギャスパーは笑いを止め、言った。
「銀行強盗事件ですよ。そこでの君の活躍はもう、ある程度の人間には知れ渡っています。
その話を聞いた私は、我々の兵器を容易く破壊したという『クロウ・エリュシオン』なる人物に、興味を持ちましてね。
最後に警察方へのお礼と一緒に、君の手腕を見ておきたかったんですよ」
実に満足そうに、ギャスパーは話し続ける。
「まぁ、やはりこの計画を見抜くほど頭脳明晰な人物でなかったのは幸いでしたがね。
さて、これで疑問は解決でしょう?では、これで終わりにしましょうか。
君の死を見届け、ここから脱出した後、船を爆破させれば計画は完全に成功だ。
ありがとう。そしてさようなら、クロウ・エリュシオン」
満面の笑みでギャスパーは、片手の機関銃をクロウに向けた。

急に、何度目かの轟音が船内に響き渡った。
グラリと、地面が揺れる。
銃口を向けていたギャスパーはよろけ、地面に膝をついた。
「な、何事だこれは!?」
ギャスパーの問いに答える者はいない。
クロウはこの隙に、ギャスパーとウォルフに攻撃を仕掛けようと動いた。
だが、右肩と左足からの激痛で、一歩足を踏み出したに終わった。
「ぐう…」
「くそ…ポーン達はもういないか。これは早く計画を達成する必要がありそうだ…!」
周りを見回し、ギャスパーはそう呟く。
その呟きを聞き取ったクロウは、ギャスパーの判断の素早さに少しばかり驚いた。
やはり空族の頭というのは確かな様だ、と彼は思った。
「ギャスパー…こいつへのトドメは俺がやる」
瞬間、鋭い殺気がクロウを襲った。
気がつけば、ウォルフは真っ直ぐクロウを見ていた。
「どの道この船は落とす予定なんだ。先に脱出してくれ。
大丈夫、俺もとっとと脱出するし、こいつは必ず殺す」
ウォルフの提案に、ギャスパーはしばらくクロウを睨んでいたが、あっさり承諾した。
「ま、元々そういう取引で君とは契約を結んだからね。
正直、不安だが…いいだろう、頼むぞ」
ギャスパーはそう言うと、廊下の方へ走って行った。

ギャスパーを見送ると、ウォルフはクロウに向き直り、兵器の残骸から降りた。
そして銃を向け、言った。
「ギャスパーは、ただの興味本位でお前をここまで陥れた。
だが…俺は奴とは違う。お前に聞きたい事がある」
「何だと…?」
ウォルフは銃を下ろしてから、口を開く。
「お前の背後には、誰がいる?」
何の事を言っているのか、一瞬クロウは分からなかった。
「『光学迷彩』…お前はそれを銀行強盗事件の時に使っていたらしいな。
だが、あれは相当な金を積まないと手に入れられない代物だ。どこで手に入れた?
俺には『お前の背後にいる何者か』を突き止める必要がある。答えろ」
クロウはウォルフを睨み続けながら、黙っていた。
すると、ウォルフは先程の笑みを口元に浮かべると、言った。
「やはり…そう簡単に喋るわけが無いか。
流石は…粛清官、だな」
「何…!?」
ウォルフは、クロウに近づきながら、言った。
「お前はヘブンの粛清官だ…そうだろ?」

クロウの全身に、一気に緊張感が走った。
「お前は…一体…何者だ?」
ウォルフは深く溜め息をつくと、言った。
「一等粛清官、ロックマン・ミスト。それが俺の、かつての名」
「何…!?」
相手も同じ『ロックマン』であった。この事実に、クロウの全身が総毛立つ。
だが、クロウが何か言う前に、ウォルフは口を開いた。
「銀行強盗事件の記録を見て、すぐに分かった。お前も粛清官だと。
旧式とは言え巨大な兵器を3体も同時に相手をし、遂には打ち倒す。
こんな真似は、普通の人間にはできるものではない!」
ウォルフの声は、最後には殆ど叫びに近くなっていた。
「さあ、正体を明かせ…クロウ・エリュシオン!!」
次の瞬間、今度は明確な殺気と共に、片手の拳銃がクロウに向けられた。
そして、それと同時にウォルフの喉元にも、一歩踏み込んだクロウの刃が向けられていた。

