エイビス

 

 

 

製作者 エタヤハ 
出場大会 第十二回大会 
経歴  

 

 

 

 

設定

今からおおよそ100年前、大魔導決選が開催がまことしやかに噂される中、魔導国家連合の辺境の小国「アブグルント」の魔導士大学から一人の才覚溢れる若者が輩出された。

名は「アランドル・ビス・スコール」Arundol bys squall
地水火風の四大元素の複合魔術をいとも容易くマスターした天才であり、将来を嘱望された逸材であった。

これほどの若者をこの小国に留めるには惜しい。
そう考えたアブグルントの代表魔導士は、彼を魔導国家連合の諸国を旅させ、更なる見聞や知識を深め、ゆくゆくはこの魔導国家連合を光へと導く議長として君臨してほしいと考えたのである。

25もの国家を旅するアランドル。
辺境の国では見もできなかった魔具、術式、そこに暮らす人々の生活、それらは確実にアランドルの糧となり土台となっていく………はずだった。

 

世界は広かった。いや、上には上がいるというのが正しかっただろう。
天才として迎え入れられた高位魔導士の講義では、その技巧な内容の理解に苦しみ、魔具の取り扱いも未熟。
魔法を用いた実戦形式の講習では、その華麗な戦いぶりや、魔法のアレンジ、応用に圧倒され手も足も出ない始末。

結局のところ、自分は辺境生まれの田舎者であることを、事実として突きつけられるだけの旅。
旅先でも口々に浴びせられる罵詈雑言。この程度の若造が世界を知り、トップに立つなど到底無理な話だったのだ。

志を砕かれ、全てに絶望しながら泊まった宿。
ふと窓から外を見れば、夜雲に星月は隠れ、空は一面暗黒。街に点在するトーチの光だけが爛々と夜の闇に手を伸ばして吸い込まれていた。

そう、闇だ。
外の世界では未だに愚か者達が戦争という悪趣味な遊戯に明け暮れている、この先を見通せぬ時代。
ろくに照らしもできない未来を見ようとして何になるというのだ。
輝くことに心血を注いで何になるというのだ。


見通せぬ闇に不安を抱くのであれば、自らが闇になればよいではないか。

輝くことができぬなら、誰もが照らしつくせぬ深淵になればよいではないか。


気づけばアランドルは行動を起こしていた。
アブグルントの名前を大いに利用して、空き家を個室の研究所として確保。
辺境の故郷にはなかった魔導書を買いあさり、昼夜を問わず闇の研究に没頭する日々。
図らずも、勉学の旅で身についた新たな知識が、この研究に更なる拍車をかけていた。

様々な書物から新たな知識を吸収する中で、アランドルは遂に第一種禁忌図書「ビェーズドゥナ」にも手を出してしまう。
結果的に大いなる闇の知識を得たアランドルだが、この事実はすぐさま白日の下に晒され、異端審問にかけられることになる。
異端として第一種追放魔導士に認定されてしまったアランドルは、魔導国家連合からの永久追放を受け、自身の故郷アブグルントから外の世界へ強制転送されることとなった。

 

転送されるその日、その瞬間、平然としているアランドルに対して、異端審問官の一人が問うた。

「お前は自分がした事の重大さを理解しているのか?」

顔色一つ変えずにアランドルは答えた。

「事の重大さなど分かるはずもない。皆、光に騙され闇の本質を正しく理解できていないのだ、私の行ったことは魔導士として、探究者として、正しかった。心からそう思っている。」

 

 


そして現在、議長の死去の報が魔導国家を駆け巡る中、とある小国と連絡が取れなくなっていることが明らかとなった。
小国の名は「アブグルント」
魔導国家連合の辺境の小国にして、かつて第一種追放魔導士が生まれ育った国である。

