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 セイムは会議室から退場になった。
 理由はカタリナ曰く「お前がいると話が進まないから・・・。」というなんともシンプルなものだ。
 セイムも先ほどの口論の件で会議室にいるとまずいと思ったのか、カタリナに聞こえないようにクーガの耳元で「めんごな」と言って、出て行った。
 「さてだ、邪魔者もいなくなった事だし話を進めるか・・・何処まで話したかな・・・。」
 カタリナは椅子に腰掛けて説明を再開し始める。
 先ほどあのままセイムと口論になったためか顔に少々疲れの色が出ていた。
 「ディールダインがこのイアナーラの近くにあるってところまでかな・・・。」
 そう言ってクーガは窓を開ける。
 この部屋の換気扇だけではカタリナの吸った煙草の煙と匂いを処理しきれないと感じたからだ。
 「ああ、そうだった、そうだった。」
 カタリナは新しい煙草を取り出そうとするが、煙草を切らしたことに気づきそれにため息をする。
 そうして話を続ける。
 「さて、本題にはいるかな、今回シャドウミラージュがこの地に送り込まれたのは陽動の為だ。」
 「陽動?ディールダインの採掘がてっきり任務なのかと思っていたけれど・・・。」
 「いや、ディールダインはの採掘は少々デリケートでな専門的な道具が必要なんだ。」
 カタリナが肩をすくめて言う。
 「それをするのがあんたの役目なんじゃないのか?」
 「いーや、まあ、私はその仕事をする事も仕事のうちだけど今回の採掘に関しての技術者としては私は予備だ、国から他の専門家どもが派遣されている、現在も別働隊として国立鋼騎士団の護衛を引き連れて採掘作業をしている筈だよ。」
 「ふむ、では陽動というのはその採掘班の方に妖魔達が向かわないようにする為、俺達が囮になって注意を引き付けるという事か?」
 「ほう、結構ものわかりがいいじゃないじゃないか・・・。」
 カタリナは三枚の資料を取り出し、クーガに渡した。
 一つ目がこの周辺の地図が書かれているもの。
 二つ目がこの一体の妖魔の分布表のようなもの、クリアになっており地図と重ねて使うもののようだ。
 三つ目は妖魔の個体情報らしきものが載っているものだった。
 「まず一つ目の資料はこの辺りの地図だ、当然の事ながら頭の中に叩き込んでおいてくれ、二つ目の資料はこの辺りの妖魔の分布量を示したものだな、三つ目はこの地に住むといわれる妖魔のブラックリストだ。さて、我々はディールダインを我が国内にも存在することを確認した。だが、問題はそのディ ールダインのある場所だ。」
 「場所?」
 「そう、ここから北東の方角にある深淵の森クロロスペッツゥナという場所だ。」
 地図を取り出しそこをカタリナは指を差し、話を続ける。
 「妖魔の生息の分布表があったろう?それと照らし合わせるとわかりやすいな。」
 クーガは言われた分布表を取り出し、地図と重ねクロロスペッツゥナの位置と照らし合わせる。
 「これは・・・。」
 クーガはそれを地図を見て息を呑んだ。
 分布表にはマーカーでその地域ごとに妖魔の生息数の予想地が書かれている。
 マーカーで書かれた数値が大きい程その地に妖魔が多くいるという事だ。
 基本的には地区ごとに大体50から多くて100とかかれることになる。
 そして、そのクロロスペッツゥナにマーカで書かれた妖魔の予測生息数は1250と書かれていた。
 「どうだ、見ればわかるだろう?そこは文字通り妖魔達の巣なんだ。」
 「もしこれを全部倒せというのなら無理だな、俺達がちまちまやるより戦略兵器をぶち込んだ方が効果的だろう、しっぺ返しが怖くなければ・・・だが。」
 クーガは重い口調でそう答える。
 いくら、シャドウミラージュが精鋭といえどもこの数の妖魔を相手にしては勝機が薄いのは明白だった。「当然だ、だが少しだけ安心していいのはこのクロロスペッツゥナの深部までいかずとも良いという事だ、森に入って比較的浅い部分でもディールダインは採掘できる、深部の妖魔ほど強力であることは間違い無いがな。」
 カタリナは口が寂しいのか近くにあった串のようなものを口に咥えた。
 「あんた、せわしないな。」
 その挙動を見てクーガが言った。
 「正直、もっと多くの煙草を持ってくればよかったと後悔しているところだ。煙草は良いぞ、お前も一服どうだ?」
 「いや、いいよ。」
 カタリナの一服の誘いに丁重に断った。
 「そうか…まあいい、話を続けよう、ならばクロロスペッツゥナの浅い部分の妖魔の数だけを減らす事が重要になっていくる、そこでするのが陽動、つまりクーガ、お前がさっき言った通りの我々が囮となって森にいる妖魔の注意をこちらに逸らしつつ数を減らす事だ。」
