製作者 | 山田屋 |
出場大会 | 第十二回大会 |
経歴 |
設定
カーシィ・マギア・ヴォクオリン
愛称は『カシ翁』。
ミドルネームのマギアは若くして議長になった折に、ちょっと格好つけて付けたら公式の書類に記載され取るに取れなくなった。
大会参加時はファーストネームの東方表記をアナグラムし『クリヴォーン』と名乗っている。
【エピソード】
老人は今宵も己の研究室に籠り、様々な論文・書籍・報告書・走り書きのメモなどを並べ、ただひたすらに情報を蓄積していた。
頭脳という倉庫に次々と運ばれてくる情報という資材を、様々な形に積み上げ、組み直し、望む形へ到達するためにそれを繰り返す。
「うーん、あかんのう……やはりその辺は人類としての禁忌なのかね」
軽い口調で重たい事を呟きながら、齢にして124歳という老人は、身体の一部かのように身を預けていた椅子からどっこいしょと立ち上がる。
「不老不死、若返り、転生……やっぱここいらに辿り着くのは一筋縄じゃいかんのう。やっぱし『外』の錬金術師達のように、化学にも目を向けんといかんかのう」
見た目こそ枯れ枝のような老人であったが、鈍い若者よりはまだ動ける。
日々の運動と食生活、そして幾許かの健康維持の魔法のお陰で、あと80年は余裕がある。
それまでには、彼は手に入れたかった。
『永遠』を。
もっともそれは、権力や栄華のためではない。
単に魔導の道がまだ半ばどころか、高い山の頂を目指す一歩か二歩程度だという自覚があっての事。
興味、好奇心、探求欲――それだけに衝き動かされ、いつの間にか魔導国家連合議長に座にまで収まっていた彼は、ただただそれを続けられる平和な研究室を維持するためだけに魔導国家連合を平穏に治めてきた。
「さて、小腹が空いたのう。確か買い置きのパンと、晩飯のシチューの余りが台所に」
そう言って厨房に向かおうとした彼の眼前に、魔法のものであろう閃光が炸裂した。
彼の記憶はそこで途切れる。
―――
《ぶはあ!? 死ぬかと思ったわ!》
魔導国家連合議長の壮大な葬儀が行われた式典会場。
その大ホールの中央、無数の献花に囲まれた祭壇から、にょろんと一つの『魂』が浮かび上がる。
《……って、死んどる!? わし死んどる!? 残念、わしの冒険はここで終ってしまった!?》
真理の探求という目的が為せぬまま死ぬわけにはいかない。
そんな想いから、人間としての寿命を打破するための研究を重ねてきた結果、どうやら魂が天に召されるか地獄に堕ちるかという事態だけは防いでくれたようだ。
《え、人間って脳で思考や記憶してるんとちゃうの? わしこんな状態で自我と記憶あるって何? ああそれより今はこの状況なんとかせんと! とりあえず肉体に魂を戻す……って火葬かー!》
遺影の前に置かれていたのは、大きな棺桶ではなく程々の大きさの骨壺。
そういえば数十年前に、伝染病予防その他諸々の事情から火葬を推奨していたのを忘れていた。
《ああもうしゃーない! 他人様に取り憑くわけにもいかんし、一旦これ! 後の事は後で考えよ!》
カタカタと骨壺の蓋が揺れ、中からずるりと焼けた頭蓋が這い出してくる。
そこへ張り付いた魂が魔力を巡らせ、遺骨の一部を引きずり出し、祭壇の一部を覆う布を引き剥がして纏うと、静かに会場の片隅の闇へと消えていった。
後任の議長を決めなければいけないゴタゴタの最中、前議長の遺骨の一部が紛失した事は誰にも伝わらなかった。
まあそもそも、一度遺骨を納めた骨壺の中など、誰も確認したがる事は無かったからなのだが。
【プロフィール】
つい先日亡くなった魔導国家連合議会議長その人。
議長として精力的に職務を全うする傍ら、老いによる自らの寿命に抗うために60歳頃から健康維持の魔法、90歳頃から若返りの魔法、100歳を超えた辺りで転生の魔法を研究し始める。
しかし健康維持の魔法以外はこれといった成果を挙げられず、更には健康維持の魔法が不健康な魔術師の間で大ヒット、各種インタビュー対応やハウトゥ本の執筆に追われ気付けば年齢は120歳を超えていた。
事件か事故か、唐突に押し迫った死を目の前にして、それまでの研究で行った様々な実験の影響が不可思議に絡み合い、現世に残留した魂を自らの遺骨に『付与(エンチャント)』する事で復活を果たす。
九死に一生というか十死したまま現世に留まる事となった彼は、《なんで死んだのかちゃんと確認しとかんと死んでも死に切れん》と、己の死因の確認のために大魔導決選に探りを入れるのであった。
生前の姿はいかにも老人といった細い身体と禿頭、白い髭と眉毛が印象的な典型的な魔法使いスタイル。
現在は火葬され焼け焦げた頭蓋から魂の光が漏れ出す、黒衣の死神といった風体。
骨壺を空っぽにするわけにはいかなかったので頭蓋と手のみ拝借しており、胴体は魔力で満たされているだけのローブが浮いている形となる。