「分かるか?船の振動を」
「…何?」
二人とも動かぬまま、ウォルフ=ロックマン・ミストが突然言った。
「じきこの船は沈む。ギャスパーには黙っていたが、俺が動力炉を爆破したんだ」
そう言って、ミストは銃をしまうと、スイッチを見せた。
おそらく、そのスイッチから動力炉の爆弾を爆破させたのだろう。
「タイムリミットは近い。命が惜しければ、洗いざらい全て話せ…!」
クロウは、ミストの言葉など意に介さずと言った風で、刀を納めた。
ミストは少し残念そうに、口を開く。
「やはり話す気など全く無いか…当たり前だな。
粛清官はそういう生き物だ。忠誠を誓った者を裏切る真似はできない。
たとえそれが、ヘブンやマスターで無くとも…な」
クロウは眼を細め、静かに言った。
「俺はもう粛清官じゃない。忠誠を誓う相手などいない。
一人の人間として、この世界を生きているだけだ。
ただ…過去が少し多過ぎるだけの、一人の人間として…な」
「…何?」
ミストの顔は冷静そうに見えるが、その眼は明らかに驚愕に染まっていた。
そしてクロウは、納得した様な顔で、再び口を開く。
「そうか。お前の中ではまだ、ヘブンやマスターは…生きているんだな。
俺の、かつての名は…『ロックマン・ミラージュ』。
そして今は…誰でもない、ただの人間だ」
この言葉を聞いた瞬間、ミストの顔は驚愕から、激昂に変わった。
その眼には殺意が増し、奥歯を噛み締め、そして遂に、叫んだ。
「き…貴様ぁぁぁぁぁ!!」


ギャスパーは走っていた。
緊急用のパラシュートはもう背負っている。後はここから脱出するだけだ。
しかし、心配事がいくつかあった。
一つは、先程の轟音と振動。それは動力炉の方から発生していた。
元々この船は爆破させる予定であり、事前に動力炉に爆弾は仕掛けていた。
それが、何らかのショックで爆発したのだとギャスパーは考えていた。
だとすれば、もう時間が無い。
もう一つの心配事、置いてきた仲間であるウォルフについては、彼を信用するしかない。
とりあえずギャスパーは、自分の脱出を優先する事にした。
彼は廊下の途中で立ち止まる。ここが脱出口だからだ。
銀色の厚い扉。この先は外であり、工場内の廊下と繋がっていた部分だ。
彼は扉の横にあるコックを引き出し、回した。
「!!!」
勢いよく開かれた扉の先にまず見えたのは、黒い鉄の塊だった。
警察のヘリ。それが目の前でプロペラを回転させ、飛行していた。
ここから脱出すれば、必ず警察に見つかってしまうだろう。
「くそっ…!」
凄まじい風が吹き込んでくるのを感じながら、ギャスパーはその場を離れた。

彼は、来た道を戻り始めた。
今度目指したのは、最下層にある倉庫だった。
ここには、緊急用の脱出口があるのだ。
彼は頭の中でそこに見当をつけ、走り出そうとした。
「動くな!!」
背後からの怒声。ギャスパーはその場に硬直した。
「馬鹿な…何故…ここに?」
紛れも無く、彼の後ろにいたのはアルバートだった。
「扉を開けておいたのが運の尽きだ。
お前かどうかは分からなかったが、人影が見えたので私は咄嗟に飛び移った」
完全に計算外であった。あのヘリにアルバートが乗っていた事は。
アルバートの執念深さは、少しの間彼に従っていたギャスパーでも、薄々感じていた。
この土壇場で、そのアルバートが乗ったヘリと鉢合わせるとは。
ギャスパーは、ここにきての自分の不運を呪った。
しかし、これで終わるほど彼は諦めの良い男ではない。
「…隊長、救出に来てくれたんですね?いやあ、もう駄目かと思いましたよ。
突然出てきたあの兵器に仲間達はやられてしまうし、ウォルフは突然豹変するし。
何とか私一人がこうやって逃げ切ったわけなんです」
両手を上げ、振り向いてこうギャスパーは捲し立てた。
だが、アルバートは冷たい眼でギャスパーを睨み、言った。
「お前のお喋りはもう通用しないぞ、ギャスパー・ゲイル」
ギャスパーは溜め息をつくと、両手を下げた。

