
設定
名前:弓弦(ゆずる) 能力名:攻撃不能(コマンドアウト)
―設定―
○
2年前のあの日、俺は国家主導の極秘プロジェクトやらに被験者として参加していた。極秘と言っても、そんな重要な実験だとは思わなかった。
この実験に参加していた奴らは、なぜだか俺が見知った顔ばかりだった。なんでも、孤児院出身の引き取り手が無い奴ばかり集められたらしい。
そんな奴らばかり集めて、何を企んでんだか。
実験が始まった。
ガラス越しに見えている科学者たちは、なんだか落ち着きがない。そんなに重要な実験なのかね。
俺はそんな事を考えつつも、終わったら何をしようとか、あの人背がでかいなぁとか、この実験で何かが変わるだなんて、これっぽっちも思っていなかった。
そう。 あの瞬間まではな。
実験は成功だ! 皆がそう思った時、ことは起こった。巨大な稲妻が、タワーに落ちたんだ。
実験室の中にいても聞こえた。耳を塞ぎたくなるような、大きな音だった。
その稲妻の影響なのかはわからないが、突然実験室が…
吹っ飛んだんだ。
実験器具や照明なんかが粉々になって、俺の上に覆い被さってきた。その瞬間、俺は死んだと思ったね。
―――――目が覚めた。おかしい。俺は死んだはずじゃあ…
瓦礫に埋もれながらも、なんとか空間へ這い出した。俺は生きていたんだ。その時ばかりは、奇跡って言葉を信じざる負えなかった。
でもなんだろう…“違和感„ がある。痛みは節々に感じるが、そんなことではない。記憶には無いのに、元から俺はそれが出来ていたような…
その時だったよ。自分に能力が宿ったことを悟ったのは。思いのほか、知能や運動能力も向上したと思う。
これは実験の影響なのか? それとも稲妻か… 実験は成功したのか。いや…こんな惨状だ。成功したはずが…
そんなことを思っていると、目の前に光が見えた。声も聞こえた。助けか?
大きな亀裂が入ったガラスの向こうには救出隊が白髪の科学者を運んでいるのが見えた。
あれ? あの人、さっきまで白髪だったか…? …そんなことはどうでもいい。今は助けを呼ぶ方が先決だ。
俺は叫んだね。 助けろって。まだ生きているぞって。でも、救出隊はこちらを助けには来なかった。
きっと気づいていた人もいただろう。チラッと目があった奴もいたし。それでも救出には来なかった…
こんな被験者なら、孤児院や施設をあさればいくらでもいる。きっといない事にされたんだろうな。
こんなところにいても、いずれ俺は死ぬ。絶望に飲み込まれそうだった。
ダメだ… そう思ったよ。
……ガタッ!
瓦礫が微かに動いた。まだ人が生きているんじゃないか。俺は力の限り瓦礫をどかし掘り進んだ。
少女だった。
確か俺と同じ施設にいたはずじゃ… 息はしている。助け出さなくちゃ。
使命感なのかはわからないが、無性にこいつを助けだなきゃならない。そんな気がした。俺はがむしゃらになってタワーから這い出した。
もともと親がいない俺たちは、孤児院を出てからは、施設に入れられていた。
施設に戻った俺たちを待っていたものは、そりゃ悲惨なものだった。
昨日まで親切だった人達が、手のひら返したように「お前は誰だ」と言い張るんだ。
なんだよそれ… 俺たちは本格的に、この世にはいない存在になっちまったってわけか。
こうなりゃもう打つ手がない。こんなことになるなら、いっそ奇跡なんて起こらなければ良かったんだ…
その時、とっさに思いついた。街の外れにあった貧困街。
そこに行けば、この状況が打開できる。そんな保証はどこにもなかったが、迷いは一切なかった。
正直、歩いていた記憶はほとんど無い。唯一覚えているのは、決して大きくない一軒家が微かに見えた事と、そのまま地面に倒れて気を失ったことぐらいだ。
△
起きたら、俺は布団に寝かされていた。どれくらいの時間がたったのだろう… ……そうだ。あの少女は!
