弓下 絶―サイボーグ。自称自宅警備員
カマーキャ―犬 どうみても犬
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ゆっくりと意識が閉じていく。
定期的に水が落ちてくるこの都市船はじっくり死ぬにはいい場所らしい。
予定よりずいぶん長い気しすぎた。
弓下絶は、落ちてくる水の音を聞きながら活動を停止しようとしていた。
「わわわわん!あめーあめー」
どうやら、世界は人生の幕引きについてじっくり考える暇を与えてくれないらしい。
騒がしい声がしてばしゃばしゃと水をはねる音がする。
「わーん、うわぁあん。あめー」
派手にすっころんだらしい。ひときわ大きな水音とともに、一層声が大きくなった。
あまりにうるさいので閉じていた目を開く。
途端にもとは白い色だったのであろう、色の毛をした犬と目があった。
「・・・・」
「・・・・・」
お互い無言になった。見れば見るほど不可思議な雰囲気の空間である。
向こうも何がなんだかわかっていないらしい。しかし、最初に反応したのは
弓下よりも犬の方であった。
「わ、我が名はカマーキャ。日輪の申し子・・・の正当なる子孫であるワン」
えっへん、と胸を張るように自らなを名乗ってみせる。
とはいえ、くすんだ泥色に染まった毛と水にぬれてしょんぼりとした毛では
いささか威厳が足りない気がするが。
そもそも最初に水たまりに落ちた音を聞いているのでお笑いにしか見えない。
「ふ、こんな雨の日にか?」
弓下は思わず唇に笑みを刷く、彼は久々に笑った気がした。
「ワ、ワワワン。日輪のありがたみを思い知るための修行ワン。
決してうっかり雨具をわすれたわけではないワン!!」
「・・そうか。ここは火星で、太陽なんて見られたためしはないと思ったが」
ツッコミを入れると犬はとたんに目をそらす。
「そ、それにしても人間、なにしてるワンか。
人間は弱いワン、かぜひいちゃうワン」
「犬がいうなよ。それに俺はサイボーグだ」
「だったらなおのことたいへんワン」
「・・・そうだな」
どうでもいい、という顔で弓下はつぶやいた。本当にどうでもいいらしい。
むろん、いつ消滅してもいいという気分ではある。
「…変なヤツワン。」
カマーキャが首をかしげながら、弓下に近寄ってくる。
もとはふかふかしていただろうしっぽが目にはいった。どうやら弓下を見ているらしい。
「ふむふむ、割といい仕事してるワンね。
日輪の申し子たる我が、直々にメンテナンスしてやるワン
カマーキャは、世を忍ぶ仮の姿で、整備士やってるワン」
「…」
弓下は何も答えなかった。ただ、雨の音だけが彼らを繋いでいる。
最終更新:2007年12月07日 19:30