| 製作者 | ずっきぃ |
| 出場大会 | 第七回大会 |
| 経歴 |
「あの、それおひとついただいてもよいかしら?旦那様もきっとお喜びになられるわ」
――市田 里奈(しだ りな)――
◆生前の話
彼女は生前、とある良家に奉公に出されていました。
兄の犯した罪の償いに、「一生奴」として働いていたのであります。
彼女は大変器量がよく、奉公先の主人にも大層気に入られておりました。
彼女の仕事は食事に使った食器を洗うこと、
それも客人をもてなした時などに使う特別な皿などを洗い、そして仕舞うことでありました。
彼女はいつも丁寧に洗い、丁寧に水を拭き、丁寧にお皿を仕舞い込んでいきました。
そんなおり、主人にとって非常に重要な客人をもてなすことになったのであります。
主人は宴の席で、非常に特別な時にしか使わない、家宝ともいえる十枚の皿を使用することにしました。
屋敷の使用人たちの努力、そして家宝の十枚の皿の効果もあって宴は成功、客人も喜んで帰っていったのでありました。
しかし事件はこの後に起きました。
宴の余韻もほどほどに、使用人たちは後片付けに奔走しておりました。
そして彼女もいつものように宴に使われた食器を洗い、水を拭い、丁寧に仕舞い込んでいました。
しかし今回は家宝の皿がある。
彼女は特にこの皿を丁寧に洗い、ことさらに丁寧に一枚一枚仕舞い込んでいきます。
そして最後の1枚を持って皿を重ねた瞬間、彼女は青ざめました。
十枚あるはずの皿が九枚しかない。
様子を見に来ていた主人が青ざめている彼女に気が付き、何事かと問うてみた。
彼女は正直に家宝の皿が一枚足りないことを告げ、「確認してきます」と言い、お台所方に向かった。
しかしお台所方の誰もが「ちゃんと十枚そろっているのを確認してから彼女に渡した」と口をそろえて言うのであった。
それもそうである、この屋敷の家宝ともいえる大事な皿である、全員が細心の注意を払って取り扱っていたのだから。
彼女は青い顔のまま先ほどまで作業していた場所に戻った。
そこには屋敷の主人が恐ろしいまでに冷酷な顔をして立っていました。
「皿は、ないか」
彼女は何も答えられなかった。
そんな彼女の態度に業を煮やした主人は、床の間に飾ってあった刀を手に取り
彼女を袈裟切りにし、なで斬りにし、滅多刺しにしてしまいました。
そしてその死体は屋敷の井戸に放り込まれてしまったのであった。
これが彼女の、番町皿屋敷のお菊の生きていた時のお話であります。
◆死んでその後
一生奴として奉公に出された自分によくしてくださった旦那様が
大事にしていた皿をなくしてしまった自分を責め続けました。
旦那様を喜ばせてあげたい、そのためには十枚の皿をそろえなければならない
そう彼女は思い、毎晩皿を数えて数えて数えつくしておりました。
皿を数えて数百年、彼女はもはや何を数えていたのかも忘れるほどに数え続けておりました。
そしてふと、彼女は思うのであった。
「足りないのであれば、他から一つだけ貰って来ればよいのではないのか」と
かくして彼女は足りない皿の代わりに一つだけ奪う妖怪へと変質し、
「皿屋敷のお菊」から「市田 里奈」となったのであった。
◆一つだけ奪う妖怪
彼女は既に自分が何を数えていたかを認識できないまでに目の前にあったものを数え続けていました。
そのため、ほかから何をもらって来ればよいのかがてんでわからないままであった。
彼女はとにかく何かで穴埋めをしようと、手当たり次第に一つだけ奪ってはほかのものと並べてみました。
奪うものは多岐にわたっており、
実在するものから、人の命、存在、そして数字といった概念に至るまでなんでも奪っていった
そして自分の手元のものと並べて思うのである、「あぁ、これではない」と。
彼女の被害にあった人たちは皆口をそろえてこういうのであった
「一つ足りない、一足りない」
◆九枚の皿
彼女の周りには彼女の数えていた皿が九枚取り囲んでいる。
これらは実際の屋敷の家宝の皿ではなく、彼女が数えるために生み出されたものである。
これらの皿は彼女の意識の外の存在ではあるが、同時に彼女自身でもある。
そのため彼女に危害が迫ると無意識のうちに彼女を守るように身代わりになるのである。
しかし、所詮は皿である。彼女をかばうと同時に割れてしまうのであった。
そして彼女は思う
「あぁ、1枚足りないと思っていたらもう1枚、なくなってしまったわ」
そして彼女はさらに足りなくなった分を埋めるために、さらにもう一つ奪うのであった。
しかし市田里奈という妖怪は彼女と九枚の皿で構成された存在であるため
割れてなくなってしまった皿は、気が付くといつの間にか九枚まで戻るのであった。
そして彼女は
「あぁ、2枚目も無くしてしまったと思ったけど気のせいだったみたい、また旦那様に殺されてしまうと思ってしまったわ」
と安堵するのである
◆彼女の目的
彼女の目的はあくまで十枚目の皿の穴を埋めるものを探し出すことである。
百鬼も集まる妖怪たちの祭りにその穴を埋める何かがあるのではないか
彼女はそう思い、そして一つ奪うために祭りの中心に身を投じるのであった。
デザイン決定稿

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