ラーサル・サーラ

 

 

 

製作者 こめつが 
出場大会 第十二回大会 
経歴  

 

 

 

 

設定

小話。
それは議長の悲報が届いた翌日の事だった。
銀色に光る三つ編みを揺らしながら、ビラを片手に少女は一目散に走っていた。
賑やかな大通りから外れ、細い路地裏へ駆け込む。ボロボロで人が住むかも分からぬ目的の建物に到着すると、遠慮せずに勢いよく扉を開いた。
「ししょー!これ見てくださーい!議長様が亡くなったってー!」
目の前にいるにもかかわらず大きな声でそう声をかけると、横になっていた大男は体を起こし、左手を額に当てながら少女に向き直った。
右の額から生える一本の角が目立つ、ほんのりと赤い男の顔はいつもより不機嫌そうな表情を浮かべる。
「あーあー、大きい声を出すな。二日酔いなんだ、頭に響くだろーが」
「もー!ししょーいつもお酒飲んでいるじゃないですか!二日酔いとか関係なく四六時中酔いじゃないですか!」
「なんだそれ、全然うまくねーよ」
あぁ違う、いつものこんな不毛なやり取りをしにここへ来たのではなかった…少女は思い返し、ここへ来た理由を思い起こしながら話を軌道修正させる。
「そ!れ!よ!り!も!ししょー、議長様がお亡くなりになったって!」
そう告げられると男は「なんだ、そのことか」と声を漏らした。
「知ってるよ、一応俺のところにも話は来るんだから。さーて次はダレガナルンダロウナー」
「きょーみなさそうに話さないでください。そ・れ・に、次の議長はししょーで決まり!ですよね!?」
自信満々に嬉々として話す。そう、本題はこれなのだ。
「…は?」
しかし返ってきた答えは少女が僅かでも期待していたものと違った。
「だから、次の議長はししょーがいいと!思います!…あれ?ならないんですか?」
「あー、そういうのはパス」
「え!?どうしてですか!?」
「え!?じゃねーよ。逆になんで俺がなると思ったんだよ」
少女はうーんと唸ってしばらく考え込んでから、ゆっくりと言葉を続けた。
「ししょーは酒ばっか飲んでて、スケベで、甲斐性なしで、ちゃらんぽらんで、最近は加齢臭が気になるようになりましたが…」
「俺散々だな」
「でも!いつも見せてくれる魔術は皆を笑顔にしてくれる…一流の魔導師であることは確かです!それにこの国の今の基礎を作ったのもししょーだと聞きました!きっとししょーなら、議長様の様にいい方向へ導いてくれるはずです!」
まっすぐな目で男を見つめる。紛れもなく、少女の偽りない本心だ。
男は困った様に頭を掻く。羨望と期待が込められたその視線に、男は耐えられずに反らした。
「…お前は俺を過信し過ぎだ」
やはり、告げられるのは求めていたものと違う答え。
「そもそも柄じゃねーんだ。芸の手習いをしたのも、この国にちーとばっかし活力がなかったからだ。俺は呑んで、遊んで、寝て暮らす。そういう理想の暮らしができる居場所が欲しかった。だから手を貸したにすぎねぇ」
続くように男は「それにあの人の空いた席に着くのも…」と小声でつぶやいた気がした。少女は首を傾げ追及しようとしたが、「兎に角」と遮られる。
「俺は議長になる気はない。政治?無理無理。考えるのちょーめんどくさい。働きたくなーい」
軽々しく言い放つと、追い払うような手の仕草をし、男はまた横になった。
「この話はこれきりだ」そんな言動に少女は頬を膨らませ「むー」と唸る。
しかし、それは想定済みだ。
悪い笑みを浮かべ、少女は1つ咳払いをする。そして得意げに話し始めた。
「ふふーん。ししょーの考えはよーくわかりました。で、も。私にも考えはあるんです」
「は?」
「お忘れですか?議長は指名制であると。大魔導師様のお言葉はぜーったいであると」
「まさかお前…」
「そのまさかです!大魔導決戦に私が出ます!そして優勝してししょーを議長に指名するんです!」
右手を当てながら大きく胸を張る。その堂々とした態度に男は始めこそあっけらかんとしていたが、数秒も経たないうちにゲラゲラと笑い出した。
「お前が!大魔導決選で優勝する!?はははは!こりゃ腹がいてーわ!」
「なんで笑うんですか!私は至極まじめですよ!」
「お前みたいな未熟なガキが、優勝するだなんて!そりゃどんなおとぎ噺だ?どこでそんな演目覚えてきた!?」
「退屈埋めの話ではありませんし、オチのある話でもありません!リアルです!それに私ももう13歳ですよ!大人です!勝てますぅ!」
一度決意を固めると中々譲らない所、一体誰に似たのだろうか…そのようなことを考えながら目の前の頑固な少女をどうしようかと男は悩ませた。経験上、少女は絶対に引き下がらない。
それに師匠…になった覚えはないが、幼少から見ている故少女の成長はやはりどこか喜ばしいものがあった。
で、あれば。少女を腕試しに出してやるのもまた務めであるだろう。
そう帰結すると、男は先ほどの少女よりもさらに悪い笑みを浮かべながら返答した。
「そうかそうか。そこまで言うのなら、まぁ、なんだ。頑張ってこい」
「えっ?」
「聞こえなかったか?大魔導決選に出場してこいよ」
「いいんですか!?」
「そもそも出る出ないを俺が決めるわけじゃねーしな。それはお前の自由意志だ。俺がとやかく言う問題ではないだろ?」
聞き終えると、少女は「やったー!」と嬉しそうに飛び跳ねる。
「二日酔いだと言っただろうが、頭に響くだろ」「あーりーがーとーうーごーざーいーまーすー!」「肩を掴んで揺らすのもやめろ」そういいながら男は部屋の隅にある机へ手を伸ばした。
「とりあえず国のお偉いさんに話は通しておくぞ。名目上誰か出なきゃならないが俺は蹴ったし、他に物好きがいなければ十中八九お前がラフドットの代表だろうな」
”敗北を味わうのも成長だ。ま、どうせ優勝はしないだろう。”
少女とは正反対の期待を抱きながら、男は進言書を書く為に筆をとった。


