クリスマス、それはすべての人が幸せを享受する、素敵な日である……。
イルミネーションが街を染めるころ、ここは某県限界坂。
その一角、ギリギリ遊園地も、色鮮やかなライトに照らされていた。
そう、今日はクリスマスイブ……ギリギリ遊園地も例外なく、このビッグイベントに興じていた。
秀一「しかし、客層がカップルではなく、子供たちのみというのは、今時珍しいな……」
じいちゃん「なぁに、うちはファミリー重視……家族みんなで楽しむ遊園地というのは、昔からわしの方針でな」
秀一「……まあ、それもいいものだな」
管理室で緑茶に口を付けるのは、この遊園地の管理人であるじいちゃんと、涼茂財閥総帥、涼茂秀一。
窓から覗く遊園地の風景は、昼ごろから降り出した雪で真っ白だ。
じいちゃん「この雪じゃ、観覧車も動きはせん。カップルもがっかりじゃろ」
秀一「そういうムードを完全無視する馬鹿もいるしな……」
その時、管理室のドアが叩き割れるくらいの勢いで開かれた!
突破「うおぉぉぉぉおあああああ!!! 見ろよ秀一!! 雪だぜ雪!!」
秀一「…生まれて初めて見たわけでもないだろ、早く閉めろ、寒」
突破「見ろよあんなに積もってやがるぜこれはマジ奇跡って感じじゃねえかいや嬉しいぜじいちゃん俺ガキ達と雪合戦してくらじゃあな!!」
もう一度跳ね上がるくらいにドアが閉じられ、突破は雪の中へと駆けだしていくのだった……。
OVA版特別篇 聖夜の対決!?限界ギリギリクリスマス!!】
リ・タイア軍との戦いから一年が過ぎ、平和が戻ってきたことをヤブル達は実感していた。
ムゲンカイザーが放った無限エネルギーは、最終的には危険視されることより、むしろ世界復興のために利用され、この一年でほとんどの都市が修復された。
ゲンカイザーは今、再び遊園地に戻ってきた。1ヶ月前にエネルギー源としての役目を一旦終え、再び涼茂財閥が保有する形で、ゲンカイザーは戻ってきたのだ。
メダ「……なあ、ヤブル。 クリスマスとはなんだ?」
元リ・タイア軍幹部イメダ・メダが、雪合戦に興じるヤブルに聞いた。
突破「ああ、サンタってすげえじいさんがよ、毎年俺達にプレゼントを届けてくれるんだよ」
メダ「サンタ……どんな奴だ?」
突破「でけえ、強い、そして優しい……そんな奴だ」
メダ「ふうん……」
メダは異星人……そして、リ・タイア軍の幹部という過去をもつ。当然、戦後の中彼女の立場について国が動くほどの論争が起こった。
だが彼女は結果的に、突破達と暮らすことになった。
すでに宇宙人的なパワーを失い、ダイナマイトボディだった頃の面影はなく、今はただの小学生の女の子になってしまったからだ。
涼茂秀一が裏で動いたという話もある……彼もまた父をリ・タイア軍との戦いで失った一人の被害者だった。
だが秀一は決して人前で、『余裕』を崩すことはなかった。
きっと人知れず、彼なりの苦悩があっての決断だろう……ということを、ヤブルは薄々感じ、感謝していた。
それは、メダも同じだった。
ヤブルを愛してしまったという、彼女の理由は誰にも止められはしなかった。
メダ「……あたしにも、サンタって来てくれるのか」
突破「当然じゃねえか! サンタはな、誰にでも幸せをくれる、絶対にな!」
メダ「………」
秀一「おい、ヤブル。じいさんが呼んで……」
突破「お前にもだ、絶対に、間違いなく、やって来る! 明日になってみろよ、びっくりするからよ! ――んが!?」
熱弁を振るうヤブルの顔に、メダの雪玉が直撃する。
メダ「ばか、なに熱くなってるのよ……きゃっ!?」
突破「てめぇ……不意打ちはなしだろが!!」
メダ「一人で限界突破してるヤブルが悪いのよ!」
突破「ん、んなろ……まだ限界なんてもんじゃねえ!! これからが限界突破だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
秀一「……まったく、馬鹿か」
熱くなる二人を見て、止められないだろうと思い、秀一はあったかい管理室へときびすを返すのだった。
秀一「しかし、まったく……あいつはいつまであの調子なんでしょうね」
管理室。
地下司令室から上がってきた赤井男と伝益子に、秀一は話をした。
男「あいつの場合、親父さんのこともあるからな……。一応、あのときに親父越えはしたはずだ。あいつもいつかは色々と変わっていくだろうよ」
伝「でも、私は変に変わってほしくないな……いつものヤブルくんのまま、大人になって……」
男「その後ろ姿を見続けていたいってことげぶあっ!!?」
伝「ち、違います!!」
