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第七話 悪食(後編)


「しかし厄介なものだな・・・モノの分解し、それをエネルギーとして吸収する能力か・・・」
機関の長である翔が私の資料と考察を見て言う
「ええ、そして吸収したエネルギーは全て自身のダメージの再生に使われていると思われます」
智也の頑張りで情報は集まった・・・
今も智也はあのアエビルと戦っている
状況ははっきり言って不利だ・・・・右腕の再生はまだ出来ない・・・ディストレイザー
のダメージは先のモノ以外微々たるものだったがそうなるように操縦した智也の精神力は
限界が近くなっている。
ディストレイザーの復元システムは搭乗者の精神に多大なる負担をかける
この状態の智也に復元をさせるのは酷というものなのかもしれない
それに右腕が再生が完了した所で奴の優位性は変わらない・・・あの能力の前には切り札である「KDM」を容易に放つ事が出来ない
「KDM」は強力無比な技であると同時に隙が大きい
あの技をかけようとしたと同時に左腕を掴まれ吸収されたりすればその時こそ敗北は決定する
智也に二度復元をするような精神力は残っていない・・・
ならばどうする・・・・どうすれば勝てる・・・・
奴の吸収を封じつつ左腕を奴にブチかます倒す方法を・・・

そうだ・・・
私は通信機のスイッチを押した


「というわけよ・・・方法はこれしかないと思うわ」
迫りくるアエビルの猛攻・・・
智也はアエビルの全てを分解し吸収する右腕に最大の注意を払い攻撃を避けていた

美奈の提案してきた作戦はこうだ・・・奴は復元に多くのエネルギーを回している為小さい攻撃は意味をなさない
ならば一撃で奴を滅ぼせる「クドム」が奴を倒す唯一の手段となる
だが奴にクドムを当てる事は至難を極める・・・ならどうするか・・・
敵の反応を一手遅らせるのだ
ガンズを一点に集めた巨大な質を持つ光弾「ブラストガンズ」を奴に放つ
もちろん奴はそれを右腕で吸収してくるだろう・・・だがその光弾の背後につき奴への急接近を図り
クドムの射程内に入り込む
そして奴が光弾を吸収している隙を狙って奴を結果内に閉じ込め奴を消す
これはたしかに良策に思える・・・だが何だ・・・この妙な感覚は・・・


「わかった、それで行こう・・・ディス、ガンズの出力を半分チャージに回せ」
【了解 出力50%カット、チャージに回します】
【擬似コード再生まで二分三十秒】
【敵アエビルに攻撃行動確認】


(キシャァァァァ!)
アエビルから放たれた衝撃波がディストレイザーを襲う
だがこの衝撃波程度ではディストレイザー防御結界を崩す事は出来ない

「そんな攻撃でディストレイザーをやれるか」

すかさずこっちもガンズをアエビルに向かって放つ
放ったガンズはまるでダメージを与えていない
こちらからの攻撃ではダメージを与えられないし向こうもダメージを与えられない
そう、この勝負を終わらせる事を出来るのは一撃必殺の大技以外ありえないのだ
こちらはクドム、奴は全てを分解する右腕
ならばこっちの準備が整うまで時間を稼ぐ・・・あと少しだあと二分・・・やってみせる

だが何だこのさっきから付きまとう妙な感じは・・・
直感が告げている気がする・・・このままでは危ないと・・・
こう感じるときは大抵ろくな事がない

奴を見る・・・何か見落としていないか・・・何か・・・


何だ・・・


奴の左手が・・・・


光って・・・いる・・・

アエビルの左手に小さな圧縮されたとでもいうのだろうか
そのような光が見えた

(喰わせろ・・・もっとだ・・・もっと喰わせろぉぉぉぉ)

アエビルの左腕から圧縮された光が放たれ・・・・・
【敵アエビルの左腕に高エネルギー確認、危険、回避を・・・】
さっきからの妙な感覚の正体はこれか
ディス、気づくのが遅いんだよ
「ディス防御式結界を一点集中させろ」
回避は無理だ耐えるしかない
【了解・・・着弾点に結界集中】