しかし、その国の代表者は既に大魔導決選会場に到着していた。
黒いローブを深々と被り、代表としての調印書を提示する男。

名は「エイビス」

深淵(abyss)の名を冠す、深い闇を身に宿した男だった……。

 

 

【概要】
魔導国家連合における第一種追放魔導士、アランドル・ビス・スコール。
その成れの果てが、彼、エイビスである。

追放されてなお続いた闇魔導研究により、自身の肉体は完全に闇と同化。
もはや不定形となり、朽ち果てた身体を人間の形に留めているだけに過ぎない人形と化した肉体。
それでも、彼はこれこそが究極の魔導士のあり方だと信じてやまない。

彼にとって闇こそが喜び。
恐怖こそが道徳。
絶望こそが愛であり。
思考回路は完全にサイコパスのそれである。

曰く、「私は絶望を超越し、深淵を制した者。見通せぬ未来とは私のことであり、世界の真理は深淵にある」とのこと。

彼が大魔導決選に臨む理由は、光に隠された本当の真理『闇の深淵』を国家連合全土に広めること。
闇の魔導研究によって、その『闇の深淵』に至った彼は大魔導決選によって、その素晴らしさ、正しさを国家連合中に知らしめようと考えたのである。
そこでエイビスはアブグルントの国民を洗脳し、闇を正しいものであると認知させる国家を作り上げ、そこの代表として大魔導決選に挑もうとしていた。

その身体の性質上、物理的攻撃の一切に動じることはなく、魔法に対しても極めて高い耐性を持つ。
しかし、その彼の唯一の弱点とも言えるのが、光である。
それも、炎などの灯や、雷電などの閃光の類ではなく、純粋な光の魔法。

身体が闇と同化している彼も、そのことは熟知しており、いかなる手段をもってしても(主に後述の魔法によって)阻止しようとしてくるだろう。


また、闇に落ちる前に魔導国家連合25ヶ国を旅しており、その国の特色、姿勢、特別な魔術などに触れているため、相手の術式などで大まかにどこの国の出身かは理解できる。
逆に第一種追放魔導士としての知名度から、勤勉な魔導士であれば相手がアランドルであることを(肉体は崩壊しているが)理解することができるかもしれない。

 

【能力】
攻撃のほとんどは闇を用いた魔法であるが、四大元素を用いた魔法も当然扱うことができる。
しかし、彼にとっては闇こそが全ての為、大半は闇の力で処理することになるだろう。

特殊な装備、技は以下の通り

『深淵を制せし魔装』
エイビスが闇の研究の末に誕生させたローブ。
ローブでありながら生きているかのように脈動しており、装備した人物の意志に応じてその形状を変化させる。手の部分を剣に変化、下半身を液状に変化、はたまた下半身と上半身を一時的に分離させるなど…
肉体が不定形となったエイビスにとっては相性はすこぶる良い。


『闇の回廊』(ゲート・トゥ・ダークネス)
自身のみが通ることのできる闇の扉を開き、深淵を経由して他の場所に繋げる技。
瞬時に発動可能であり、緊急回避手段として、あるいは不意打ちの手口としてなど、用途は多種多様。


『光届かぬ、深淵の底』(ホープレス・デザイア)
エイビスにとっての生命線。
自身の周囲のものの【光】という概念を完全に消滅させる。
範囲を限定することも可能で、相手の周囲に範囲を限定してしまえば、相手は一切の光魔法、光を扱う魔法、周囲に明かりをもたらす魔法を完全に使用できなくなる。
深淵に至った結果身に着けた恒常魔法であり、解除することは不可能に近く、発動したまま別の魔法を使うことも造作もない。


『第一種禁忌知識』(ビェーズドゥナ・レプリカ)
相手に対して自身の持つ闇の知識を一方的に送り込む魔法。
深淵に至るまでに行った様々な非道な実験、研究の数々、闇の奥底で出会った多種多様な異形など、ありとあらゆる知識を一瞬で送り込むため、常人の場合瞬時に正気を失う。
これに耐えられるかどうかは、相手側の忍耐力にかかってくるだろう。


