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風の吹く荒野。
辺りには乾いた土が広がり、所々に萎びた雑草が見える。
日は西に傾き、もうすぐ夜が近い。
風によって乾いた砂が巻き上げられ、辺りは砂埃で覆われている。
だが、この何も無い荒野で、剣を交える二つの人影があった。

両者とも灰色のアーマーとヘルメットをつけ、右腕にはビームサーベルを握っている。
一方のアーマーは所々が傷つき、色褪せている部分もある。
もう一方はそれとは対照的に、アーマーもヘルメットも新品の様に輝いている。
両者の剣は交わり、振られ、避けられ、また交わった。
だが、傷ついている方の動きは次第に鈍っていった。
そして、その男は一旦後ろに下がり、剣を構えなおした。
それに対し、もう一人の男は言った。
「お前はもう…終わりだ」
その言葉を聞き、男は溜め息を一つついて、言った。
「最後に戦うのがお前とは…皮肉だな」
相手の言葉を聞きながら、男は剣を向けた。
そして、静かに言った。
「何故ヘブンを裏切った」
その問いに、傷を負っている方は笑みを浮かべ、言った。
「…お前には分からないよ」
その言葉を最後に、二人は黙った。
しばらく、荒野に静寂が訪れた。
二人とも剣を構え、大地に足を踏みしめた。
だが、この静寂は、片方の男の叫びで唐突に終わりを告げた。
「これで…終わりだ!!」
その言葉を合図に、二人の男は大地を蹴り、走り出した。
この数秒後、再び荒野は静寂を取り戻した。



深々と雪が降ってくる。
降り積もった雪は平地を白い絨毯の様に覆い隠す。
空は厚い雲に覆われ、太陽の光は地上には届かない。
今、この白い平地を、一人の男が歩いていた。
身長は170cmほどで、体中に紺色のアーマーを纏い、同じ色の、赤いバイザーの付いたヘルメットを被っている。
両腰には黒い鞘で片方が赤、片方が青の柄の刀を帯び、首には黒いスカーフをしている。
また、片手には比較的大きなトランクを持っている。
その男は、一面真っ白な平地を、どこかへ向け一直線に歩いていた。

道が緩やかな上り坂となり、その頂上まで来た。
男の眼下には、未だに続く細い一本道が見える。
男はトランクをその場に置くと、中から地図を取り出した。
幸い地図が吹き飛ばされるような風は吹いていなかったので、男はそれを広げる。
「…あと少しだな」
そう呟くと、男は地図を畳み、歩き出した。
その時、男の耳に重低音が小さく聞こえた。
ふと目の前の道の遠くの方を見ると、スノーモービルが走っているのが見えた。
「………」
男は、ただの通行人かと最初は思ったのだが、どうも搭乗者の様子がおかしい。
どこか焦っているようだ、と男は感じた。
次の瞬間、その搭乗者の焦りの理由が男に分かった。

突如、道の片側の森の中から、巨大な四足のリーバードが突っ込んできた。

スノーモービルに乗っているのは少年だが、どうもそのリーバードから逃げていたらしい。
だが、少年が乗るスノーモービルの速度は、リーバードの速力よりも明らかに遅かった。
「仕方ない…!」
男はそう呟くと、道に置いたトランクはそのままに、走り出した。

男は、スノーモービルの真正面に向かって走った。
少年は男の姿に気づいた様で、ヘルメットの中の顔が驚愕に染まる。
そして男とスノーモービルとの距離が10mを切った時、男は跳んだ。
その身体がスノーモービルと接触する瞬間、男の足は車体を踏みしめていた。
男は、スノーモービルを踏み台にしていた。
空中で刀を抜き放った男は、スノーモービルを追い詰めていたリーバードに肉薄する。
次の瞬間、そのリーバードの頭部、額の部分に、男の刀が突き立てられていた。

男の行動に驚いた少年は、咄嗟にスノーモービルのハンドルを切ってしまった。
車体は横転し、少年は雪の中に投げ出された。
幸いな事に降り積もった雪がクッションとなり、少年は起き上がる事ができた。
だが、横転したスノーモービルは木に激突し、黒煙を上げていた。
「はぁ…はぁ…」
少年は顔を上げると、ヘルメットを脱いだ。
14か15ほどの、茶色の短髪をした少年は、後方に視線を向けた。
「…!!」
そこには、倒れ伏すリーバードと、それを眺める男の姿があった。