アルバートは更に警戒し、銃を両手で構える。
ギャスパーは俯き、しばらく沈黙していたが、突然口を開いた。
「そうですか…それは残念です。あなたは…生きるに値した人間なのに!!」
突如ギャスパーの左腕の袖口からナイフが飛び出し、左手がそれをキャッチした。
そして、アルバートの銃の射線を回避するように、屈みながら突進した。
「何っ…!」
アルバートは一瞬反応が遅れた。
ギャスパーの、機関銃と一体化した右腕に注目していたからだ。
ナイフを構えたギャスパーは、アルバートの胸に向かってナイフを突き出した。
「くっ!!」
アルバートは咄嗟に背中を仰け反らせた。
ナイフは彼の胸をかすめ、右肩の上を通過した。
それを肌で確認すると、彼はギャスパーの腹に強烈な膝蹴りを喰らわせた。
「ごほっ…!?」
吹き飛び、一瞬宙に浮かんだ彼の背中を、アルバートは右手の銃の底で殴りつけた。
勢い良く地面に激突し、痛そうな音が廊下に響く。
「お褒めに預かり光栄、と言うべき所か。相手が犯罪者でなければな。
ギャスパー・ゲイル、諸々の罪で逮捕する」
ギャスパーは呻き、左手で床を引っ掻いた後、力尽きて気絶した。
その時、再び轟音が動力炉の方から聞こえた。
アルバートは轟音のした方を向き、無造作に無線を起動して話しかける。
「オウル警部、戦艦はどうなっている?」
『危険ですな。黒い煙が艦の後方から発生しています。早い所脱出する事を勧めますが』
「エリュシオンへの通信は?」
『呼びかけていますが、応答はありませんね』
「そうか…分かった」
アルバートは通信を切ると、ギャスパーを担いで歩き出した。


ミストが再び銃を構え、引き金を引いたのと、クロウがその場から跳んだのは、ほぼ同時だった。
銃弾はクロウの頭の横を通り、ヘルメットを貫いた。
バイザーに鋭いヒビが入る。だが、クロウ自身の頭には当たっていなかった。
ミストが二発目を発射する前に、クロウの左手の刀がその銃身を斬り裂く。
斬られた銃身が地面に落ちる音が、空しく響いた。
「片足しか撃たなかったのが…お前の敗因だ。」
クロウは静かに言った。
だが、それで終わりではなかった。
「黙れぇっ!!」
クロウの顔に、ミストの拳が炸裂した。
船の轟音は、次第に大きくなっていく。

急に繰り出された拳。クロウは倒れそうになりながらも、何とか持ちこたえた。
クロウの刀はその一撃によって彼の腕から落ち、遠くまで転がって行った。
更にその顔にミストの第二撃が再び炸裂し、クロウの身体は宙を舞う。
「がはっ…」
しかし、クロウもこれでやられるつもりは無い。すぐに立ち上がり、身構えた。
そんなクロウを見据え、ミストは口を開く。
「答えろ。一体どういう意味だ…先程の言葉は!
俺の中ではヘブンやマスターが生きている…だと?
お前の中ではもう、ヘブンもマスターも…過去の存在だと言うのか…!」
「…そういう事だ。お前の中の『一等粛清官ロックマン・ミスト』はまだ生きている。
俺の中の『一等粛清官ロックマン・ミラージュ』は既に死んでいる。
…本当にそれだけの、話だ」
その言葉を聞いた瞬間、再びミストは地を蹴り、拳を繰り出した。
クロウは左手でそれを受け止め、更に引き寄せてミストの顔に頭突きを喰らわせる。
頭突きはミストの額に当たり、ミストは吹っ飛んだ。
だが、額を押さえて立ち上がると、尚もミストは話し続ける。
「何故だ!?お前は再び…ヘブンに戻りたいとは思っていないのか?」
クロウは、即答した。
「思わない。俺は…この世界の方がいい。
…確かにヘブンは老化も病気も無い、完全な世界かもしれない。
だが俺は…俺には、完全ではないこちらの世界の方が性に合っている。
だから戻ろうとは…思わない」
クロウの答えに、ミストはしばらく黙っていた。
だが、再び轟音が艦内に響いた時、それに負けない声量で、ミストは叫んだ。
「お前の答え、よく分かったぞ!
俺とお前は同じ元粛清官でも、今ではヘブンに対しての想いがまるで違う!!
だから…決着をつける必要がある!!」
クロウは振動で膝をついていたが、ミストの言葉を受け、立ち上がった。
損傷したヘルメットを脱ぎ捨て、そしてやっとクロウは答えた。
「望む所だ…!」

