むかしむかし、わんわんていこくというところに
宰相府藩国という藩国がありました。
そこには夏の庭という、すてきな庭があったのです。
この庭は常に夏で、植物園などのある観光スポットでもありました。
「あー、うみー」
この庭を一個の缶が歩いています。
缶は、ながい旅をしてここにたどりつきました。
なにしろ評価値-5 道にまよったり、知らない人にあめちゃんもらいにいったりと
いろいろ大変だったのです。
悲しむことはありません。つぶれても復活するのでひどい目にあっても死んだりはしませんし、
そもそも頭が悪いので、すぐに忘れます。
だから缶はいつも元気、おちこんだりもしません。
「はー、ここはあったかいなぁ」
今日の気分はコーヒー缶!とかいいながらコーヒーのうた(コーヒーにがいよ、おさとうあまいよ)を歌い歩いていました。
「い、いぬだー!!!」
なんと目の前に犬が現れたではありませんか。
ここはわんわん帝国なので犬がいてもおかしくはありませんが、なかなかに大きな犬です。
「もふもふー」
缶は頭が弱いので、自ら犬に突撃していきます。
「とりあえずもふもふしたかった。
いぬをもふれるならなんでもよかった、とくに反省はしていない」
後日缶は、犬に出会ったときの感想をこう述べていました。
ぺしり!
犬にとっていきなりあらわれた缶はよいおもちゃにしか見えませんでした。
走り寄ってくる缶を前足で蹴り倒すと、そのまま口にくわえます。
「わふ!」
「え?」
犬の唾液が缶にかかります。
「うわ、なになに!」
「わっふわふ!」
犬にがりがりとかじられて缶に穴があきました。
「いやぁ!!」
「わっふー」
ばたばたと暴れて逃げようとする缶。自動で動くおもちゃなんて、珍しいと、一旦口から外して地面に置く犬。
ここから一匹と一缶のおいかけっこがはじまりました。
日が暮れ夜になるまで、追いかけっこは続き。
なんということでしょう、最後は缶は土にうめられてしまったのです。
「うっうー」
そしてそのまま朝になりました。
「ひ、ひどい…わんこひどい!」
缶は少しだけ不満そうに思うと缶の中から一冊の本をとりだしました。
【よいこのかがく!さんがつごう
ふろく:評価値-5からでも できる! ばいおてろ!】
なんだかよくわからないけど、困った時は本を読むといいのです。
本は知識の源、みんなもちゃんと本を読もう。
手近にある本のページをぱらぱらとめくると
きれいなカラーの絵がついているページにたどり着きました。
この本は庭に植えるとある意味バイオテロを引き起こす
植物の一覧です。
迂闊に植えないようにしましょう。
- アスパラガス
- カモミール
- ベルガモット
- ドクダミ
- みょうが
- ミント
「この・・は?える??」
空き缶はかわいそうなことに漢字がよめませんでした。
なんていっても全評価値-5です。
たぶん、ありえないぐらいおばかさんです。
ただ、アスパラは食べ物、というのは理解できたようです。
「あすぱら!おいしいからうえる!」
ふろくについてきたアスパラの種をばらまきます。
すでに犬に埋められたことなど忘却の彼方でした。
「えいよー!」
ついでに付属の肥料も与えてしまいました。
不毛の大地にアスパラが広がっていきます。
ついでに「すごい!むちゃくちゃ成長する」とか書いてありますが
一種のマジックアイテムかもしれません。
最近のふろくってすごいですね。
「おおおー、すごーい、あすぱらー!」
近辺に広がる緑の絨毯。
グリーンアスパラです。
夏の庭の太陽と、なぞの栄養素のおかげで元気いっぱい
十代の少年のように育ち盛りです。
「あすぱらべーこん、あすぱらべーこん!」
さくっと近くにあるアスパラを取って炒め始めました。
こういうときのためのキャンプセットも缶のなかからでてきます。
質量保存の法則などおかまいなしです。
カセットコンロを使い。バターを出して、収穫したばかりのアスパラを炒めます。
一緒に一口サイズに切ったベーコンも忘れてはいけません。
塩とこしょうでぱぱっと味付け。とれたて新鮮な野菜は常においしいのです。
「ごちそうさまぁ!!」
おなかいっぱい。空き缶は元気いっぱい。
楽しい旅の続きをはじめることにしました。
一方そのころ。太陽の恵みと大地の恵みを吸収したアスパラガスは
夏の庭の一部を覆い尽くそうとしています。
実はアスパラガスとても成長が早く、1日に2回は収穫できるすぐれもの。
当然うっかり植えると、ひっこ抜くのが大変なのです。
そのため「ばいおてろ」といわれるほどのものになるわけですが
缶にそれを理解する知能はありません。
むしろ植えたことすら忘れているのかも。
こうして夏の庭の一部にやたらアスパラだらけの草原ができあがったのでした。
ちなみに缶はすっかりわすれて別の国に旅立っていくのですが
それはまた別の話。
最終更新:2008年05月16日 22:21