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玉兎の芒(ぎょくとのススキ)

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製作者 雪村
出場大会 第7回大会

【幕開き】

今となっては昔のことだが、奈良の都に美しい女がいた。
女の名は「なよ竹のかぐや姫」。

かぐや姫は月の都の者であり、八月の満月の夜、月からの迎えが奈良の都に降り立った。
哀れかぐや姫は天人に連れられ月へと帰っていくのだが、その月の使いの者の中に一羽の玉兎が紛れ込んでいた。

名を「玉兎の芒」。
月宮にて薬を作る一羽の兎だったが、月のものには珍しく地上へ興味を持ち、かぐや姫を迎えに地上へ赴く際、迎えの中に紛れ込んでいたのだ。

地上についた芒はこっそりと使いの者たちから離れ、地上を駆け出した。
見たことのない建物、月とは異なる空気、そして空に浮かぶ満月と星々。
文明こそは月宮の足元にも及ばないが、地上には様々な色があった。
初めて見る光景に目を輝かせていると、ふと、足元の青々しく生える草に目が止まる。
力強く生えるその草は月のものとは違い、太陽の匂いがした。

恐る恐る、しかし吸い込まれるようにその草を食んだその瞬間、しゃんと鈴の音が鳴り響く。

弾かれるように面を上げると、かぐや姫たちが月へと帰っていくのが眼に映る。
芒は天人の者へと駆け寄り、再び月へと向かう列に紛れ込もうとするが、不思議なことに列へ加われない。
何度も天人の光に弾かれ、いよいよ芒は声を張り上げた。

「天人様、天人様。玉兎の芒と申します。誠 勝手ではございますが、今宵の地上への列に忍び込んだ玉兎でございます。
忍び込んだ身、どんなお叱りを受けても構いません。どうか私めも月へと連れ帰って頂けませぬでしょうか。」

するとその声に気付いた一人の天人が振り返ったと思うと徐に眉をひそめた。

「嗚呼、玉兎、汚らわしい地上のものを食みましたね。かぐやではあるまい、たかが玉兎一匹。このような汚れた身のものを月へ返すわけにはいきませぬ。」

そう告げると呆ける芒には目もくれず、かぐや姫を連れた天人たちは月の都へと戻っていった。


* *



それから幾年月が流れ、地上へ取り残された芒は奈良の山にてひっそりと暮らしていた

月へと嘆き、伸ばしても決して届かぬ腕を下ろすまでに二百年。
それから、それでも地上の暮らしも悪くないと見上げていた瞳を己のいる地面へと向けるのに、百年。

随分と時間がかかってしまったが、元より不老不死である月の住人。
月への未練を断ち切り、さて、この先長い年月を地上でいかにして過ごそうか。とそんな考えが頭に浮かぶようになった頃、

芒は一人の青年と出会った。

山で行き倒れになっていた青年は自分を「薬売り」だと言った。
どうやら薬草を取りに山へ来たとのことだが、野犬に襲われそのまま山中で行き倒れとなったらしい。
その上、その際に足を怪我していたらしく山も降りれない。
そんな薬売りの姿を見かね、仕方なしと芒は自分のねぐらへ薬売りを招きいれる。

変わりものなのか、それとも唯の阿呆なのか、薬売りは人とは異なる芒に臆する事はなく、
それどころか薬箱に興味を示した芒にどこか嬉しそうにその中身を開いた。

何百年ぶりかに香る薬の匂いは月の薬とは異なるものの懐かしさに溢れていた。

「これは嬉しい。薬に興味がおありのようだ。」

まじまじと薬箱を眺める姿に薬売りがそう問いかけると、芒はそっと薬箱の引き出しを閉じる。

「ええ、まぁ、少しばかり。」
「兎でありながら薬に興味があるとは、まるで月から来たようだ。」
「…お前は私が人では無いと分かっているのに怖くはないのか。」
「何を言うか。人であろうが無かろうが、行き倒れを介抱する親切な者が怖いわけなかろう。」