既に、ミストは銃を失っている。
クロウはまだ右腰に刀が一本納まっているが、先程のギャスパーの銃撃により右腕は動かず、左腕ももう刀を持てる力は無い。
更に先程の格闘で、両者とも満身創痍となっていた。
最後は、互いの拳で勝負をつけるだけ。
間の距離は、そう遠くない。両者の脚力なら、一足飛びで接触できる距離だろう。
これは、クロウにとって運が良かった。
ミストから受けた銃撃により、左足にも激痛がしていたからだ。
そして、二人は、構えた。
次の轟音で、両者は同時に地面を蹴った。

二つの拳が、互いの顔面に炸裂した。
骨の軋む音がする。二人は同時に口から血を吐いた。
だが、互いに拳を退かせぬまま、数秒が経過した。
そして。

二人とも、倒れた。

「ぐっ……う……」
幸いにもクロウは、一連の間意識を保ち続ける事はできた。
だが倒れた後、身体を動かそうと思っても、腕に力が入らなかった。
未だ起き上がらないミストも同じ状態であると、クロウは推測する。
「(くそ…まさか最後まで引き分けとはな。
しばらくは身体が動かなさそうだ…脱出に間に合うか…微妙だな)」
だが、クロウの視界に異変が起きた。
「なっ…!?」

目の前で、ミストが立ち上がった。

「ぐ……が…はっ……はぁ…はぁ…」
口から血を流しながらも、ミストは立ち上がっていた。
だが、身体が重そうで、立つのもやっとらしい。
ミストはやっと顔を上げると、バックパックから何かを取り出した。
そして、未だ消えぬ憎悪の目を倒れたクロウへ向け、叫んだ。
「終わりだ。この船と共に燃え尽きろ、ロックマン・ミラージュ!」
ミストはバックパックから取り出したもの―手榴弾のピンを抜いた。
「(あんなものまで用意していたか…!)」
やっと立ち上がったものの、それで精一杯のクロウは、ミストを警戒する。
ミストはクロウを憎悪の眼で一瞥すると、後ろの瓦礫の山へ投げつけた。
凄まじい爆発が起こる。
瓦礫の山が吹っ飛ぶと、その先に数時間前にクロウとミストが入って来た、あのシャッターが見えた。
それと同時に、廊下に続くドアが吹き飛び、格納庫内に凄まじい勢いで爆風がなだれ込んで来た。
幸いにも爆風はドア付近で治まったが、それはもう時間が無い事を示している。
「さらばだクロウ・エリュシオン。この船と運命を共にするがいい…!」
ミストの最後の拳が、クロウの額に当たる。
それは大した威力ではなかったが、体力の減ったクロウを吹き飛ばすには十分だった。
「がはっ…!!」
クロウは背後の地面に再び倒れる。
ミストはそれを確認すると、シャッターの方へ走り出した。
クロウも動かぬ身体を鞭打って立ち上がると、ミストを追い始めた。

だが、明らかにその速度は、ミストの方が速かった。
片足を撃たれ、更に大幅に体力の減ったクロウには、追いつける筈も無かったのだ。
「くそ…!」
既にミストは行程の半分が終わり、もうすぐシャッターに到達しそうだった。
対して、クロウはまだ4分の1を過ぎた辺りである。
急ごうとすれば、左足の傷口から血が吹き出るだろう。
クロウは傷口を押さえ、本気で走り出そうとした。
だが、次の瞬間。

天井が崩れ、大量の瓦礫が降ってきた。

瓦礫はクロウの道を塞がんばかりに、目の前に崩れ落ちた。
「ぐぅっ…!」
鉄骨や鉄板、配線など、ありとあらゆる瓦礫がそこに積み重なっていた。
幸い、瓦礫はまだ完全に行く手を遮ったわけではなく、上の方に隙間が見える。
しかし、それは脱出するには、この瓦礫を乗り越えるしかない事を語っていた。
「仕方ない…!」
クロウは激痛に顔を歪めながら、瓦礫の山を乗り越え始めた。

