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パラレルワールドとは、似て異なる世界である。
決して交わることのない平行世界……しかし、その抜け穴は、意外と近くに存在するもの
なのだ。


尽「エキシビジョンマッチ……ですか?」

午後、仕事を終えくつろぐ尽の前に立つのは、官房長官の片原侍と秘書官の、垂木さくら。

片原「はい、連戦でお疲れでしょうが……内閣内での征界巨人への信頼度を確かめるとい
う意味では、有効ではないでしょうか」

尽「セイカイオーを、見せしめにするの?」

さくら「そうではありません、非常に悲しいことではありますが……全ての内閣の人間
が、征界巨人の戦いを直に見たわけではありません。それ故に、不安を持つものもいます
から、こうして実際に見てもらうのです」

尽の活躍とは決して言えない戦いに、内閣の動きも怪しくなっているのは、皆が感じてい
ることだった。
このままでは、志気に関わるのだ。

片原「表向きは性能点検ですが、要するに……ということですな」

尽「……わかった、用意する。対戦相手は誰なんですか?」
訪ねる尽に、困った顔をする二人。

片原「……いや、実は、こちらも不明なのです」

尽「……不明だって?」

さくら「実戦のリアリティを出すために、当日までは内緒なんです。裏の方で話は通って
いますから、問題はないかと」

尽「そうか……」

尽の胸に行き来するのは、期待と不安。
そしてなにより、不思議なほどの落ち着きであった。





都内某所。
暗く、深い倉庫街。
そこに、二人の男が立会っている。
男は何本目かの缶コーヒーを開け、月明かりにうっすらと湯気を立たせた。

???「――運命と言うのかもしれんな。俺のような人間と、君のようなあるはずのない
人間が相対するとは」

若いスーツ姿の男は、寂しげな顔を男に見せる。

???「信じられないでしょうか、こんな話を」

???「パラレルワールドか……意外とあり得る話かもしれん」

男はコーヒーをぐっと飲み干すと、手元でふらふらと空き缶で遊ぶ。
二人の目の前に立つは、黒き巨人。
その集眼は、男を見つめているようだ。

???「こんなものに乗るとは、君も大変なようだな」

???「すみません、こんなことを頼んでしまって……」

???「いや、いい。……娘は元気かね?」

???「なぜ、それを?」

???「……璃理は、俺が娘に付けるはずだった名前だ、察しはつく」

???「……ええ、今は僕と一緒に」

???「そうか、安心したよ、君なら任せられるだろう」

男の顔はふと、優しい笑みを浮かべた。


エキシビジョンマッチ当日。
市内の廃墟を舞台に、戦いが始まろうとしていた。
安全な位置に観覧席が設けられ、政府関係者だけでなくマスコミも現場へと駆けつける。
観覧席からは、すでにスタンバイ状態のセイカイオーを見つけられた。

平「エキシビジョンマッチって名前はどうなんだ、兵器の品評会じゃないんだぞ!」

寺門「落ち着け、こいつは一種の政策だ、問題はない」

平「問題はないですって!? 兵器を動かして、見せしめにしてるんだ!! ……俺は、絶
対認めないぜ…」

寺門に耳打ちする静。

静「……よかったんですか? つれてこない方がよかったんじゃ……」

寺門「………」

そのとき、会場にどよめきがおこった!

尽「……来たな、相手はなんだ!?」


遠くから歩いてくるその姿は、まるで厚手のコートを着込んだような姿のロボット。

静「なに、あれ……小さい?」

その体は、セイカイオーよりも遙かに小さい。

寺門「油断できんな……」

静「えっ……?」

寺門の顔は、妙に緊張していた……
それは尽も同じ!