全くもって不可思議な薬売りはそう言ってまた嬉しそうに笑う。
それどころか「見たところ貴方はとても薬に詳しそうだ。もしよければその知識を分けて頂けぬか。」等と言うこの薬売りに芒はさらに目を丸くする事となる。

そしてあまりにも突拍子もない申し出に面をくらい
「そちらの知識と交換であれば。」
等と呆けた事を口にしてしまったが故に、薬売りの人間と芒との奇妙で騒がしい暮らしが始まることとなった。


* *



―――今となっては昔の事だが、あの人間と暮らした月日をふと思い出すことがある。


平成の世、時には妖怪に。時には人間に。
薬箱を背負い、ふらりふらりと、人と月、そして妖の知識を合わせた薬を売り歩く日々の中、ふと千年前の記憶が蘇る。

顔見知りの爺様は時折「この平成の世は昔と比べて住みにくくていけねぇ。」などと言っているが、なんのことはない。
芒にとっては千年前と変わらず、薬を作り、それを必要とするものへ売るだけのこと。

過去を忘れて生きるなど、なるほど人でないものにしてみたら茶飯事だろう。

ただ、今の世になっても
例えば、人や人でないものに薬を手渡したとき。
例えば、嗚呼、助かったと感謝の言葉を聞いたとき。
あの薬売りの男を面影を見るのだ。

汚れと言われたこの地上に残され千年と数百年。
平成の世になり26年。

どちらも存外、悪くはないものだ。



【閑話】


  <ドアを叩く音と開ける音>

――なんだ、総大将の爺様か。珍しい。

――なんだとはなんだ。じゃましていいかい?

――ダメだといっても上がり込むのがぬらりひょんだろうに。

――そいつは違いねぇ。

――…して、なんの用だ?と、いっても大方爺様のことだ、祭りの事かだろうて。

――分かっているってなら話は早い。芒も祭りに出てくれねぇか。

――断る。

――なぜじゃ!

――ああいうものは若い衆にやらせておけばよかろうて。だいたい私は爺様の百鬼夜行には興味はない。

――連れねぇこと言うなよ、芒よ。昔からの好じゃぁねぇか。

――爺様こそ好なら引いてくれんかの。私に頼むのが間違いだ。
  それともなんだ。何か理由があるのならば聞いてやらんこともないぞ。

――…それがよぅ、お前さんの言う通りわけぇ衆は集まったんだが、古い馴染みがとんと集まんねぇ。
  しかもなんだい、戦いはしねぇが観戦だけは意気揚々と来るつもりだから質が悪い。
  若い衆だけも構いはしねぇが、それじゃあ俺ら古い輩の顔が立たん。

――それで私というわけか。その様子じゃ散々断られてきた後と見える。

  <芒がくつくつと笑う声>

――おめぇさんの言う通りだ。だから頼む。このとおりじゃ!

  <間>

――ひとつ条件がある。

――条件とは。

――祭りの合間に商いをさせてくれたら出ても良いぞ。

――おお、それぐらいならなんてことはねぇ!わけぇ衆にむざむざ負けてやるのも洒落せぇ。存分に暴れてくるといい。

――まぁ、薬箱の薬が切れない程度にはやらせてもらうさ。



【殺陣】

速く強い脚と聴力、そして大杵を使って立ち回る。
月の住人の為 不老不死で、身体も昔ほどではないが頑丈。
とはいえ胴を断ち切られたり、四肢を散り散りにされると元に戻るまでに一日かかる。

この状態に自ら調合した丸薬で能力を増やし立ち回る。
丸薬は一錠につき効果は十分。
三つまで同時に飲むことが出来るが、同じ薬を連続して飲むことはできない。(十分必ず開ける)


【丸薬】

  • 眼薬
 十分の間、眼力が上がり早いものや遠くのもの、また見えないものを捉えることができるようになる。

  • 速薬
 十分の間、自分の早さが倍になる。

  • 重薬
 十分の間、自分の重さが十倍になる。

  • 力薬
 十分の間、力が跳ね上がる。

  • 知薬
 十分の間、IQが300まで上がる。

  • 獣薬
 十分の間、大兎の姿になり身体能力が上昇する。

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最終更新:2015年07月02日 01:14