「大丈夫か?」
男は振り向くと、少年に向かって歩み寄った。
「あ…あわわわわ……」
少年は、尻餅をついたまま、後ろに後ずさりした。
男はそんな少年を眺めると、ヘルメットを脱ぎ、口元のスカーフを下ろした。
「安心しろ、俺はちゃんとした人間だ」
少し痩せ型のその顔は年齢にして17か18歳程で、鋭い眼と冷めた雰囲気を持っていた。
髪は黒髪で、多少は長かったが十分短髪と言える髪型であった。
男は少年の肩を掴むと、無理矢理その身体を立たせる。
「あ、ありがとうございます…」
「あんな大型のリーバードに出くわすとは、お前も運が悪いな」
その時、再びその場に重低音が聞こえ始めた。
今度は、男が歩いてきた道の方からだった。
少年はそれを聞くと、急に顔を明るくさせ、音の方に手を振った。

その音は、車のエンジン音で、比較的大きな茶色のトラックだった。
荷台には何も積んではおらず、タイヤには滑り止めの鎖が巻かれていた。
トラックは二人の横まで走ってくると、ゆっくりと止まった。
トラックの窓ガラスが下がり、代わりに一人の人物が顔を出した。
顎に無精髭を生やした中年の男だった。
男は少年に目を向けると、大声で怒鳴った。
「ジャック!何故お前がここにいる!?そんでこの状況は何だ!!?」
少年は男の大声に身を縮ませると、おずおずと説明を開始した。
「迎えに来たんだよ、ほら、今夜は吹雪だろ?念の為に食料を持ってさ。
だけど途中でリーバードに襲われちゃってさ、ごめん、食料も駄目になっちゃった。
でも、その時この人が助けてくれたんだ」
中年の男は、目の前の男の素性を確かめるかの様に、視線を向けた。
「その格好…あんた、ディグアウターか?」
「…ああ」

それを聞いて、中年の男は、男に向かってニッと笑いかけた。
「息子が世話になったな。ここにいるって事は、この先にある町を目指してるんだろ?」
「ああ」
答えを聞くと、中年の男はトラックの扉を開き、言った。
「乗ってけ。恩は返す。あとジャック、食料はともかく、スノーモービルは高くつくぞ。
家に着いたら、覚悟しとけ」
身を縮こまらせながら、少年は小さく「はい」と返事した。
そんな様子を見ながら、ディグアウターの男は言った。
「すまないな…今夜が吹雪なら、御言葉に甘えさせて貰う必要がありそうだ。
ちょっと待っててくれ、荷物を途中の道に置いてきた」

スノーモービルを荷台に積んだトラックは、雪の中を着実に進んで行った。
トラックを運転する中年の男は、灰色の作業着の様なものを着ている。
その横に座る少年は、Tシャツの上に白いジャケットを着て、ジーパンをはいていた。
男を含めた彼らの目的地は、まだまだ先の様だった。
中年の男は、右手でハンドルを握りながら、左手で煙草を吸っている。
吹雪という情報は確かだった様で、雪は段々激しくなっていった。
フロントガラスの雪を払い続けるワイパーも、既に限界の速さになっていた。
「まったく、今日も冷えるな」
タバコを灰皿に置いて、中年の男は言った。
その時、今まで沈黙していた少年が男に顔を向けた。
「ディグアウターさん、お名前は?」
少年の急な質問に、横にいた中年の男が口を出した。
「おいジャック、人に名前を尋ねる前に自分から名乗るのが礼儀だぞ」
それに対し、少年は慌てて自己紹介を始めた。
「す、すいません。僕はジャック・アースガルド。
この人は僕の父親のケイン・アースガルドです」
少年はそう言うと、男の反応を待った。男はしばらく沈黙してから、口を開いた。
「俺はクロウ・エリュシオン。旅をしながら各地の遺跡をディグアウトしている」
男・クロウの言葉に、ケインはヒュウと口笛を吹いた。
「へぇ、旅か。俺も一回気ままな旅ってものをしてみたいねぇ」
だが、ケインとは違い、ジャックの方は少し残念そうな様子だった。
「う~ん…聞いた事ない名前だなぁ。
あれだけ強いから、もっと有名なディグアウターかと思ったのに…」
その言葉に、ケインはジャックの頭を叩いた。
「おい!失礼だぞ!!」
呻き声を上げるジャックの様子を見ながら、クロウは言った。
「じゃあ、お前はどんなディグアウターに会いたかったんだ?」
ジャックは、少しの間考え、そして言った。
「え~と…『青い少年』とかかなぁ…」