尽「な、なんだこのロボットは……! 見た、垂木さん!?」

さくら「……あの荒れ地の足場を、微動だにせず低速歩行……!?」

片原「なるほど、相当な技術力を持ったパイロットですな。小さいからと、油断なさらぬ
ように」

謎のロボットが、スタート位置につく。
緊張感の走るスタジアム……。

???「――聞こえますか、セイカイオーのパイロット」

尽「……なんだ、相手からの通信?」

???「――セイカイオーのパイロット、民荷尽君だね」

尽「あなたは、一体だれだ!?」

???「――それは教えるわけにはいかない、しかし、不思議な境遇だ……今日はフェア
にやろう」

紳士的な男だと、通信からの声色は思わせた。
カウントが鳴る、そして――。

平「――始まった!」

尽「うおおおおおおおっ!!」

突進するセイカイオー!
敵ロボットとの身長差は、まさに巨人と小人を思わせる!
巨大なパンチが敵ロボットへとぶち当たる、瞬間!

尽「……消えた!?」

寺門「なんだ!?」

レーダーからも、視界からも消える敵ロボットの姿!
そして――

???「……アクセルナイフ!!」

尽「……!? ぐあぁっ!?」

???「遅い……!」

反撃に出る拳は空を切り、何か見えない攻撃がセイカイオーを襲った!

片原「どういうことでしょうな……」

さくら「見えない敵だなんて……!」

尽「フェアにやるってのは誰が言った!!」

???「国機戦では、全てを出し切ることがフェアな戦いだ!! 君も全力を出せ、民荷
尽!!」

尽「くっ――!!」
見えない敵を相手に、セイカイオーは力を発揮できない!

さくら『――総理、行征剣を!! 敵はステルス機です!』
尽「なんだって……ステルス機!?」

さくら『ええ、姿を消す効果を消すには、行征剣のエネルギー波で空間の電磁波を……と
にかく!!』

尽「わ、わかった――」

半分しか理解できなかったが、とにかく尽は急ぐ!

尽「――行征剣!!」


転送される巨大な剣――必殺の行征剣がエネルギーを放つ!
静「きゃあっ!」

寺門「フルパワーか! こっちまで熱くなる……!」

???「……!? これは……」

行征剣のエネルギーが、敵ロボットの姿を暴く!!

尽「くらえぇぇぇ!!」

???「夏場のコートはやはり駄目か……ならば!」

敵ロボットのコートが弾け飛ぶ!
弾丸のように飛び出し、そして――

平「……馬鹿な、突っ込むのか!?」

尽「うおおおおおおおぉぉぉ!!!」

???「――ディサイション……ブレイカァァァァァァァァァァァ!!」

尽「な、なんだ……!?」

敵ロボットの手刀と、行征剣のエネルギーが相殺し、誘発し、連鎖する!

巨大な爆発が生まれ、そして――





尽「――僕は、どうなったんだ?」

病院のベッドで、尽はさくらからその後を聞いた。

さくら「敵ロボットの放ったエネルギーと、行征剣のエネルギーとがぶつかり合い、強力
な電磁波が発生して、周囲の人々が軽いショック状態になったんです。総理も、例外ではな
く」

尽「君は無事なのか……?」

さくら「私だけではなく、観覧席の人々を含めてすべての人々が無事です。ただ、その…
…」

敵ロボットは、影も形もなくなっていた。
電磁波によるロボットの消滅とも考えにくく、まさに消えてしまったのだ……。

さくら「これは私の推測なのですが……その……」

尽「なに?」

さくら「……行征剣のエネルギーと相殺し合うほどのエネルギーを放てるロボット、とな
ると、あのロボットは……」





英武璃理は、うなされる夫の目が覚めるのを一晩待ち続けて、気づいたら朝だった。
そして、何事もないかのような夫の顔を見て、むっとした。

「……一晩看病して損しました。時間を無駄に使ってしまいました」

「あ、いや、ごめん……」

そして、また無事な朝が来たことを何かに感謝しながら、朝食を作るために台所へ立つ。
目覚めた男は、ふと見た夢を思い出し、妻に訪ねた。

「璃理、ひとつ聞きたいんだが……」

「はい、なんですか?」

「君の父親は……コーヒーが好きだったかな」


第XX話 『セイカイオー 自らと相対す』 完


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最終更新:2009年11月24日 23:14