奇術師トム

 

 

 

製作者 紺蝋 
出場大会 第十二回大会 
経歴  

 

 

 

 

設定

トムには生前の記憶が無かった。
なぜ自分は幽霊になったのか?何か果たせぬ未練があったのだろうか?
ゴーストタウンに住むほかの幽霊たちは果たすべき目的のために
毎日懸命に働いているのに、自分はといえばただ目的もなく
日々を過ごしているだけだった。
いろいろな仕事に手を付けたてみたが、ドジで間抜けな自分にできる仕事は
せいぜい街の掃除くらいで、それすらもやり甲斐を見いだせずにすぐやめてしまった。

半ば自棄になったトムは、透明な体を利用して人住む街へと繰り出した。
思えば人間というものをここまで間近に見たのは初めてだった。
実体があるのは不便そうだな、などと思いながら街の中心部へとするすると抜けていく。
住宅街、市場を通り抜けて広場へと出ると、そこには何やら人だかりが出来ていた。
どうやら、奇術をしている人とそれを見ている観客のようだ。
なるほど面白そうなことをしていると興味を引かれたトムは
ちょっとだけ奇術を見ることにした。
華麗なる手捌きで奇術を披露する男、それを見て手を鳴らす観客――
ふと、観客のほうを見たトムに衝撃が走った。

観客の笑顔のなんと素晴らしいことか――!

幽霊には決して持ちえないその絶妙に心を映し出す鏡のような表情に
トムはどうしようもなく惹かれた。
人間だったころの記憶が無いというだけかもしれないが、
しかしそんなことは今のトムには些末なことだった。
奇術を見るのも忘れて、観客の期待、驚愕、驚嘆、様々な表情を
食い入るように見つめ、奇術が終わった後もその余韻に浸っていた。

またあの表情が見たい。観客が笑ったときのあの眩しさすら覚える表情を。

しばらくは人の笑顔を見るために街を練り歩くだけであったが、
自らが他人を笑顔にしたいと考えるようになるまでそう時間はかからなかった。

体を服と仮面で隠し、道具を揃えて街へと躍り出る。
するのは、奇術。
奇術師を名乗れば顔を隠していても不自然でないし、
幽霊の体と魔術を組み合わせれば自分にもできる。
ここまでの決断をするまでに何度も弱気になったが、
あの笑顔を思い出すだけで勇気が湧いてくるようだった。
あの時の広場へとたどり着いたトムは、今一度自分を奮い立たせて
いざ、と、こう言い放つ。

「さあみなさま!あっと驚く奇術は見たくありませんか?
これからわたくし『トム』が、今からご覧にいれましょう!」

なんだなんだと集まる観客。早速と言わんばかりに奇術を始めるトム。
自分に向けられた観客の笑顔を見て、トムは確信した。
人々を笑顔にすることこそが自分の目的だと。

 

【奇術師トム】
とある国の有名な奇術師。
彼の「人を楽しませたい」という飽くなき願望が生み出した奇術は
人々の心を大いに揺さぶり、今では国の外からもトムの奇術を見たいという人がいるほど。
その正体が幽霊だと知るものは一人もいない。
普段はへっぴり腰だが奇術のことになると一変、貴族のような凛々しい立ち居振る舞いになる。
体は服で、顔は布と仮面で隠しており、もしそれらが外れたり破れたりしたら
トムは素に戻ってしまうだろう。


【奇術】
空間や物体に干渉する魔術を巧妙に操り、それを奇術としている。
トムの奇術は「見せる」だけでなく、観客まで巻き込むのが特徴。
以下は一例。他にも、様々なリクエストに応える。

・4次元シルクハット
シルクハットに入れたものが消えたり出てきたりする奇術。
シルクハットより大きいものも不思議と入ってしまう。

・気まぐれトランプ
トランプが何もないところから突然出てきたり、投げたと思ったら手元にあったり、
増えたり減ったり、観客のポケットに入ってたりする。
ただの魔術に見えないよう手やトランプの動き、タイミング等が非常に工夫されており
いつ魔術を使ったのか、そもそも魔術を使ったのかすら分からないのが見どころ。

・テレポーテーション
自分のいる空間と移動したい場所の空間を入れ替え、テレポートする。
テレポートそのものはウリではなく、マントを翻した瞬間にテレポートしたり、
相手の攻撃が当たる直前にテレポートしたりして観客を沸かせる。
テレポートした後は、観客に見つけてもらうまで自分からは姿を現さない。

・串刺し人形
自分の体に剣などを貫き通す奇術。奇術というが、本当にタネも仕掛けもない。
やり方を間違えると幽霊だとバレるので、大抵は自分で刺す。
トムの奇術の中で特に人気がある。

【 所属国家設定 】:
【国について】
トムが奇術師として有名になった国は、エンターテインメントとして魔術が発展した国である。
多数の幽霊が活動の拠点としているゴーストタウンもこの国の中にあるが、
不気味な雰囲気に満ちたその街に訪れる人はいない。
トムが使っている空間転移の魔術や物体操作の魔術が比較的発展しており、
移動や配達は魔術によって非常に高速に行われる。
当然、魔術で金を盗られてしまわないように防御魔術の改良も進んでいて、
国民の財布はほとんどすべて魔術を打ち消す術式が刻まれたものである。
一方で、生活に寄り添う火や水といった魔術はあまり発展しておらず、
暖炉に火をつけるときは薪を用意してそこに火をつけなければならないし
火を消すときは桶に水を汲んでくる必要がある。

この国の首脳は議長の座に興味がなく、自国のエンターテインメント性を売り込むため
突然現れて1年ちょっとで国を駆け上がった話題性抜群のトムに出場を依頼した。

 


補足

 

 

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最終更新:2017年03月05日 03:40
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