トラックは雪で覆われた丘の上で止まった。
既に日は落ちている。
いつの間にかジャックはすやすやと寝息を立てている。話し疲れたのだろう。
煙草を吸いながら、ケインは口を開いた。
「ようこそ、俺達の町へ」
「あれが…プリズナの町か」
トラックの止まった丘からは、町の全景を見渡す事ができた。
円形の形をした町・プリズナは、夜の闇の中で煌びやかな夜景を形作っていた。

トラックは、町の南端の所で止まった。
ケインとジャックの家が町の南端の、大通りに面した所にある為だった。
「町の地図は市庁舎のパンフレットに載ってる。
で、その市庁舎は町の北端にある。この大通りの先だが…送って行こうか?」
「いや、いい。色々世話をかけてしまったな」
車から降りたクロウはヘルメットを被りながら言った。
「いいていいって。元々俺は世話好きな性格だからな」
とケインはクロウに出会った時の様にニッと笑った。
目を覚ましたジャックも口を開いた。
「困った事があったらいつでも言って下さい」
「ああ、わかった」
クロウは二人と別れ、大通りを歩き出した。


クロウがしばらく歩くと、大通りの先には大きな円形の広場があった。
先程から吹いていた吹雪はますます激しさを増しており、広場には誰もいない。
この広場から、四方に大通りが広がっていた。
広場の中心には細長い棒が立っており、その先端には時計が付いている。
棒には、時計の他に、町の施設への方向が示されている標識も付いていた。
「市庁舎は…この先か」
クロウは、また大通りを北の方へ歩き始めた。
だが、ふとクロウはどこかからの視線を感じた。
「(誰だ…?)」
ふとクロウは近くの民家の屋根を見上げた。
そこに視線の主はいた。吹雪で見難かったが、その姿をクロウははっきりと見た。
それは、大きな茶色と白の鷲だった。
教会の屋根にとまっていたその鷲の瞳は、まっすぐクロウの姿を見つめていた。


「この町にディグアウターが来るのは珍しいですね」
受付の男はクロウを見ながら呟いた。
市庁舎の中は、受付の机も、壁・床・天井も、全て白い大理石でできている。
今、クロウはディグアウトの許可証を取ろうとしていた。
受付の男の呟きに、彼は聞いた。
「何故だ?」
受付の男は、その疑問を待っていたかの様に、すぐに答えた。
「この町にある遺跡は東にある小さなものだけなのです。
その遺跡も大して広いわけではありません。
一番奥にあるディフレクターも既にディグアウトされ、もう何もありません。
ですからディグアウトしても何も得る物が無いのです」
「…そうか」
受付の男は、話が済むと、先程から記入していた紙を持った。
「では…少々お待ちください」
数々の質問の答えを紙に書いた受付の男は、奥のドアへ入っていった。


ガチャ、とドアを開ける音がした。
受付の奥の扉ではなく、入り口の扉が開く音だった。
外の吹雪はますます激しくなっており、風と雪が入り口から吹いてきた。
入ってきたのは、長身の男だった。
金色の短髪で、サングラスをかけ、白いロングコートを着ている。
男は入り口を閉めると、近くの壁に寄りかかった。
「(…何者だ?)」
男の持つただならぬ気配に、クロウは自然と全身を緊張させていた。
男の方もそれを知ってか知らずか、クロウに観察する様な視線を向けている。
クロウは、腰の剣の柄に手をかけた。
「警告だ」
不意に男の発した言葉に、クロウは振り向いた。
「今すぐこの町から去れ。でなければ…死ぬぞ」
「…どういう意味だ?」
その問いには答えず、男は来た時と同じ様に入り口の扉を開け、出て行った。
クロウは急いで男の後を追い、扉を開けた。
「…!!」
男の姿は無かった。
市庁舎の前はさっきの教会の様に広場になっており、開けた場所だったにも関わらず。
「(あの男…一体…)」