瓦礫の山を乗り越えるのは、それほど大変ではなかった。
瓦礫の一つ一つが特徴的な形をしていた為、足場には困らなかったからである。
だが、左足から大量の血が流れるのをクロウは感じていた。
そして、やっとの事で瓦礫の山を越え、再び格納庫の床に降り立った。
既に少しだけ開いたシャッターの姿が見え、その先の空まで見える。
朝日が出ているのか、空は少し眩しく、黄色に染まっていた。
「が…あ……ぁ……」
「!?」
突然クロウの背後から、声が聞こえた。
見ると、今乗り越えた瓦礫の傍に、ミストがうつ伏せで横たわっていた。
下半身は完全に瓦礫に埋もれ、おびただしい量の血がそこからクロウの方へ流れている。
クロウは、全て理解した。
「…何か言い残す事はあるか?」
ミストは顔を上げ、何か聞きたそうな眼でクロウを見た。
「何故…あんな答えが出せる……お前は…本当に……もう…ヘブンに…は……」
クロウは哀しそうな眼で、言った。
「俺は…見たんだよ。誰もいなくなったヘブンを。生き物のいなくなった、あの星を。
その時からか、いつの間にか俺の中に…ヘブンへの想いや未練は、無くなっていた」
クロウの言葉がミストに聞こえていたかどうかは分からない。
視線をずっと、目前の朝日に向けていたからだ。そのままミストは、眼を閉じた。
クロウは事切れたミストに背を向け、シャッターへ向けて走った。


「君は、神を信じるかね?」
いつもの様に椅子に座って、ノアは呟く様に言った。
その眼はいつもの様に、新聞に注がれている。
ノアの後ろには、一人の女性が立っていた。
長い緑色の髪を後ろで纏めた、褐色の肌、そして真っ赤な瞳をした女性。
20代前半の様な、皺のあまり無い顔立ちをしている。
しかし何よりも眼を引くのは、額にもう一つある、赤い瞳だろう。
それは両の目よりも大きく、そして無機質な、リーバードの瞳だった。
「どうだい?ゼゼ」
ゼゼと呼ばれたその女性は、無表情でノアの前に立っていた。
片手に一枚の盆を持っている。その上には、アイスティーの入ったコップが置かれていた。
彼女は、ノアの身の回りの世話や、その活動のサポートをする役目を負っている。
ノアの問いにようやく、少し困惑した様な声で彼女は答えた。
「さあ…考えた事もありません。何故急に、その様な事を?」
「予想通りの答えだね。何、ちょっと気になっただけさ」
新聞から視線を外すと、ノアは彼女にニコリと笑いかけた。
ノアの表情をあまり意に介さず、ゼゼは事務的な口調で言った。
「ロックマン・ミラージュ様との連絡が先程繋がりました」
「ほう、やっとか。長い事音信不通だったねぇ」
早速ノアは眼を通していた新聞を机に乗せ、運ばれてきた通信機器を手に取った。
「さて、今度はどんな話をしてくれるかな?」


町の病院。この一室のベッドの上にクロウは横たわっていた。
全治二ヶ月、と言うところだった。
「運に助けられたか…」
戦艦を脱出した後、クロウの真下にはいつの間にか海が広がっていた。
どうやら、ミストと闘っていた間に、戦艦は海まで到達していたらしい。
動力炉にかなり損傷を負っていた為、艦の高度はかなり低くなっていた。
その為、クロウが脱出した直後は特に問題は起こらなかった。
しかし、脱出の直後に戦艦は動力炉を中心に、爆発四散。
脱出した後のクロウにこの戦艦の破片が幾つか当たり、彼は身体の各所に裂傷を負った。
入院期間が長引いたのは、この裂傷のせいもあった。
それからクロウは、この病院で数日間眠っていた。
ゴードン署長の計らいで、個室に入れられたらしい。
目覚めた後に、オウル警部とカーネル警部補が彼の個室を尋ねてきた。
オウル警部の話によると、眠っている間に、アルバートは島を去ったらしい。
彼はギャスパーを警察の者達に引き渡すと、あまりにも素直に謝罪したそうだ。
警部は、退院後に一度警察署に出頭し事の顛末を述べて欲しいと言って、病室を去った。
やはり、カーネル警部補は最後まで不機嫌そうだった。
その点だけはアルバートと似ているなと、ふとクロウは思った。