 「でも、それっておかしくないか?数を減らすって言ったって森の妖魔がいなくなるなんて事はありえないわけだし、採掘隊の危険が無くなるなんて事じゃないか?」
 そのクーガの疑問に、カタリナは笑って応える。
 「まあ、当然だが国からよりすぐりの鋼騎士を4人ほど彼らの護衛につけている、そこら辺にいる下級妖魔なら相手にはならん程度には強い奴らだ、我々はそいつらの負担の軽減も目的というわけだな。」
 国からよりすぐりの鋼騎士となるとDを持っているものかもしくは騎士団の上位騎士クラスがいるという事だ。
 かつてクーガは国立騎士団に所属していた為、それらが束になればそこらの下級妖魔如きでは相手にならないほどの実力者だという事は把握していた。
 「なるほど・・・期間はどれぐらいを想定しているんだ?」
 「まあ、一月だ、採掘隊は1週間ごとに補給に戻ってくる。現在で既に15tのディールダインを回収した。予定では1月で100tを回収したかったのだがね、出来るだけ危険の無いように安全な方法を取るとどうも効率的には採掘出来ないようだ。今回は初めてだからな、まあこんなものだろう。」
 カタリナは少し暗い顔をする。
 一般的には鋼機一体に0.5tのディールダインが必要とされている。
 つまり普通に鋼機を作るにもたかだか30機程度のものにしかならないという事だ。
 研究用のモノも確保したかったという事もあるため、1月でこれだけの労力を賭けてやっと15tとなるとカタリナが意気消沈するのも仕方無い話ではあった。
 カタリナはため息を吐いて話を続ける。
 「期間はあと一週間ほどだ、まあ、君の機体がこんな状況じゃあ、君の機体が修理し終わる頃にはもう君の出番も無いかもしれないな。」
 「そうか・・・。」
 クーガがここに来た事でやったことといえば半壊した鋼機の修理という手間を増やしただけだった。
 つまりは増援で来た己は単に余計な手間をこさえて足を引っ張っただけという事になる。
 これはクーガとしては非常に情けない話であり己を責めている点でもある。
 「ああ、お前はそんなに落ち込まなくてもいい、実のところお前は既に一定の戦果を上げているからね、もし自分を役立たずだとか思っているのならばそれは大きな間違いだ。」
 「戦果を上げた?」
 クーガにはその戦果の心当たりが無かった。
 「お前が『名無し』で闘ったという妖魔の事だ、アレな、ここらじゃ一応、我々のブラックリストに載る程度に有名な妖魔だったんだ。」
 『名無し』とは国に非公認で作られた集落の通称だ。
 クーガは12日ほど前、このイアナーラに向かっていたクーガは鋼機を一緒に運んでいたトレーラーの故障した為、近くにあった『名無し』に修理パーの購入と長旅での休養の為、数日間そこで過ごす事になった。
 その後、成り行きでクーガは町に巣食っていた妖魔と闘うことになったのだがその戦いの際、自身の鋼機であるスラッシュゲイルに大きなダメージを受けてしまった・・・。
 「あいつそんなに凄い奴だったのか?」
 カタリナを妖魔の個体情報が書かれた資料取り出し、これだと掌で叩いた。
 「この三つ目の資料がこの地方での強力な力を持つとされる妖魔のリストだ。お前が倒した妖魔はグラスと名乗ったんだろう?」
 「ああ、確かそんな名前だった筈だ。」
 村にいたいかれた儀式の執行人が妖魔の事をグラス様と言っていたのをクーガは思い出しながら答えた。
 「3枚目だ、『グラス』、クラスCの妖魔としてブラックリストに載っている奴だ、その『名無し』の地区を支配していたと言われる妖魔だな、結構な数の舎弟もいたらしく、そのグラスの配下が今森から出てきて仇を取ろうと血眼になってお前を探しているようだよ、お陰で森の妖魔は結構な数の妖魔が森 の外に出た、つまりはお前は役目を意図はしていなかっただろうがシャドウミラージュの目的を一つ果たしていたという事だ。だからここでは誰もお前を責めたりするような奴はいない、その点に関しては安心してもらってもいい。まあ、この部隊は能天気な奴が多いせいかそんなことせずとも歓迎してただろうがな。」
 そんな事を言いながらカタリナはポケットの中に手を入れて中をさぐっていた。
 おそらくはポケットの中に箱から落ちた煙草が無いか?と探しているのだろう。
 そのため、クーガは慰めの言葉をかけられても余り説得力を感じることが出来ず、苦笑した。
 クーガはその妖魔のブラックリストを眺める。
 そこに一つ気になる妖魔の名前があった。
 「一ついいか?」
 「ああ、なんだ?」
 ポケットの中からしなびた煙草をとりだしてカタリナはクーガの方に向いた。
 「この――――」
 クーガが質問を告げようとしたその時、乱暴に開けられた扉が壁にぶつかる音が会議室に響き渡った。
 「カタリナ!!!」
 扉を開けて入ってきた女は大声で上げて会議室に入ってくる。
 女は赤い髪の長髪が特徴的で服装はローブのような布の白い服、手っ取り早くいえば、どっかのアニメ文化が栄えてるような島国の民族衣装っぽいものだ。