『深淵の暴虐』(アビス・オブ・プレッシャー)
戦いのさなか、自身の一部である闇を瘴気としてあたりに充満させたのち、局地的に一気に圧縮して相手を押しつぶす魔法。
不意打ちとして非常に重宝し、また、一度瘴気をばら撒けばどこでも発動可能なため、相手の行動制限にもつながる。


『全てを飲み込む深淵』(ワールド・オブ・ジ・アビス)
自身の肉体ごと会場全体を覆いつくす闇へと変化させ、周囲を見通すことのできない闇へと変化させる大魔法。
発動中は範囲内全てが『光届かぬ、深淵の底』の範囲となるため光魔法を扱うことは不可能。
自身は不定形の肉体をいかして、闇の中から次々と襲いかかるうえ、内部から外部への脱出は完全に阻害される為、中に残された者たちは絶望に打ちひしがれることになるだろう。

 

 

【弱点】
以上のことから、光を扱えない限り勝つことはなかなか難しい相手となっている。
だが『光届かぬ、深淵の底』を用いても、決して消すことのできない【光】が誰しもに存在している。

それは【心の光】、即ち【希望の光】である。

エイビスの特殊魔法の殆どが敵の妨害、戦意の剥奪、絶望に落とすことに特化しているのは、この事実を明確に理解しているからであり、希望の消滅こそが絶望の権化、深淵の主たる彼の目標かつ、真の勝利なのである。
ゆえに、決して諦めることなく微かな希望も捨てずに戦うことが『光届かぬ、深淵の底』を打ち破る方法となっている。

【 所属国家設定 】:
【概要】
「アブグルント」
魔導国家連合の25ヶ国においても、特別小さい小国の一つ。
また、山間に囲まれた辺境に位置するため、普通の人間は訪れるだけでも多大な労力を要するだろう。

特別な名産品もあるわけでもなく、有名な魔導士が輩出されたわけでもない。
はっきり言ってしまえば訪れるだけ無駄な国であり、住んでいる魔導士も老後ゆったりと過ごしたい、セカンドライフ魔導士ばかりで、若者はほとんど自立できるだけの能力を手に入れれば、都会の国家へ移住してしまっている。

魔導に関しても、ほかの国家に比べれば二流以下の質。
アランドルを天才と騒いだのも、その程度の質では物足りないほどの才覚を秘めていたからであって、実際他の国家と比べてしまえば非凡ではあっても天才というレベルではなかったのも、そのため。

さらにアランドル追放の一件を受けてからは、国家の状況は益々悪化。
移住者はついにいなくなり、国家の高齢化は進むばかり。
定期的に隣接する国家へ送る使節も、年々扱いが悪くなっていく一方。

そして国家の存続すら危ぶまれる状況になったとき、彼…アランドルこと、エイビスが帰ってきた。


エイビスの声は不安や絶望を抱えていた国民を動かし、執政に疲れた宮廷魔導士に天啓を与え、それぞれの心の闇を次第に侵食していき、結果、アブグルントは闇の瘴気が溢れかえり、暗い感情の渦が形成されるほどの腐敗国家となり果てたのだ。

もはやまともな思考回路の住民は、この国にはいないだろう。
暗き感情に支配され、闇の深淵に真理を求める彼らは、この魔導国家連合を正しき方向に導く新たなる大魔導士を求めていた。いや、正しき方向に導く大魔導士など、彼以外には存在しないのだろう。

自分が生まれ育った国家を、自分の手で絶望に追い込み、自分がさも救世主かのように導き、新たなる議長として、大魔導士として君臨せんとするエイビス。
皮肉にも先代代表魔導士が悲願とした願いは、方向性を変えて成就せんとしていたのだった。

 


補足

 

 

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最終更新:2017年04月18日 22:46
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