錬金杜氏(れんきんとじ)ミード・ヴィテ

 

 

 

製作者 chuchuhakokaina & 小松かなめ 
出場大会 第十二回大会 
経歴  

 

 

 

 

設定


「よそゆき 騎士団 やってきた♪黒風吹く国 やってきた♪
薔薇のワルツは さようなら♪黒風吹かれて さようなら♪
ゴロツキ お仕事抜け出した♪楽しい酒飲み カンパイだ♪
樽のワインで よっぱらい♪楽しく酒飲み 丸洗い♪」

……このフレーズから始まる、『ペスト王の酔いどれ騎士団』という伝説は、誰でも聞いたことがあるだろう。兵士が焚火を囲んでする与太話や笑い歌の定番だ。

大航海時代、国家だけでなく聖なる騎士団もまた、信仰を齎し他の文化を持つ国家に拡大している。そんな中、ある高名な騎士団がペストが流行する国に通りがかってしまい、団員は誰も生き残らなかった。しかし同行していた無頼の傭兵団は駐屯地を抜け出して現地の民と共に飲み明かしていたにも関わらず、皆健康で、しかも次の日から火が消えるようにペストが収束したという。その国の王は感謝の意を込めて、酔っ払いの無頼にすぎない彼らをお抱えの騎士団にしたという話だ。

与太話は、与太話。高潔な騎士などではない傭兵やただの民衆には、いざという時は信仰よりも酒が救いである、という寓話にすぎない。しかし、傭兵団の持っていた酒にネタ元はある。『救国の魔法の酒』、そしてそれらを造る、醸造によって魔法を醸す錬金杜氏は本当に存在するのだ。伝説と共に世間に知れ渡り、誰からも語られるほどに、かつて「ペスト王の国」と謗られた国、『オスぺウス』が胸を張って誇る酒造りの魔導士の一族である。

彼らは血統による世襲ではなく徒弟の中から次代の頭領を選ぶが、頭領は代々『ヴィテ』の姓を名乗る。これはこの国で「生命」を意味する言葉であり、彼らは自分たちの酒を、人々の「生命」を支えるものとして誇り高く造っている。『ミード』は「原初の酒」を意味する名で、7代目にあたる彼は若くしてその名のとおり当代の一族筆頭、銘酒造りの名手だ。

魔法酒づくりは門外不出の秘伝の技だ。しかし、その理論に優秀な他国の錬金術師や魔導士がある程度アプローチすることに成功しており、そうした彼らの研究に『ヴィテ』の一族が自ら物言いをするようなことはない。ある論文によれば、素材が酒として醸造される際の変化を司るエネルギー体、精霊とも呼べる存在があるらしい。初出の文献で『酒精』と名付けられたその存在と醸造家が、意識的に、あるいは無意識的にうまく関わることにより、酒は醸造の過程で魔力を帯びることがあるという。『ヴィテ』の一族が誇る魔法酒を造る技術はいわば、『酒精』と好い関係を造り、長く愛し合うための工夫ということになる。

ミードは色々な人や出来事と関わるのが好きで、心根が優しく、味覚と魔法の感度に優れていることを除けば、強力な魔法や武術を使うこともなく別段特殊な人間ではない。だが、そうした何かを愛するための感受性に富んだ敏感な子供を、ことのほか『酒精』は愛するのだ。そうして、幼少のころから周囲の人間に魔法酒造りの極意と職人のプライドを教え込まれ、蔵で大人の杜氏に混じって酒浸りの生活を送ってきた。おさないころ子供の身体に酒は堪えたが、今ではすっかり身体になじみ、むしろ酒が途切れると逆に息切れや動悸、手の震えが身体を襲い落ち着かないほどだ。彼ら一族にはこの身体の変化を以て初めて一人前になったと喜ぶ風習がある。

愛し愛されて育ったこともあり、おおらかで細かいことを気にしない性質で、素朴で善良である。人の言うことも善意に捉えることが多い。だが、自分の仕事には誰よりも誇りを持っていて職人気質だ。そして、流行病で一度は滅亡の手前までいったものの、一族の酒で息を吹き返した故郷のこの国を、心から愛している。国や酒のことをけなされれば激怒し、相手が言ったことを撤回しこちらの主張を理解するまで自慢の酒を飲ませ続けるだろう。最悪酒瓶で殴れば分かってくれるよな。

【能力】

彼に特別な能力はない。ただ自身が作った、一族の誇りである酒が常に彼と共にある。傷や病を治す酒は彼らの十八般だが、今回は大魔導決戦とのことで、一族の逸品の宣伝を兼ねて一風変わった効果の魔法を醸した酒を持ってきた。

・『宵あかし』…夜通し飲めるほどに体に優しい穀物酒。美味しくて栄養価が高い。それだけ。彼の一族の誇る人気商品。

・『人こまし』…頭をとろかすような甘い香りと深い味わいの果実酒。飲んでいる人の体臭すら甘く変じさせるほどの甘い酒だ。しかし飲まずに香りだけ嗅いだ人間は、その香りに魅了される。その酒を味わいたいと願い、その酒と同じ香りをさせる人間がいればその人のいうことを聞かずにはいられない。望み通りその酒を飲んだり、他の酒の香りが濃く混ざったりすると魅了の効果はなくなる。

・『鬼ころし』…切れ味と苦み、弾けるようなのど越しが特徴の蒸留酒。集中力があがり、五感が冴えわたる。自らの身体を自分の思った通りに操れるようになり、酔っ払いの想像力で再現されたそれは人間の身体のなしうる限界を容易に超える。獣や鬼、化け物を狩る英雄にでもなった気分だ。飲みすぎると悪酔いして気持ち悪くなる。

・『神おろし』…一族が祭事の為に拵える、神々に捧げられるための酒。とんでもないアルコール度数と強烈な味わいで一口飲むとトランス状態に陥る。魂の制御を失った肉体と供物の酒につられて、飲んだ人間に「何か」が憑依する。神か悪魔かそれ以外か、それは人間が予想できるものではない。

【 所属国家設定 】:
【出身国家設定】

200年ほど前に流行病で滅亡寸前までいき、他国から「ペスト王の国」と敬遠されたことのある、『オスぺウス』という名の国。「平穏の竪琴」を意味するこの国の名は、病によって汚され、「生命」を意味する『ヴィテ』の一族の尽力により清められた。ゆえに、ミード・ヴィテや彼の一族について知ることが、そのままこの国が現在の魔導国家連合や世界において、何に重きを置いているかを深く知ることには必要だろう。

『ヴィテ』たちの酒の普及により病は収束して現在は農業、工業、商業もある程度息を吹き返し、足りない部分を補うために魔法は生活に密着した部分で大いに活用されている。また、医学・本草術の技術や知識の集積において『オスぺウス』は魔導国家連合の中でもトップクラスを誇っている。

 


補足

 

 

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2017年04月18日 23:18