第一話『宇宙の運び屋』
遠い未来、人類は宇宙へ進出していた。
ここは宇宙での住居であるスペースコロニーである。
金髪の男と茶髪の女性が話をしている。
男「じゃ、確かに受け取りました」
女性「はい。お願いします」
男「ええ。コスモデリバリーにお任せあれ」
男の名はクロク・キーパ。
宇宙の運び屋、コスモデリバリーのリーダーだ。
女性の方は依頼主である。
今回の依頼は、『地球に住む娘の6歳の誕生日にケーキを作ったので届けて欲しい』とのことだった。
しかし、このケーキ。ただのケーキではない。
宇宙でも珍しい食材を使って調理された特別なケーキなのだ。
その為、通常の保存方法では品質を維持できず、作ったらすぐ食べるしかない。
だが女性と娘の距離は遠い。そこでコスモデリバリーの出番というわけだ。
クロク「ケーキの賞味期限は後12時間。地球までは約10時間か。問題なければ間に合うな」
少女「何もなければ、ね。今回も例によって、邪魔が入りそうだけど……」
クロクと話す少女はコスモデリバリーのメンバー、安西水保(あんざいみなほ)だ。
コスモデリバリーで使う輸送機のパイロットを務める。
クロク「まぁな。こんな珍しい食材で作られてるケーキだ。グルメな奴らが黙っているわけ無いよな」
水保「ついでに、私達の評判を落としたい奴らとかね」
コスモデリバリーは宇宙では名の知れた運び屋である。
時間厳守、品質保持、絶対配達の三拍子に加え、それを成すだけの能力・戦闘力の高さが評判なのだ。
加えて、悪い奴からは依頼を受けない。依頼料はそれなりに値が張るが、手が届かないほどじゃない。
市民に人気があるわけである。
で、その評判に嫉妬し、陥れたい敵対勢力――つまり同業者がいるわけだ。
クロク「まあ、敵がきたら蹴散らすだけさ」
水保「蹴散らすのはあたしの役目でしょうが」
そのとき突然、曲がり角から男が飛び出し、クロクとぶつかってしまう。
クロク「うわ!おい、コラ!気をつけろよ!!」
男「わ、す、すみません!あ、荷物!よっと。じゃ、俺急いでるんで!」
クロク「ちょ、おまッ……待てよ!」
水保「あんなに急いでどこ行くんだか……」
クロク達はぶつかった男が走り去っていくのを見送った。そしてしばらくしてから気づく。
クロク「……あの野郎!荷物間違えていきやがった!!」
クロクの荷物を間違えて持っていった男、物部運武(もののべはこぶ)はアルバイトで宇宙船の掃除をしていた。
運武「まったく、どうしてこうなるんだよ……」
運武は上司に頼まれた荷物を間違えてしまい、船の外側の掃除を言い渡されたのだ。
宇宙での掃除は何度もやっているし、もう慣れたが、下手をすれば放り出されるかもしれないという危険が伴うのだ。
運武「あのケーキ、食べちゃまずいよな。でも、悪くなるといけないし……」
そのとき、急に2機のロボットが宇宙船の近くに現れた!そして、通信を入れる。
パイロット「そこの宇宙船、止まれ!その宇宙船の中に、白いデコレーションのケーキがあるはずだ。渡してもらおう」
船長「なんだと!?そんなものは知らん!」
パイロット「調べは付いてるんだ。そこの清掃員が、ケーキを持っていることはな!渡さないと痛い目に遭わせるぞ!」
ロボットのパイロットはそういうと、武器の銃を宇宙船の少し横へ発射した。
運武「うわっ!!危ねえ!!」
パイロット「次はエンジンを狙うぞ」
宇宙船の中では、清掃員の上司が、運武の間違えたケーキのことを船長に伝えていた。
上司「と、いうことでして……」
船長「まったく、なんと言うことだ!そんなケーキくれてやる!……ロボットのパイロット聞こえるか。今そっちへ渡す」
上司「おい、物部!聞こえるか!!お前の不注意でこんなことになったんだ!お前が渡しに行け!」
運武「マジっスか……」
運武は一旦戻り、ケーキをカプセルに入れて外へ出る。
運武「もしかして、ケーキ渡したらこのまま殺されちまうんじゃ……?」
しかし、戻ってもやられるだけだ。大人しく従うしかない。
運武はロボットの近くまで来て通信を入れる。
運武「おーい、もってたぞ」
パイロット「よし、ゆっくり近づいて来い。変な動きしてみろ。握りつぶすからな」
しかし、言葉とは裏腹に、もう一機の方は武器を準備していた。
運武(宇宙船を潰すつもりか!てことは俺も……!)
運武がロボットの手の届く範囲に近づこうとしていた。そのとき――!