ディグアウト許可証を貰ったクロウは、宿を探した。
幸い、宿は市庁舎の近くにあり、彼は吹雪から逃れる事ができた。
その宿の一室で、クロウは市庁舎で手に入れた地図を広げた。
「わかりやすい町の形だな…」
円形の形をした町を分断する様に、大通りが東西南北に伸びている。
そして、それらの大通りの中心には、先程の丸い広場があった。
「で、問題の遺跡は…ここか」
地図には、東へ伸びている大通りの先の、山の手前に遺跡の入り口が描かれていた。
大通りの突き当たりには教会が表示されており、遺跡はこの裏側に位置している。
地図を畳み、クロウは明日に備えて準備をし始めた。


「この教会の裏側か…」
まだ日が出て間もない時間に、クロウは町の東にある教会の前までやってきた。
それは、十字に伸びた大通りのうち、東にある通りの突き当りに位置していた。
近くの民家より一回り大きい建物で、白い大理石でできている。
まだ早朝の為、辺りは静寂で包まれていた。
クロウは、教会の裏手へ回った。
目指す遺跡の入り口は、確かにそこにあった。
茶色い砂模様の円柱の形をしており、その表面には幾何学模様が描かれている。
また、その正面には入り口である扉があった。
クロウが近づくと、その扉は、音も無く開いた。
その内部には、梯子が、暗闇に包まれた下方へと下がっている。
クロウは無言でその梯子を下っていった。


遺跡の中は大して広いわけではなかった。
リーバードも大して巨大なものは出ず、彼は難なく一番奥の部屋に辿り着いた。
その部屋は、ディグアウターである彼が何度も見た事のある部屋だった。
ディフレクターを保管してある部屋である。
既にこの遺跡はディグアウトされた後であり、ディフレクターは台座から無くなっていた。
ディフレクターが無い事で、その部屋は何も無い、ただの地味な部屋になっていた。
だが、彼だったからこそ気づいたのかもしれない。
その部屋が、他の部屋とは違っていた事に。

「(何だ…あれは…?)」
部屋に入ってからすぐに、クロウは『それ』を見つけた。
台座しかないただの遺跡の一室。
部屋の入り口の向かい側にある壁に、リーバードの瞳がついていた。
その瞳はリーバードが活性化した時に見せる赤い瞳ではなく、青い瞳だった。
「(トラップか…?だがそれならディフレクターを外した時に作動している筈…)」
壁の天井近くについているそれは、照明に照らされて淡く光っていた。


宿屋に戻ったクロウは、椅子に座り、数分考え込んだ。
「(ただの小さな遺跡だと思ったが…あの瞳は一体…?
各島々のメインゲートについているものと同質のものの様だが…)」
その時、クロウの耳にノックの音が聞こえてきた。
時計を見ると、午後6時を過ぎていた。
ここは雪国である為、日が落ちるのは速く、既に窓の外は暗闇と化していた。
「誰だ?」
「え、えと…」
呼びかけたクロウに対し、どこか戸惑ったような返事が返ってきた。
クロウは一応警戒の為、二本の刀のうち一本を鞘ごと持ち、ゆっくり扉を開けた。
「ど…どうも、こんにちは」
そこには、町に行く時に知り合った少年、ジャック・アースガルドが立っていた。
ジャックの姿を見て、クロウは無表情のまま言った。
「俺の泊まっている場所がここだと、どうやって知った?」
「え、ええと…今日町で見かけたので…すいません!!後をつけちゃいました!」
そう、遺跡から帰る途中のクロウを、ジャックは偶々見かけたのだった。
ジャックは、勢いよく彼に頭を下げた。
「全く…」
そう言いながら、クロウはジャックを部屋へ案内した。

「で、何しに来た?」
クロウの問いに、ジャックは緊張した様子で答えた。
「…僕、将来ディグアウターになりたくて…。
色々教えてもらいたい事があって来ました…」
ジャックの答えに、再度クロウは呆れた。
「全く…」
呆れるクロウとは対照的に、ジャックは勢いよく彼に質問をぶつけた。
「今まで、どんな遺跡をディグアウトしたんですか?」