アーマー・武器類の一通りは、支給された鞄に集められていた。
その鞄の中から呼び出し音が鳴ったのは、クロウが目覚めて数日後の事だった。
時刻は、よりにもよって深夜。
右肩を負傷していた為、左手だけで鞄を開け、目的の物を取り出すのに時間がかかった。
やっと通信機器を取り出すと、スイッチを入れる。
「何か用か」
通信機の先からは、いつもの様にのんびりとしたノアの声が聞こえた。
『やあ、久方ぶりだねぇ』
「この前会ってからまだ一ヶ月かそこらだろう。
こっちは忙しい。何の用だ」
苦笑しながら、ノアは言った。
『忙しかったのは少し前までだろう?今はむしろのんびりできそうじゃないか』
「…何の話だ?」
『しらばっくれても無駄だよミラージュ君。
新聞にバッチリ載ってる。君のいる町についてね。
空族ギャスパー・ゲイルを逮捕、か。君も関わっているんだよね?』
「何故そう思う?」
今度は楽しそうに、ノアは語った。
『僅か一夜で警察がこの様な大規模な空族を制圧、などそうそうある事じゃない。
それに、この前の銀行強盗の事件。
あれも規模の割には、あまりにもあっさりと解決していた。
私の眼も頭も、まだ衰えてはいないよ、ミラージュ君』
クロウは溜め息をつき、言った。
「しょうがないな…。まぁ今回だけは俺も話そうと思っていた。聞け」
『ほう、珍しいね。聞かせてもらおうか、ここ最近の君の体験を』
クロウは、空族制圧の一件を語り始めた。

「これで全部だ。どう思う?」
クロウの正体が見破られるのは、この件が初めてである。
流石に今回ばかりは、ノアも少しばかり驚きの色を見せ、思案する様な語調で話し出した。
『なるほど…まさか君の正体までもが看破されるとは。
そして更に、君の協力者…すなわち私の事まで探ろうとしてくるとはねぇ。
ふむ…しばらくは周りに気を配りながら生活した方が良さそうだねぇミラージュ君』
語調の割には、かなり他人事の様な姿勢である。
半ば呆れながら、クロウは頭に浮かんだ疑問を口にした。
「…何故粛清官であるロックマン・ミストが、お前の事を探ろうとしたんだ?」
『分からんね。まぁ大方、君の協力者がマザー辺りだと思ったんだろう。
そして、君から彼女達の所在を聞き出そうとしたのではないかな?』
ノアはクロウの疑問に、実にスラスラと答えた。

通信機器を握り締めて、クロウは言う。
「結局、ロックマン・ミストとはまともな会話もできなかった」
クロウの言葉に、ノアは頷く様に言った。
『そうだね。まぁ、今回ばかりは仕方ないだろう。敵同士だったのだから。
ましてや、互いの意思が反目し合っていたんだろう?しょうがないさ。
もしまた粛清官と会える機会があれば、味方同士だといいねぇ』
楽しそうなノアの声を無視し、クロウは話を続けた。
「とにかく、俺が話したかった事はこれで全部だ。
お前は分からないかもしれないが、こっちは深夜だ。そろそろ切るぞ」
ノアは、満足そうにいつもの悠々とした口調で、話を締めくくった。
『ああ。今回の話は大変貴重になった。
それでは、今後も期待しているよ。ロックマン・ミラージュ君』
通信が切られる。クロウは通信機を鞄の中へ放ると、窓の外を眺めた。
ここからでは到底、彼の故郷の星は見えないだろう。
「もう…嫌な記憶だけだ。あの星にあるのは…」
消え入るような彼の呟きは、誰にも聞こえなかった。
自然と彼の頭の中に、ロックマン・ミストの言葉が反芻する。

結局、警察の者達は『ウォルフ・グロッグ』の正体は掴めなかったらしい。
その辺はオウル警部からも質問されたが、クロウはまともに答えなかった。

彼は、自分がミストへ言い放った言葉を思い出した。
「(完全ではないこちらの世界の方が性に合っている…か)」
かつての自分は、今の自分がこんな選択をするとは、夢にも思っていなかっただろう。
ノアの言葉が切っ掛けとなったが、彼は積極的にこの町を知ろうとする気になった。
そしてクロウは銀行強盗事件の最後―カーネル警部補に投降した時の事を思い出した。
「(結局…あの時の判断は、間違っていなかったのか…?)」
最後に、命がけで互いの信念をぶつけ合った、かつての同胞へ黙祷を捧げると、彼はまた窓の外を眺めた。
おそらく、これからも色々な事態が、クロウを待っているだろう。
だが、今回はひとまず、終わりを迎える事ができた。
彼は、この短い休息の時間を無駄にしない為、起こしていた上半身を寝かせ、眼を閉じる。
空には、青い月が優しく光を放っていた。




最終更新:2012年01月21日 23:16