【性格】
基本的にはお人好しで、頼まれた事は大体断らない。
面倒な政治的判断も、多数派の落としどころと少数派のケアのバランスを整え、とにかく『揉め事が起こらない』よう徹してきた。
お陰で政治関係者どころか知人友人、知り合いの子供に至るまで、割とスナック感覚で要件を押し付けられる。
好奇心は旺盛だが、その好奇心を満たすための下準備は徹底して怠らない、石橋は叩かず調べて設計図を起こして建て直すタイプ。
人生の最重要事項は『魔術理論の真理と原理の探求』で、『魔法がどのようにして起こるのか』と『魔法はどんな事までできるのか』を突き止めるまで死ねないと豪語していた。
死んだけど。
【能力】
●健康管理魔法
最も得意な魔法。
人体の不具合を調整し、疲労・肩こり・筋肉痛・関節痛・不眠・睡眠不足・各種疾患・便秘・下痢・コミュ障など諸症状を改善する他、怪我の治療なども時間は掛かるが可能。
少量の魔力で大きな効果を得られるもので、著書である『5分でできる!あなたも魔力で健康生活!』を読めば魔法の素養がある人間なら誰でも実践可能。
現在は直すべき部位が存在しないため自分には使えない。
●健康管理魔法(裏)
人体の不具合を調整する魔法を大きく歪めて使用する事で、本来改善するはずの諸症状を発症させる恐ろしい秘術。
およそ『不健康』と称される症状は何でも引き起こせる。
外部から人体に干渉するためには相手の身体に直接触れる必要があり、肩こりを起こすには肩、眼精疲労を起こすなら眉間など、症状に近い部位が魔力を打ち込む場所となる。
やろうと思えば心筋梗塞、脳溢血、尿道結石、コミュ障などを発生させたりもできる悪魔のような魔法だが、そういった致命的な症状を好んで起こす事はない。
試合で使う場合は、相手に応じて疲労(胴体)、筋肉痛(四肢の各部位)、すごい肩こり(背中)などを相手に与える。
現在は骨ボディのため、ファンネルのように指の骨だけを飛ばして魔力を打ち込む事が可能。
●純化魔力放出
見た目は半径1mほどの球体エネルギー。
属性に関わらず周囲の魔力エネルギーの一切を巻き込んで巨大化。増幅し炸裂する。
基本威力は家一軒を吹き飛ばす程度だが、発射後に相手の攻撃魔法などを巻き込んで吸収でき、威力や属性が丸ごと上乗せされる。
なお、巻き込めるのは『魔力エネルギーそのもの及び魔力によって転化・変質し発生したもの』に限る。
肉体強化や魔力付与、物質操作など別の何かに干渉している魔力は、そちらに強く結びついているため巻き込まれない。
例:魔力で生み出した炎は巻き込めるが、既に存在している化学現象としての炎を魔力で操作している場合は巻き込めない
現在は魔力で自己を支えているため、撃つと身体そのものが小さくなり、全力で3回ほど撃つと二頭身の謎マスコット状態になってしまい、5回も撃てば魔力が枯れて何もできなくなる。
(試合後の休憩時間などにチャージすれば元に戻る)
●魂の身体
魂そのものを消滅せしめる攻撃でない限り、一切のダメージを受けない。
が、依代の遺骨は壊れるので、そちらを完全に粉微塵に消滅させられると、魔力を留めておく起点が不安定になるため、新しい依代に憑依するまで活動できなくなる。
【弱点】
魔力が枯れると魂だけになり、チャージが完了するまで周囲に干渉できなくなる。
聖句の類を聞くと成仏しそうになる。
人が死ぬような事態は避けたいのであんまり無茶な攻撃はしない。
自分の死に事件性が無いと判断した場合、隠居して研究三昧するために試合への参加は放棄する。
万が一、大会に彼の死を引き起こした者の関係者がいた場合、とっちめて司法機関に突き出すつもりだが、返り討ちに遭ってとどめを刺されるかもしれない。
【 所属国家設定 】:
【所属国家】
フナーム師公国(―・しこうこく)
魔導国家連合の現在の筆頭国。
国の中央に陣取る研究塔と、それを取り囲む学院や資料館で構成され、その外周に居住区と商業区が広がっている。
実際は超巨大な研究機関であって国ではないのだが、国家政治の干渉を避けるために、体面として国家を名乗っている。
研究塔の『所長』、学院の『学園長』、居住区の『市長』、商業区の『組合長』の四人とその補佐による合議制運営。
魔法研究の最大先進国で、既存のものの改良や効率化といった実用面よりも新しい発見を望む方針。
求められるのは常に『新鮮さ』で、新機軸の魔法の基礎となるものはほとんどがこの国が発祥である。
また、既に掘り尽され誰も手をつけなくなった分野を改めて再研究する『逆に新鮮』な派閥も、魔法理論の発展に貢献している。
国益のほとんどは今まで組み立ててきた膨大な基礎理論の特許料で賄われており、産業・物流は外部からの輸入に頼り切りで、独りでは生きていけないという一面もある。
補足