キャラクター
名前:ラーサル・サーラ
性別:女 年齢:13歳
身長:152cm 体重:42kg

笑業国家:ラフドットに住む少女。「ししょー」と呼び慕う男のもとで、(やや使い走りの如く扱われるが)日々魔法と芸を学んでいる。召喚士としての適性が高く、名前との相性もあって後述する「回文魔法」を主に使役する。夢は「噺のできる、かっこよくてつよい魔導士」。上手いこと言おうとする節があり、スベると周りの身体の末端をやや冷えさせる(逆にうまいことを言われると髪の毛が少しだけパーマ掛かり、四角い綿の入った布を渡したくなる癖がある)。よく走って転ぶので常に髪の毛にいろんなものが絡まっている。

サーラは赤ん坊の頃に捨てられ、また本人も自身が捨てられ子であることを知っているのだが、それを気にする素振りはない。むしろ今の育ての親に出会えたこと、ラフドットでの芸を覚えながらの生活、師匠から様々な魔法を学べることを非常に嬉しく思っている様だ。決して豊かではないが人間関係に恵まれた環境で育ったために、等身大の少女へと成長。年相応に生意気さを持つが、素直で実直、感情が顔や動きに出やすい。反面猪突猛進的なところがあり、自分が正しいと思ったことは決して曲げない芯の強さを持つ。

今回サーラが大魔導決選に出るのは、師匠を魔導国家連合議長に指名するため。師匠の事は普段「だらしのない大人」と思っているが、国の皆から信頼を得ていることをよく理解しており、いざという時には頼りにしている。また師匠の魔術が昔偶々見た前議長の魔術になんとなく似ている(サーラから見れば、それはどちらも皆を守るための魔法と感じたが…?)と直感した為に、サーラは彼が議長になることを強く願っている。しかし、もし彼女が師匠以上に議長になるのに適切だと思う相手がいれば、彼女はその人に譲るだろう。

使役魔法
回文魔法:農夫のアレポ氏は馬鋤きを曳いて仕事をする(ルビ:パリンドローム)
師匠がどこかの国から持ち帰って来た巻物に記されていた言葉遊び:回文を詠唱することよって、様々な事象を引き起こす魔法。
巻物に記された言葉は異国のものだが、サーラは一通り暗記しており、また独学で内容を理解している。
巻物に記載のある回文以外にも、自ら考えた回文を呪文として詠唱することも可能だが、・異国の言葉(現代日本語に近い言語)で意味の通るものであり・この時代の技術で生み出しうるものでないと召喚できない。
例)
・竹藪焼けた
青い節くれだった植物の林が地面から生え、赤い炎を纏いながら炎上する。
「この土地じゃ珍しい植物ですよ!逃げないと燃えちゃいますよ!あつっ!熱い!」