アエビルから放たれた光がディストレイザーを襲う
結界と光がぶつかり合った時とてつもない衝撃がディストレイザーにはしった

「耐えろ!耐えてくれ!!」
自身を守る結界を構成する術式が次々と崩壊していく

【防御結界70%ダウン、73、78、84】

まだだ・・・まだだ・・・

【88、90、92、96】

まだだ・・・まだこんな所で

【99、100 防御結界消滅します】

「終わるわけにはいかないんだぁぁぁ!!」

【・・・確・・OL・・・・】
その時ディストレイザーの体が光を放った・・・


【敵エネルギー波の防御に成功・・・また擬似コードの再生を完了しました】
耐えたのか・・・・結界は崩壊した筈なのに・・何故・・いやそんな事より

【敵アエビルの急接近確認】

モニターには奴の姿がすぐそこまで迫っていた
「この、糞野郎!!」
どうする後ろに避けるか・・・いや避けるのは無理だ・・なら
「ディス、さっきまで溜めていたガンズのエネルギーを奴に向かって放つ」
【ブラストガンズ使用要請・・・術式収束】
奴の右腕が眼前に・・・間に合え、間に合え、間に合え

【収束終了】

「よし!たんまりくらえよ、ブラストガンズ!」
巨大な光弾が奴の目の前に発射される
この至近距離で奴も反応できないだろう
「離脱!」
緊急ブーストをかけ後方にさがる・・・
煙でアエビルの姿が見えない・・やったか・・・・?


煙が少しずつ薄れて・・・少しずつ見えてきた
奴の頭が吹っ飛ばされていた・・・左腕の損傷もひどい
だが再生はもう始まっている・・・
これが最後のチャンスだ・・・ならば


一撃でしとめる


「ディス、右腕は?」
【復元完了】
「よっしゃぁぁぁ!」

さあ、腹ペコの絶望者さんよぉ
腹いっぱいになるまで喰わせてやるぜ
今までの劣勢展開はこれで終わりだ

「ディス、クドムをかける」
【了解、全結界式収束開始】

『開け、鬼神の翅!!』

【全ウイング展開 ブースト】
ディストレイザーの全ての翅が開く
「いくぜぇええ!!」
眼(まなこ)で奴を標的として捉え全速力で突撃した

(痛い・・・痛い)
アエビルの再生がもう終わる・・・
だがもうそんなものは関係ないこの両腕で奴を消し去るのみ

奴の体を左腕で掴んだ・・・だがアエビルの右腕もこちらの左腕を掴もうとしている
ここで左腕を分解されれば敗北は必然・・・・
もはやディストレイザーに反撃の手段は残されていないのだ
だがそんな事をあざ笑うかのようにディストレイザーの左腕をアエビルの右腕は捉えつつあった・・・もはや回避は不可能・・万策つき・・・

「甘いんだよ、そんなもん予想の範疇なんだ・・・その程度でこの俺を!ディスレイザーを!止められると思うな!!」

アエビルがその右腕で掴んだのは・・・左腕を守る為に挙げておいたディストレイザー左脚だった

『汝を封ずる、我が封印の左腕で・・・』

アエビルを掴んだディストレイザーの左腕から大量の文字列・・・術式が展開する
その術式がアエビルを内包していく・・・・・出口のないほどに

(グォォォォォ、出せ!出せ!)

もはや抜け出せぬ事の出来ぬ結界と化した文字列から左腕を抜き出す・・・
そして右腕を結界にぶち込む

『この断罪の右腕で、この世から消え去れぇぇぇ!!!』

アエビルを内包した結界はサイズを縮めていく・・・
(お腹が・・・お腹が・・・減った・・・)

そうしてアエビルプリズンは消滅した
それはまるでディストレイザーの右腕に握りつぶされていくようにみえた

「喰ったら九度無に還るぐらいの豪華な食事だ・・・満足したか・・・悪食」

【KDM使用によりシステム全フリーズ・・・復旧まで残り5分】

「くっ・・・」
戦いが終わったと同時に体中が痛む・・・今まではこんなことはなかった・・・
無理をしすぎたんだろうか・・・

智也、大丈夫?智也、ねえ!返事をして!

誰かが読んでる・・・・でも・・くたびれた・・・とにかく・・・くたびれた・・・・・今はここで寝かせてくれ・・・


01時35分
アエビル・プリズン消滅、機関に与えられた任務は完了した








目が覚める・・・目の前には眩しいくらい明るい電灯・・・
その光に目が痛くなって目を瞑る

「智也、大丈夫!」

美奈の声が聞こえる・・・ここは・・・
落ち着いて俺はまた目を開いた
目の前にはよく見知った顔がいる

「美奈・・・なんでここに・・・てかここどこ?」

美奈はほっとしたように俺の顔を見た

「ここは機関の医務室よ・・・先の戦闘であなたの消耗が激しかったからここにつれてこられたの・・・いったいどうしたらそんなアザが体に付くんだか・・・」
体を見回す、本当だ・・・体中アザだらけだ・・・今まであの機体に乗ってこんな事になった事はなかったんだが・・・