周りを見渡すと、となりに助けた少女が寝ていた。良かった… 助かったのか…
それにしても、俺はどうなったんだ…? そう思っていると、奥から若い夫婦が現れた。
どうも倒れていたところを、親切に助けてくれたらしい。さらには、行く当てがなかった俺たち二人を快く迎え入れてくれた。
あの人たちも決して裕福ではないのに… ほんと、あの人たちがいなかったら、俺たちは飢え死んでいただろうな。
俺たちが住んでいた貧困街は、事件が起こらない日がないくらい治安が悪かった。
殺人、窃盗、麻薬… 思いだせる事件の数だけでも、両手の指の数では収まらないかもな。
事件を起こした大半の人たちが能力者だった。俺たち以外に能力者がいたことは結構驚いたっけな…
そういや、少女にも能力が宿ってたんだ。俺とは違う系統だ。強そうな能力だったなぁ。羨ましいってボソッと呟いてしまったし…
そんな事情もあり、俺たちは能力のおかげで事件に巻き込まれることはなかった。
最初の頃、俺はただ逃げてるだけだったが、おじさんとおばさんが、能力者どもをバッサバッサ倒しているところを見て、ひらめいた。
あの格闘術を教えてもらって、俺の能力と組み合わせれば強いんじゃないか? 早速教えてもらったが、正直ビビった。人を殺せそうな技ばっかりだったからな…
なんでも、真烈活殺術とかいう古式武術を復興して師範代を夫婦でやっていたらしい。危険すぎて、弟子が一日でいなくなったらしいが…
まあ、それはいい。 とにかく、それなりに生活もできていたんだ。相変わらず貧しかったが、おじさんやおばさんの手伝いをして、楽しい毎日だった。
この生活が、ずっと続くと思っていた…
あんなことが起こるまでは…
□
この街で暮らし始めてから二年が経とうとしていたとき、街に突然、対能力者部隊が軍勢率いてやってきたんだ。
なんでも能力者関連の事件が多いこの街の能力者一斉摘発やらをしに来たらしい。
能力者は善悪関係なく連れて行かれた。もちろん俺たちも例外じゃなかった。
抵抗すると不味いと思って、渋々ついていったよ。そして俺たちはここ、特殊収容所に入ったってわけだ。
罪状は特殊能力者破壊防止法違反。刑期は5年らしい。長いやつは10年も20年もあるらしいが。抵抗しなくて良かった…
収容所での生活はそれほど不便でもなかった。静かにしてれば何をされるでもないし、飯もうまい。おじさんたちには悪いが、こっちの飯の方が豪華だ。
まあ、あと5年だ。それまでおとなしく過ごそう。そしたらまたあの場所に戻れる。そんなことを思っていた矢先、突然ベルがなった。
この収容所を抜けだした奴がいたんだ。ま、どうせ捕まるだろ… 呑気なことを考えてるうちにベルが止んだ。と同意に収容所のセキュリティも一斉にダウンしたんだ。
俺には何が起きたかわからなかったが、緊急事態なのは容易に理解できた。逃げ惑う看守。暴れまわる能力者。その日、1日中看守の悲鳴が聞こえていた。
その日を境に平穏が崩れ去った。来る日も来る日も、能力者たちの争いが繰り広げられている。俺はそんな戦い参戦する気もないし、したくもない。
あぁ… 俺の静かに過ごす収容所ライフが台無しだ。だいたい、三度もどん底に落とされるって… 神は俺に恨みでもあんのか? あぁ、生き残っちまった罰なのかもな… それならあいつも一緒か…
それから数日が経って、収容所内で起こる争いに終止符が打たれることになった。
ボスを、決めよう。
誰がそんな事を言ったのか。そんなことは知るよしもないが、その話は収容所のすみずみまで瞬く間に広がった。
俺は誰がボスになろうとも関係なかった。 静かに過ごせるのならね。
でも、しっかりとみんなをまとめようなんて奴がいるのかね… 悪党がボスなんかになったら、静かどころではなくなるかも…
じゃあ、あんたが出ればいいじゃん!
…はぁ!?
あいつのそんな、独裁政治もびっくりな一言で、俺はこの戦いに出ることになってしまった。
まったく…。めんどくさいんだがなぁ…。
筆者:弓弦
何書いてんの…?
のわぁっ! なんだよ! 後ろから話しかけんな!
硬いこと言わないでさー。 へー、日記か何か?
勝手に見るなよ! まったく…。もしかしたらこれで死ぬかもしれないしな。遺書みたいなもんだよ。
遺書? なにそれ、縁起でもない。大体、あんたは死なないよ! 勝てばいいんだから。
はぁ…。 なんだよそれ。 相変わらずお前は勝手だな。戦う相手は大悪党ばかりだぞ? そんな軽いノリで勝てるわけが…
大丈夫だよ。勝てるよ! 私が保証する。 それに、あんたには能力もあるし、おじさんに教わった殺人格闘技もあるじゃん!
殺人格闘技とか言うなよ! しっかりとした名前があってだなぁ!
はいはい。わかったわかった。とにかく、勝ちなさいよ? 死んだりなんかしたら、承知しないから…
…わかった。
…でもさ! もし、もしだぞ? 俺みたいにさ。ここを元どうりにしようって奴がいたらさ。別に勝ちを譲ってやっても…
はぁ? そんなのダメに決まってるじゃん! 勝ちなさいって言ったでしょ!?
いや… でもさ…
…勝 ち な さ い よ ?
………はい。
お前の能力の方が断然戦いには向いているのに…。
何か言った!?
………いいえ、なんでもないです。
―能力名― 攻撃不能(コマンドアウト)
・斬撃、銃撃、打撃などあらゆる物理攻撃の軌道計算し、光速の約1.4倍(4億1970万9441m/s)の速さで避ける事ができる。弓弦に関しては、実験が一応成功しており、知能はそれにより向上した。演算もほぼ一瞬で行える。
・1度に移動できる範囲は自分を中心として半径5m圏内。この圏内であったら基本的に無限使用が可能。また、能力を使えるのは敵の技を避けることと空間移動のみ。テレポーテーションではないので障壁などがある場合、
それを避けるか、よじ登るしかない。3mまでなら光速でよじ登ることが可能だが、それ以上は登ることが不可能。
・攻撃に関しては、真烈活殺術を応用したもの。光速で相手に近づき、心臓、肺、動脈を圧迫、切断する。真烈活殺術はかなりの集中力を使うので能力との同時使用は不可能。
あまり人を殺すことを好まないので、普段はその下級技の関節技などで戦闘をしのいでいる。しかし、力の加減がわからないのか、大抵相手の骨を折ったり関節を外したりしている。
この戦いでは死も覚悟しているので、ヤバイと思ったら殺すことも考えている。
―弱点―
・5m以上移動する場合、反動で1秒間は動けなくなる。また、目で見て軌道計算するため、目で見えない物を避けることはほぼ無理。
・神経に直接与える攻撃や毒ガスなど、移動などによって防ぐことができない攻撃
または、内側から犯してゆく攻撃技にはめっぽう弱い。
・体の硬質化などを使う相手には、硬さにより攻撃力が半減してしまう。
・高さ3m以上の障壁に囲まれたら、その障壁を壊すため、10秒は身動き不能となる。
・弱点と言っていいのかわからないが、助け出した少女に言われたことは割となんでもしてしまう。尻に敷かれているのだ。
補足
最終更新:2014年06月14日 22:46