益子の拳が、男の頭蓋骨をも砕く勢いで、頬を貫いた。
秀一「……高校生にもなって、サンタについて熱弁ふられるのも、色々と問題と思うが」
じいちゃん「あ、いや、それはのぉ……」
男「なんだ、じいさん」
じいちゃん「……あいつ、まだサンタのこと信じとると思うんじゃ」
秀一「ぶっ……!?」
まさかとは思ったが……秀一はその事実に、ただ茶を吹くことしかできなかった――。
雪原の中、何かが起動する――。
そそり立つ姿はまさに巨人で、雪原に積もった粉雪は舞い、遥か彼方へと風とともに吹き飛んでいく。
そして、巨人もまた風のように、火を吹いて飛び去っていく――。
隻眼が、街を睨んだ。
秀一「――そうか、わかった。すまないな、とんだクリスマスになるようだ……ああ、また後でな」
秀一のケータイが鳴り、穏やかな空気は切り裂かれた。
秀一「ああ、わかって……ぶっ、ば、馬鹿か、そんなことを言わせるのか……い、いや、そういうつもりじゃないんだ、わかって――じ、冗談はやめろ! き、切るぞ……」
男「……つかえさんか、ったく見てられないなぁ秀一?」
秀一「司令こそ、奥さんにあんな通信を私用で使わないようにして頂こうか、こちらの通信は全部財閥のほうで……ってそうではない!!」
男「ば、馬鹿野郎!! あれは立派な夫婦愛だ――って、どうした!?」
秀一「先ほど、ここから遠くない高原から、巨大なロボットが浮上、こちらに向かっているという連絡を受けた――!」
じいちゃん「な、なんじゃと!?」
突破「じ、じいちゃぁぁぁん!!」
その時、ドアから突破が飛び込んできた!!
じいちゃん「どうした、ヤブル!?」
突破「外になんか浮いてやがるんだ……なんだありゃ!?」
秀一「ま、まさか!?」
一同が外へ飛び出すと、遊園地は大きな影に覆われていた!
空を見ると、巨大な風船のように浮かぶ――巨大ロボット!
伝「お、大きい……!? どうやって浮いてるの!?」
メダ「あれは、『宙力兵器タリーナ』だ……!」
秀一「タリーナだと……なんだそれは!?」
メダ「空中設置型無機動砲台……通称タリーナ。 対象の星に打ち込まれ、そこからバルーン型へと変形し、空中砲台として活動するウツノイドだ。地球へ打ち込まれたとは、聞いていたが……」
じいちゃん「なんじゃと、ではこの一帯の地域は……」
メダ「いや……打ち込まれてから一年も立てば、システム維持だけで内部エネルギーは尽きたはず。恐らく、何らかのトラブルで機動が遅れたんだろう……」
秀一「つまり、危険はないってことか……」
メダ「そう、だな……」
一同がほっとする。
だが、一人だけ、逆に燃え上がる男がいた。
突破「……あ、安全だと…んなことないぜ!!」
秀一「――なんだと、どういうことだ、ヤブル!?」
突破「サンタの邪魔になるじゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!」
メダ「――あっ」
伝「え……」
じいちゃん「うっ……」
秀一「お……お前…」
一同が、シベリアの氷山の如く凍り付いた。
秀一「お前は、馬――」
突破「トナカイだって空から飛んで来やがるんだから、あんなのあったら危ねえじゃねえか!!」
メダ「そ、そうだな……うかつだった。 これは地球文化存続の危機と言える!」
秀一「め、メダ……貴様まで……!」
突破「いいか秀一、全国のガキが今日のためサンタを待ってやがる! 俺は自分でやれることをしないで、サンタを追い返すなんてこと出来ないぜ!」
男「――よく言った、やぶるぅう!! それでこそお前だ!!」
秀一「司令まで――嗚呼、まったく……どいつもこいつも……」
やぶるが駆ける、広場の“あいつら”に向かって、叫ぶ!
秀一「勝手にやれ……存分にな、やぶる!」
マシンに魂が宿り、唸りをあげる!
突破「――行くぜ、トップ・インッ!!」
三台のマシンが空に舞う!
カイザーネオトッパー!
カイザーハッサン!
カイザーリンカー!
三つのメカが雄叫びとともに、一つとなって………
突破「ゲェェェェェェェンカァァァァァイザァァァァァァァァァァァ!!!」
巨人が再びその足で大地を踏みしめた!
突破「夜まで時間がねぇんだ……一撃で決めてやる!」
腰のアーマーが展開し、雪原に稲妻が走る!
突破「プラズマァァァァァァァァェエフェクト!!」
電撃がタリーナへと直撃する、しかし……!
メダ「――だ、だめだ、やぶる!」
突破「なにっ……ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!?」
稲妻は途中で反転し、ゲンカイザーを貫いた!