「わかんねえよ・・・なんで俺ここにいるんだ?」

覚えてないのね・・・そんな顔をして美奈は俺に言う

「原理はわからないんだけど・・・ディストレイザーが遺跡に勝手に転移してきたの・・・」

「転移だって?そんな機能がディストレイザーについていたのか」

もう数回もあのディストレイザーに乗って絶望者達と戦っているがそんな機能がついているなんて全く知らなかった

「まだ詳しい事はわからないんだけどね・・・もしかしたら遺跡の方がディステレイザーを転移させて回収したのかもしれない」

なるほど・・・そういうケースも考えられるか・・・

「そんな事より私あなたに謝っておきたい事があるの」

暗い顔つきで美奈が言う
謝る事?作戦前のミスの事ならもう終わったはずだけど他になにかあったか?

「あのアエビルとの戦いで私の立てた作戦はまったく役に立たなかった・・・奴の分析を
誤ったせいで、あなたを死の危険に近づけるような事をしてしまった・・・本当にごめんなさい」

なんだそんな事か・・・・

「私ね・・・前のミスの件もあるし機関をやめようと思っているの・・・言語解析には私の知り合いを招くわ・・・優秀な人だから決して見劣りしないはずだと・・・」


はあ、何を言い出すんだこいつは・・・

「ちょっと黙れ、馬鹿女」

俺は手で美奈の口をふさいだ

「な・・・何を・・・」

美奈が俺の手を振り払って言う

「たく・・・何を言い出すかと思えば・・・だから馬鹿女だって言いたくなるんだ」

こいつはいつもこうだ・・・自分が完璧でミスのしない人間でなければならないと思い込んでいる

「一つ良いこと教えてやる今回の作戦に関しては、俺はお前に感謝してる」

「えっ?」

美奈は意味が分からないという顔していた
ちょっと笑いそうだ・・・こらえないと

「まずな・・・短時間で作った作戦なんてもんはな、まず成功する事はないんだよ
 だからそんな事で責任感じる事は筋違い・・・それになお前がガンズの使用を提案してくれてなかったら俺は間違いなく負けていた」

ディストレイザーがアエビルの光弾を耐えた時、奴は既にディストレイザーの近くに接近していた
奴を立ち止まらせる事が出来なければディストレイザーは確実に分解されていただろう・・・
だが半端な攻撃では奴にダメージを与える事は出来なかっただろう、だが奴を立ち止まらせるにたる強力な攻撃にはそれなりの準備が必要だった
あの時、ブラストガンズを撃つ事が出来たのは美奈のおかげなのだ・・・元々想定されていた用途とは違ったとはいえあれが逆転のきっかけになった
あの作戦がなければ俺は確実に負けていたのだ

「だから俺はお前に感謝してる命を拾えたのはお前のおかげだ・・・美奈
 それになそんなに責任感じて思いつめるんだったらしっかり仕事して俺を助ける事だけを考えてくれた方が辞めるなんてことよりよっぽどありがいたい」


美奈には智也の言ってる事が理解できなかった自分の作戦が役に立ったとはいえ左腕の能力に気づかず彼が命を落とす危険に近づけたのだ・・・
彼が私なら散々に恨み言を言っているだろう・・・・なのにこの皆瀬智也という人間は笑って感謝すらしていると言う・・・なんてお人好しの馬鹿なんだろう
私が完璧であれば、完璧であれば、完璧であれば
あんたはもっと安全に戦えたんだ、ディストレイザーはあんなにダメージを受けなかった、自分の体を見てみてよ、体中アザだらけじゃない・・・今までこんな事はなかったのに・・・

「あのな・・・」

智也が私を見て言う

「もう少し気楽に生きろよ・・・自分を責めてるあんたを見てるのは痛々しいんだ
 憎まれ口ほざいてる方がずっといい」

「気楽にやれ?そんな事出来るわけないじゃない!
また智也は私のミスのせいで命を失くすかもしれない・・・
それにあんただけじゃないディステレイザーは人類の希望なのよ・・・
あんたの死は人間の敗北を意味するってわかってるの?」

「はぁ・・・聞き分けの悪い奴だなぁ・・・じゃあ、もう一つ良いこと教えてやるよ
 俺はお前の小っちゃいミスごときで死ぬほどやわじゃない・・・何故かだって?
 それはなこの世に俺より性質の悪い奴はいないからさ」
そう言って智也は笑った。
意味が分からない、性質が悪いから死なない?そんなわけない
でもそんな事言って笑う智也の顔はとても綺麗だと美奈は感じた・・・


[村野 美奈 機関脱退の考えを改め続投を決意]



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最終更新:2009年12月06日 14:15