・腐っても鉄柵
鉄製の柵を召喚。やや腐敗しているためかボロボロである。
「ふふふー!囲っちゃいましたよ、逃げ場はないですよ?あ!殴らないでください!壊れちゃいます!」

・たい焼き焼いた
生地は小麦粉、具には豆を煮たものが入った魚型の焼き物がいい感じの温度で出てくる。
「何でしょうこれ…中に黒い…あっでも甘い…美味しいですよこれ!どうですか!?食べませんか!」


戦闘経験は少ないが、手数の多さで相手を翻弄する。

【 所属国家設定 】:
笑業国家:ラフドット

概要
自らを”笑”業国家と名乗る小国。その名に恥じず、5つの系統ごとに分かれた商業区には劇場、舞台、まれに賭博場等が軒を連ね、付随して飲食店も並び歓楽街となっている。国民の大半は(活動場所が国内外に関係なく)娯楽に携わる職に就いている。

土地
連合国内に存在する一際大きな山の谷に、ラフドットは国を成している。谷の底は奥深く、日の光は殆ど届かない。そのためラフドット内は常に夜の様であり、ランプや提灯が星の光の如く点在し、国家内を照らしている。
国外の観光客を取り入れるために最近ではドラゴンによる運搬所が設置され、以前よりも格段に交通が便利になった。

住人
やや閉鎖的な土地柄だが、その住人たちは気前が良く、あっけらかんとしている者が多い。困ったことがあれば互いに助け合う精神を持ち、それは時たま「おせっかい」の域にまで達する程である。
しかし年齢が高くなるほど、ラフドットの出であることはあまり話したがらない傾向にある。
また角が生えたり鱗が体表にあったりと、一目で異形とわかる者が他国に比べて多い。

歴史
ラフドットとしての国の歴史は50年程度と連合の中でも歴史は浅い。しかしラフドットの歴史を語るにはそれ以前に目を向ける必要がある。
ラフドットが国家としてなる前…その土地にあったのはただの”機構”であった。
300年以上前の戦争が絶え間ない時代、それはあるいは信仰の違い・あるいは戦争で負傷や飢餓で行き場を失った・あるいは普通とは違う異形を持った人間…そういった行き場がなかったり迫害された人々を集める場所が、世界のどこかに必要だった。
しかしそれは”救い”ではなく、”破棄”という形で実現してしまう。
誰が声をあげたのかは定かではない。しかし光も届かぬ深い谷の底に他国民たちは形として居場所を作った。行き場のない人々はそこへ押し込められたが、戦争で物資が少なく、また立地的にも運搬が難しい土地柄で、富を得たいあるいは異形の人間や信仰違いの者を心の底から嫌悪する卑しい者たちの手によって、数少ない物資はこの居場所に届かなくなってしまった。
そして戦争が終わった頃、この土地にあったのは多くの骸と幸運にも生き残っていた者たちだった。
連合結成当初、この土地にいた者たちをどうするか議論がなされたという。
だが根強い差別は終わらなかった。物資の遮断を行った者たちは当時議会に多数おり、その責任を逃れたい・”死にかけ”の者たちを受け入れたくないが為、その土地に仮初として”国”を新たに与えた。
表面上は自治を与えられた国であるが、現状は排他する人々を閉じ込める場所。
それがラフドットがなる以前の”機構”であった。
契機はそれから約250年後。
議会の人々が幾度か代替わりをし、国が作られた目論見が忘れられ始めた頃、この国で声をあげた一人の男がいた。
右の額から角を一本生やした男。
曰く、旅人。曰く、この国には活気がない。
「なんでこの国には笑うやつがいないんだ。笑えない?なら、自分から笑える奴になれ」
男は言葉巧みに国民の心を掴み、芸を覚えさせ、娯楽施設を築きこの商業国家の原型を作った。
男の作った国の枠組みは見事功を奏し、他国からも知られるようになる。
そして国内外に”笑”業国家として認知され始めた頃、正式に「ラフドット」として新たに国家申請をした。
「どっ」と笑う(=laugh)国。そんな意味が込められているという。

その他
250年前までは”人を捨てる場所”という認識が根強く、他国の人々によって不要な人はここへ置いて行かれることが多々あった為、国の人々は差別的にみられていた。
その歴史故、歴史を知らない他国の若い者たちはラフドットを娯楽施設が揃う国と認知しているが、高齢の者はラフドットを未だに差別的に見ていることが多い。

 


補足

 

 

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最終更新:2017年04月18日 23:01