アナタは「世界」と呼ばれるものがいくつ存在するかご存知だろうか?
世界は1つ……………。
皆の答えはそうかも知れない。
その1つの世界は、人間が知っている世界が1つということだ。
つまり、他に世界はあるかもしれない。
この世界が仮に、誰かに作られた模型だとしたらどうだろうか?
そのようなことを考えたことがおありだろうか?
少し昔の話になる。
地球という星、それよりも太陽系全てが出来上がっていない頃のお話。
その頃の世界は3つほど存在していた。
「神界」という神々の住まうとされる世界。
「神界」に夜は存在せず、常に日や3つの月によって明るさがもたらされている。
「魔界」と呼ばれる魔族が住むとされる世界。
「魔界」には夜、つまり闇しか存在しない。
光と闇、そんな文化や環境の違いから「神界」と「魔界」は犬猿の仲であった。
そして残りの1つは、2つの世界と中立的な立場にある「冥界」。
「冥界」には昼も夜も存在する。
そんな環境から「冥界」の者は「神界」「魔界」のそれぞれの文化を理解し、取り入れていた。
その3つの世界は、争いもあったが、お互いに協力し、支えあって時を過ごしていた。
しかし「神界」でとある問題が発生し、3つの世界は存続の危機を迎えることになるのだった。
事の発端は1人の人物だった。
その人物の名前は「祇天香 紫蓮」(してんきょう しれん)。
彼は神界王に使える神界の特別任務官だ。
紫蓮、彼は「神界王セイン」に仕える特別任務官。上位第二級の階級を持ち、神界王の右腕である。
神界とは、人間界で言うのなら中世のヨーロッパのような建物が並ぶ世界。
独特の造りをした石や木の建物が並んでいる。
それらは神界人たちの住居である。
その町の中心には、一際大きな建物がある。
それは神界王セインが住む「神殿」。一般には「神界政務堂」と呼ぶ者もいる。
紫蓮はその政務堂の広い図書室で様々な図書が保管されている本棚の前でセインが頼む本を探していた。
紫蓮「えーと………、確かここのはずだったんだがなぁ………。」
図書室の見取り図を片手に本を探し始めて、すでに30分。
いくつの本棚を見て回っただろうか。
「おっ、あった。………うん、これでよし……と。」
ようやく本を探し当てると、足早に神界王の待つ「王室」へと向かうのだった。
王室へと続く、大理石のような石で作られた長い廊下を足早に歩く紫蓮。
すると王室の方から歩いてくる一人の女性。
セインの政務秘書の「フラットベル」だ。
「おや? 紫蓮さん、あわててどうしたんですか?」
忙しげに歩く紫蓮に声をかけるフラットベル。
金髪のセミロングヘアにオレンジ色の瞳。そしてスーツのような服装にメガネをかけた姿のフラットベル。
それに対して紫蓮の服装は、支給されたややゆったりした白い法衣。
ところどころに図書室でかぶったホコリがついている。
「それが、神王様が本が読みたいと急に………。」
頭をかきながら疲れた顔で答える紫蓮。
「また神王様のワガママが出ましたか。でもがんばって下さいね。
神王様は貴方にしかこういうお願いができないようですから。」
いかに紫蓮が神界王の支えになっているかを認識させる発言をするフラットベル。
その言葉にやや戸惑いながらも紫蓮は疲れたような笑顔で頷く。
「それはありがたいことなのですがねぇ………。」
タオルで汗をぬぐう紫蓮。
するとフラットベルは何かを思い出したかのように胸の前でポンと手を叩く。
「あ、そうそう。神王様にこちらの書類をお渡し願えますか?」
どうやら政務に関する書類らしい。
「私が神王様にお仕事の話をするのは当然のことなのですが、”どうしても紫蓮さんとやる”と仰られまして………。」
いろいろと大変なのは紫蓮だけではないようだ。
「あ、わかりました。まぁ、お互いにがんばりましょう。」
二人は軽く会釈をして会話を終える。
紫蓮は、フラットベルから書類を受け取るとまた足早に廊下を歩いていく。
途中から廊下に絨毯がしかれている。あと少しで神界王の待つ王室だ。
茶色に塗られた木材で作られた二枚扉。
そこには複雑な彫り絵で飾られている。
このドアの向こうで神界王セインは紫蓮が本を持ってくるのを待っていた。
紫蓮はその扉をノックする。
「失礼します。ご所望の本をお持ちしました。」
ドアを開けると、そこは広く、王の私室にも関わらず殺風景な部屋だ。
広さは20畳ほどであろうか、床は石ではなくこげ茶色の木で覆われている。
壁は白い壁紙に50センチくらいまでは木でコーディネートされている。
部屋の中には、白いカーテンと大き目の机が1つ。
そして深緑色のソファーが1つ置かれていた。
「遅い!1時間近く待った!」
ソファから不満げに立ち上がる1人の女性。
身長は紫蓮よりやや低い程度で服装は白と黒が主体の法衣だ。
彼女が神界を統べる神界王。
「セイン・エルシャ」である。
赤茶色の髪に、世界の創造主とは思えない童顔。パッチリとした大きな目。雪のように白い肌。
一方の紫蓮は、銀色の髪に翠色の目。そしてやや白い肌をしていた。
セインの整った身なりとは対称的に、紫蓮はホコリだらけの法衣。
しかし、セインはそんなことなど気にしていない。
彼女が怒っているのは、ただ単純に紫蓮が本を持ってくるのが遅くなったからである。
「本はもういいや。街に行こう!」
紫蓮の手を引っ張って街へ行こうとするセイン。
「いや、しかし…………。いろいろと処理する書類や事例が…………。」
なんとか仕事をしてもらおうと引き止める紫蓮。
しかし、セインは聞く耳を持ちない。
「いいから行くの!街の様子を見る事だって仕事なの!界王の命令!」
権力を盾にするセインに根負けした紫蓮は一緒に街へと出かけることになった。
最終更新:2011年05月08日 18:43