クロク「させるかよ!」
宇宙用のバイクに乗るクロクがロボットを攻撃した!
その隙に運武を連れて逃げる。
ロボットはバイクを追うが、すばしっこくて捕まえられない。
クロクはどうやら近くにある高速宇宙船で逃げるようだ。
クロク「ハッ!そう簡単に捕まるかよ!」
パイロット「ならば、これでどうだ!」
運武「うわ!なんだあれ!?」
ロボットからネットが飛び出し、運武達を捕まえる。
運武達はバイクから放り出され、そのバイクと宇宙船はロボットによって潰された。
クロク「うわー!俺のブラックスター号がッ!!レンタシャトルのポコスコンがッ!!!」
運武「なんてネーミングセンスだ……」
ロボットは運武達を捕まえ、パイロットがケーキを奪い取る。
パイロット「噂のコスモデリバリーもこんなものか。所詮噂は噂ということか?」
クロク「……さあ、それはどうだろうな?」
パイロット「何?」
パイロットが不信に思った瞬間、もう一機のロボットが戦闘機に攻撃されていた!
クロク「隙ありだ!」
クロクは一瞬の隙を突いて、敵パイロットからケーキを取り返す。
そして、運武を連れて戦闘機に近づきコクピットへ入る。
水保「この人、さっきの?」
クロク「ああ、俺のブラックスター号とレンタシャトル壊してくれやがった」
水保「ええー!?あれ高かったんだよー!?」
話してる間に、敵のロボットが復活していた。
パイロット「くそ!不意打ちだったから油断したが、こっちは新型だ。やられるものか!」
水保「新型ね。じゃあさっそく汚点つけてあげるよ!」
運武「もしかして君みたいな女の子が戦うのか!?」
クロク「まあ、見てなって」
ロボットが2機で同時にかかってくる。
戦闘機はすばやくかわした。そして水保が叫ぶ。
水保「デリヴァリスター…………トランスフォォォォムッ!」
叫びと共に、戦闘機が形を変え、その姿はやがて人へとなる。
水保「――デリヴァリオン……参!上!!貴方を地獄へ、郵送するよ!」
パイロット「クッ!これがデリヴァリオンか……!クソ!!」
ロボットが銃を構える!しかし、デリヴァリオンは既に、ロボットの後ろを取っていた!
ロボットの腕をへし折り、バーニアを破壊する!
運武「なッ……強い!」
クロク「な?言っただろ?」
油断していたそのとき、剣を構えたもう一機のロボットが、後ろから高速で迫っていた!
パイロット「この距離!避けれまい!!」
運武「だ、ダメだ!避けれない!?」
ロボットがデリヴァリオンに肉薄した!そして、剣が振り下ろされ――!
水保「荷物に傷はつけさせない!」
デリヴァリオンは驚異的な速さでかわした!そして、繰り出される必殺技!
水保「速達ッ!アァァクセルGドライバァァァァァァァァア!!」
掌から高速で打ち出される重力エネルギーの矢が敵機を貫いた!
水保「――勝利を、お届け!」
コクピット以外が爆散する!完全にロボットを沈黙させた――!
少女「はっぴばーすでーとぅーゆー、はっぴばーすでーとぅーゆー」
クロク達はなんとか地球へ降り立ち、ケーキを届けることに成功した。
なぜか、少女達に混ざって水保はケーキをごちそうになっている。
つれてこられた運武は、船の上司に連絡していた。
上司「物部!お前はクビだ!あんな事件をようなやつは置いてはおけん!」
運武「そ、そんな……」
上司「今日までの給料は振り込んでおく。じゃあな」
プツンと通信が切れる。
運武「くっそ~……ついてねえ……」
クロク「ついてないのはお互い様。大体、事の原因はお前にあるんだ」
運武「なんだと!」
クロク「おっと」
つかみかかろうと運武に、クロクが紙を突き出した。
クロク「これな~んだ?」
運武「請求書?……バイクの修理代と、レンタシャトルの弁償代……1000万!!?」
クロク「今すぐ用意しろとは言わねえよ。だが、きっちり払ってもらうからな」
運武「な、できるわけ無いだろ!?大体、俺のせいじゃない!」
クロク「お前、仕事首になったんだろ?よし、うちで働け」
運武「なんだって?」
クロク「三食寝床付きだ。よかったな」
運武「なんでだよ!?」
クロク「いやぁ~、いい働き手が増えて助かったよ。ちょうどデリヴァリオンのサポートパイロットが欲しかったんだよな」
運武「話し聞け!」
こうしてコスモデリバリーにこき使われることになった運武……
がんばれ運武。仲間と共に、人々の幸せを届けろ、デリヴァリオン!
最終更新:2009年12月06日 14:49