じいちゃん「なんじゃと……ボルテック限界拳のプラズマエフェクトが…」
メダ「あたしのアンドロメダロスのバリアと同じ、いやそれ以上のエネルギー反射能力……!」
突破「だったら……直接叩くだけだぁぁぁぁぁぁ!!」
空中へ飛び上がり、拳を放つゲンカイザー……だが、タリーナのボディはすべてのエネルギーを吸収してしまう!
地面に叩きつけられるゲンカイザー!
メダ「あれでは、歯が立たない……!」
突破「……ならやることは一つだぜ!」
再び飛び上がるゲンカイザー!
そして、放つ拳をすべて反射し、地面へと落ちるやぶる!
突破「……ま、まだだ……まだ限界までいってないぜ…!」
メダ「や、やぶる……こいつは無理だ!タリーナは時間が経てば自然に小さくなってしまう、だから……!」
突破「うぉぉぉおおおおお!!」
それでもゲンカイザーは繰り返す!
拳が砕けようとも…ひたすらに!
じいちゃん「や、やぶる……!」
メダ「ゲンカイザーじゃ、“破れない”……」
突破「……今夜、今夜は絶対譲れないんだよ! ガキどもがサンタを待ってる、今日だけは……!」
立ち上がるゲンカイザー!
そして、再び飛び上がる!
突破「今日だけは、絶対譲れねえんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
拳が再び、タリーナの体を打ち、ゲンカイザーは弾き飛ばされ――
男「今だぁぁぁぁ!! 秀一ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃい!!」
跳ね返されたゲンカイザーに向かう、青い閃光――ヨユウダー!!
秀一「――合わせろ、やぶる!」
突破「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
跳ね返されたゲンカイザーを再び、ヨユウダーが弾き返す!
突破「これだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
――GENKAITOPPA!
突破「げぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇんかぁぁぁぁぁぁぁぁぁいけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!」
タリーナの体を、ゲンカイザーが貫いた!!
爆発――四散!!
すべてが終わった、クリスマスイブの夜。
秀一はつかえに呼び出されたため早々に去り、じいちゃんは疲れと酒からか床へついた。
男「……ムゲンカイザーを使うわけにはいかなかったからな、しかし、やぶるはよくやるよ」
世界破壊の一歩手前の力をもつムゲンカイザーは、封印状態にある。
それが涼茂財閥が預かるさいの取り決めであった。
伝「そうですね……でも、それはやぶるくんの心が、とっくに無限大を超えてるからじゃ、ないでしょうか……」
男「……そうだな」
普段は基地に残る男も、明日は休暇をもらい、帰ることになった。
男「人間の心ってのは、無限大ってことだ……限りなき可能性、だ。 じゃ、後は頼むぞ」
伝「はい、いってらっしゃいませ」
すべての雑務を終え、地上へと上がると、物音が静寂を遮った。
伝は、玄関を見た、そこには……
伝「……やぶるくん? なにしてるの?」
突破「おわっ…み、見つかったか……」
見ると、やぶるは手に小包を2つ、大事そうに持っていた。
伝「それは?」
突破「ああ、じいちゃんとメダに、クリスマスプレゼントを、よ……」
伝「あれ、やぶるくんって、サンタを……」
突破「……知ってるよ、そんなの居やしないってことくらいさ」
雪の降る中駆けてきたのか、肩に乗る雪を払い、やぶるは玄関をあがる。
突破「親父が死んで、限界を知って……じいちゃんがいつも内緒にしてくれて、俺、嬉しかった。
でも、その優しさを壊すのは、怖かった……」
伝「やぶるくん……」
突破「でもさ」
はっきりとした口調で、やぶるは言った。
突破「優しさを壊すことと、認めるってことは違うんだよな。
俺も……もうガキじゃねえ、メダのことも大事にしなくちゃいけねえし、じいちゃんやこの遊園地のことも、考えなきゃいけねえから、さ」
やぶるの顔は、うっすらと大人らしさが浮かんでいた。
それば、じいちゃんのようでもあり、父……エクシードのようでもあった。
突破「……置いてくるよ、これ」
伝「あ、待って!」
突破「あん、なんだ……って、うわ!?」
階段をあがろうとするやぶるを呼び止め、伝はその腕を抱きしめる。
伝「……私へのプレゼントがありませんよ」
突破「あ、いや、その……」
伝「今からでも買いにいきます、絶対いきます」
たじろぐやぶるを無理やり外へと連れ出す。
突破「俺、今月の小遣いが……」
伝「いいから! 行ってくれますよね!?」
突破「は、はい……」
雪はまだ降り続ける。
この雪のように、やぶるに降りかかる限界という壁は、まだ無限にあるのだ。
だが、限界を諦めない限り――やぶるの未来に破れぬものは、ない。
明日は明日でもっといい日がやって来る!
頑張れやぶる!
限界突破だ、ゲンカイザー!
最終更新:2009年11月23日 16:46