しばらく、ジャックの問いにクロウは適当に答えていた。
部屋に入って少し経った時、ジャックは部屋の隅に何かを見つけた。
それは、黒い鞘に納まった、赤い柄と青い柄の二つの刀だった。
それをきっかけに、ジャックの質問は武器の事になってきた。
「クロウさんの武器って…これですか?」
「ああ。そうだ」
「もしかして…これだけですか?」
「…まぁ、一応な」
クロウの答えに、ジャックは驚きの表情を示した。
「バスターとか使わないんですか?」
「バスターはあまり性に合わなくてな」
ジャックは、剣を手に取り、鞘から抜いてみた。
刀は、天井についたライトに照らされ、鈍い輝きを放っていた。
「…あまり触ってほしくないんだが」
「あ…すいません…」
ジャックは急いで剣を鞘に戻し、元の所に置いたが、それでも気になる様だった。
そして、彼は視線を刀に向けたまま、クロウに再び質問を投げかけた。
「ちなみにこの刀、名前とかあるんですか?」
ジャックの問いに、クロウはしばらくしてから答えた。
「…赤い方を『刹那』、青い方を『永劫』と呼んでいる」
「へぇ…良い名前ですねぇ…」
クロウが名前を教えた事で、ジャックの刀に対する興味は益々大きくなった様だった。
そのジャックの様子を横目に、クロウは時計を見た。
既に時計は7時を回っていた。
「…そろそろ帰れ」
突然のクロウの発言に、ジャックは顔を上げ、あからさまに不満の色を示した。
「ええ、もうですか!?」
「帰りが遅くなると、お前の親父が怒るんじゃないのか?」
そう言いながら、クロウは机の上に置いてある時計を指差した。
「ここからお前の家まで走っても30分はかかるぞ」
クロウの言葉に、時計を確認したジャックは青ざめた。
「うわ、親父に怒られる…!!」
「送っていく。今度からは昼間に来い」
「本当ですか!?助かったぁ…」
ジャックの顔に安堵の色が浮かんだ。
クロウは刀を一本だけ装備し、ジャックと共に宿屋を出た。


二人が歩いている内に、少しずつ雪が降り始めた。
町の中央の広場を通り過ぎる頃には、大通りは雪で覆われていた。
「全く。ついてないな」
降り続ける雪を見て、溜め息混じりにクロウはそう言った。
昼間と違い、町には人が一人もいない。
自動車も一台も通っておらず、大通りはとても寂しい雰囲気となっていた。
その時、クロウはある事に気がついた。
「そう言えば…こんなに大きな大通りがあるのに車の姿は少ないな。
いつもこの町はこんななのか?」
ジャックは、それがさも当然という様に答えた。
「ええ。この町で自動車持ってるのは僕の家の他には数軒だけですねぇ」
「じゃあ何故こんな大通りがある?」
大通りの幅は10m程もあり、明らかに少し広過ぎるという感じだった。
クロウの問いに、ジャックは首をかしげた。
「何故だろう…分からないですねぇ…」
「そうか…」
その時、ジャックが声を上げた。
「あれ?」
「…どうした?」
ジャックは、前方を指差した。
「この時間になると大抵町のみんなは家に帰るのに…誰だろう?」
大通りには、数mごとに街灯が設置されている。
クロウとジャックの前方30mくらい先に、一人の人影が街灯に照らされていた。
人影は、街灯の下で微動だにしていなかった。
二人が近づくにつれて、その人影がどんな姿をしているかが見えてきた。
その人物は、灰色のマントで身を包んでおり、頭もフードで覆っていた。
その姿に、クロウは警戒し、ジャックを自分の背中側に移動させ、近づいた。
「…誰だ」
その人物は、ゆっくりとその顔をクロウに向けた。
「!!!」
その顔には、銀色の仮面が被せられていた。
その怪しい姿に、クロウは警戒しながら言った。
「ここで…何をしている?」
仮面の奥から、声が聞こえた。

「待ッテイタゾ…ロックマン・ミラージュ」


最終更新:2012年01月21日 23:22