
| 製作者 | ずっきぃ |
| 出場大会 | 第十回大会 |
| 経歴 |
設定
「・・・交渉は、決裂した・・・!」
◆苦悩
100年前、彼は世界を否定した
自らの理想とする世界を作り上げるため
世界そのものを壊そうと画策した
しかし、彼の理想は否定された
彼は世界、そのすべてから拒絶されたのであった
そして彼には
国家反逆を企てたクーデターの首謀者として
また市民を恐怖に叩き落とした主犯として
人の生をはるかに超える懲役500年の判決が言い渡され
罪を償いきれるよう死ぬことのない不死身の身体を与えられた
無限とも思える時間の中
重しを付けられ地を這いずることしか、いや這いずることもできない中
人の尊厳をすべて奪われた独房の中
彼は深く、暗い絶望の中をさまようこととなった
彼は彼を苛む苦悩からの解放には死を賜る以外に方法はないと考えるようになった
狭く暗い独房の中、彼がとりえるすべての行為を試していった
手近なもので自傷してみた、傷は瞬く間に消え去ってしまった
舌を噛み切ったことがある、死ねなかった
喉をつぶしたことがある、死ねなかった
心臓を握りつぶしてみた、死ねナかった
頭を潰してみた、死ねナかっタ
ある日独房の外に出る機会を得ることができた
高所から墜ちてみた、死ネナかっタ
他の人間をたきつけてみた、死ネナカっタ
ガスマスクの男に爆破されてみた、死ネナカッタ
彼に死を与えようと約した男が二人いた、シネナカッタ
彼の時間を止めようと約した男をその手で握りつぶして彼は途方に暮れてしまった
ここでも、自分は死ぬことができなかった・・・
◆変化
彼が途方に暮れている間、周囲はしんと静まってしまった
それもそうだ、自分たちをまとめ上げる人物を選ぶために舞台を用意したのだ
それがすべて台無しになってしまったのだから
囚人たちはただただ呆然とし、そして混乱を極めた
・・・はずだった
しんと静まった会場の、どことも知れぬ誰かから
突として歓声が上がった
その歓声を皮切りに、堰を切ったように、狂ったような喝采が場を支配し始めた
渦中の人物は依然途方に暮れているだけであり、周りの喝采は彼の意識の端にも引っかかることはなかった
また喝采を上げている周囲の人物たちも本当にそれを望んでいたのか定かではなかった
しこうして、渦中の彼は
不死身の死にたがり、スターベン・メヒトは
囚人たちの据えた玉座に祀り上げられることとなったのである
あくまで仮初ではあるが
スターベン・メヒトを頂点として囚人たちは指揮され統率され組織された
そして彼はその玉座から、久方ぶりに、実に100年もの時を経て外の世界を眺めることとなったのである
そこに広がっていたのは、かつて彼が理想とした世界ではなく、彼の存在を拒否した世界でもなかった
そこは、科学が支配した世界であった
彼は虚無の広がる心で想う、そして自身の記憶を呼び覚ます
科学とは、彼に死なない体を与えたモノではなかったか
科学とは、実験と称し、彼に耐え難い苦痛を与え続けたものではなかったか
科学の発展、人類の発展を題目に人道に悖る行為を正当化する免罪符ではなかったか!
つい先ほどまで彼の目の前に立っていた男が言っていたではないか
科学のために能力者になった彼らは、それによって蔑ろにされてきたのではないのか
彼らは死によってしか救われる術がないのではないのか
そうだ、これは科学に対する復讐だ
科学の築いたすべてのものを破壊し、壊しつくし、更地に変えるのだ
そしてその先に、我々の"救い"を実現するのだ
◆宣戦布告
引きちぎった大統領"だったもの"の頭を放り投げながら彼はつぶやいた
「これで・・・交渉は、決裂した・・・!」
もとより彼らの提示した要求などするりと飲み込まれるとは考えてなかった
いや、彼らからしてみれば多少の労力が減じる以外の意味を持たなかった
彼らが用意した過剰ともいえる演出、それは彼らの目的を強く、強烈に印象付けるためのものであった
そう、これは大統領の会見などではない
彼ら、囚人たちによる世界への宣戦布告なのだ
彼らの救いを実現する理想郷、それを作り上げるために全てを、文字通り"全て"を壊し尽くすための復讐劇が始まったのだ
◆不老不死実験
100年前、人類の夢であった不老不死に科学の力で挑もうとした人たちがいた
太古の昔の偉人も夢に見、手に入れようとあがき続けた技術
それを実現する方法をついに見つけることができたのであった
不老不死実現の方法としてとられたのは細胞の分裂限界を取り払うことであった
傷を負うと瞬時に細胞が傷を埋め、離れた部位を引き合わせ癒着することで再生を行う
また無限に代謝を行うことで細胞に死という概念がなくなり、常に新鮮な肉体を維持し続けるため
老化することがなくなり処理を施された時から歳を取らなくなり、寿命を克服することができたのであった
しかし、不老不死が実現できると新たな問題が山積することとなった
人類の進化として一般に普及させた場合、人口が増える一方になってしまう
不老不死の人間を"殺しきる"方法の模索、それが当面の課題となったのである
実験には超長期受刑者を用い、いかな衝撃に耐え、いかな損害を消し、いかな破壊は受け付けるのか
耐久実験の名のもとに様々な方法を試していった
被験者の痛覚が生きている事実を黙殺して
しかし実験の成果も芳しくなく
山積した問題を解決する糸口を得れないまま
耐久実験が人道に悖る行為であると糾弾され、実験は凍結
作成された実験ログや論文などは破棄され、闇に葬られることとなった
現在では都市伝説のひとつとして語り継がれる程度であるが
狂信的な科学者によって論文の一部が保管されてきており
また科学タワーのアーカイブには厳重な閲覧制限を掛けられた論文の全文が保管されている
◆彼の肉体
その刑罰はただただ受刑者の人としての尊厳を踏みにじるためだけに考案された
地を這いずりまわる自由さえ奪うために全身に何十キロもの重りを付けられ蔑まれる
本来ならばそれだけで終わっていた刑罰であった
しかし彼の肉体は不老不死であり、気が遠くなるような懲役の中で
身に着けた重りに体が順応していってしまったのである
最初は両手両足に各々50㎏、合計200kgの重りをつけていたのだが
徐々に動けるようになってしまい、その都度重りを追加していった
そして最終的には各々500kg、合計2tもの重りをつけても動けてしまえる肉体になってしまったのである
鎖で拘束する方法もとられたがもはや彼の筋力では簡単に引きちぎれてしまうのである
スターベン・メヒトは常人をはるかに超える筋力を得てしまったのだ
補足