Ballsがクルクルと回転している。
路地裏のすみっこで何から面白いものを見つけて再資源化しようとしているようだった。
「アニキー、もー、あそんでないでいくよー」
いつから歩き続けていたのか、どこに向かおうとしているのか。ふとそんな疑問が頭に浮かぶが
インはつとめて、それを考えないようにしている。
今までいろいろあったし、これからもいろいろあるだろう。確かなことも不確かなことも
いいこともわるいこともあった。だけど今、自分は火星にいて好きな歌を歌い続けている。
かわいい猫に出会ったり、変な生きものを見つけたりもした。
ふっと思い立って、思わずうたってみる。題材はいつかみたにゃんにゃんハウスの
猫知類たちのことだ。
インは歌うことが大好きだった。
だから今日もせいいっぱい大きな声で歌を歌う。優しい歌を、誰かに届けるように
「もっふもっふにされちゃうよー♪」
幸せいっぱいの気分で歌う。もちろんせいいっぱい大きな声で。
アニキが大慌てであちこちを走り回っているが、いつものことだとインは思った。
ついでにパリーンとかガシャーンとか派手に何かが壊れる音が周囲で音がしたがそんなものは気にしない。
いつものことだし、インは自分が歌うとなぜか周囲のものが壊れていることが時々あったが、
それは偶然だと思っている。形あるものはいつか、こわれるしね。と自分に言い聞かせて続きを
歌おうとした。
「?」
「ピ、ピッポッポー、ポピッ」
目の前にアニキがいる。何か言いたそうに、実際何か言っているのかもしれないが
インの足をつかんでどこかに導こうとしているようだ。
「あ、もしかして、お客さん?」
「パロポッピポッ」
インはBallsの言葉はわからなかったが、とりあえずこの場から移動するのがいい、と
言っているようには感じた。
「そっかー、よし。じゃあ人がいるところでうたうよー」
「ピ、ピポー」
ぐるぐるとアニキが回転してみせる。×のマークが○に見えそうであった。
「よーし、がんばるよー」
火星は今日もごく一部を除いて平和だった。
最終更新:2007年12月07日 19:43