 年齢は20超えたか超えていないぐらいようだった。
 「なんだ、ミナ、私は今、一応仕事中なんだがな・・・。」
 「こっちも仕事の話だ、あんた私のグレリーナにまた変なもん積んだだろ?」
 慌ててこの会議室にやってきたようだ。
 「変なもの?ああ、姿勢制御のプログラムで新しい奴が出来たのから全部の機体にいれとけと指示だしたかな。でも今度のは中々の自信作だったんだが駄目だったか?」
 「全然良くない、姿勢が崩れると無理に制御をかけて姿勢を直そうとするからバランスが崩れて逆に動かしづらくなった!」
 真顔でミナはそういった。
 それを聞いてカタリナはため息を付き。
 「あのな、それは普通倒れそうになった鋼機を機械側のがわざわざ補正をかけて立て直そうとしてくれているんであって――」
 「だから、それがいらないんだって!!・・・って、あれ?あんたは誰?」
 ミナがクーガに気づき聞いてきた。
 「うーん、お節介好きの馬鹿者かな。」
 クーガはとぼけて答える。
 「そいつがお前が大好きな男だ。」
 見知らない人間がいきなり自分が好きだったとカタリナに告白されクーガは驚いた。
 というもののクーガ・ラグナグは色恋沙汰は苦手である。
 別に女が苦手とかではないだがどうもある人間と親交を持ってしまってから、そういった感情をクーガは抱くようになった。
 だから内心、クーガは少々慌ていた。
 そんなクーガをよそにミナは少し考えた仕草を見せて答える。
 「あたしが好きな男?あー、えー、あー、ああそういう事か、という事はあんたがクーガ・ラグナグって事ね?」
 「まあ、そうだが、俺が好きってどういう意味だ?」
 カタリナがくくっと笑って言う。
 「いや、こいつがお前の噂話をよくもってきてな、部隊の中でお前の噂を知らない人間はいないんだ。」
 「噂?」
 クーガは自分に噂されるような事柄があるだろうかと考える。
 心当たりはいくつかあるが、どれもあまり言われていて嬉しいような噂ではなかった。
 「その話はあとにして、先に本題ね。」
 ミナがその話をさえぎって言う。
 「つまりはさっさと元に戻せという事か?」
 「そういうこと。」
 ふむとカタリナは頷く。
 「だがな、私も今、取り込み中でな、こいつ色々講釈してやらねばならんのだ、これは隊長からの正式な頼みで――」
 「でもね―――」
 ミナはカタリナの耳元でぼそぼそと呟く。
 その後、カタリナは煙草の火を消して考え始めた。
 クーガにはそれが必死に笑いを堪えているようなものに感じた。
 「ふむ、ふむ、ふむ、クーガすまないが講釈の続きはまたの機会にしてもいいか?」
 「ああ、別にいいが一体なんだ?」
 「そう言ってもらえると助かる、ちょっとした野暮用・・・のようなものだ。」
 カタリナからこれ以上聞いて欲しくないという顔をしていた為、クーガはそれ以上追求するのをやめた。
 ミナはそれをくすっと笑って――
 「まあ、この新入りが何か質問あればあたしが答えといてあげるから、行ってらっしゃいよ。」
 「そうだな、じゃあ、あとは頼む。」
 「りょーかい。」
 そんなやり取りの後、カタリナは会議室から出て行った。
 二人でそれを見送った後、ミナはクーガを値踏みするような目で見た。
 「なんか気持ち悪いな、そういう目で見られるのは・・・一応、俺はまだあんたが誰だかすら知らないんだが・・・。」
 そのクーガの発言にミナは忘れていたというような表情をする。
 「ああ、ごめん、ごめん、あたしの名前はミナ、シャドウミラージュで鋼騎士をやってる、まあ、役としてはあんたと一緒だね。」
 「さっきグレリーナとか言ってたが、それがあんたの機体か?」
 「グレリーナっていう、型番はD―40。」
 自慢気にミナはクーガに語る。
 「D―40という事はかなり新しい型だな、という事はあんたも最近D型を受け取ったのか?」
 クーガの乗る鋼機はD-42である。
 D型と呼ばれる特殊な鋼機はワンオフ前提で開発されるがために型番分しか機体が存在しない。
 言うなれば、D-42 スラッシュゲイルの二つ前に作られた鋼機という事になる為、製作時期が非常に近い機体という事になる。
 「そういう事、一応、D―41は戦闘用じゃないから実質的にはカタリナの最新作という事になるね。」
 「そういえばさっきカタリナにミナ・・・さんでいいのかな、ミナさんは何を言ったんだ?」
 「ミナでいいよ、めんどくさい。他人行儀は嫌いなんだ。」
 クーガはセイムと初めてあった時、呼び捨てで良いといったことを思い出す。
 カタリナもそうだったが、ここではあまり敬称の類は好まれていないようだ。
 「そうか、ミナ。」
 ミナは満足したように言葉を返す。
 「さて、あたしが何を言ったのか?だったよね、実はグレリーナはまだ未完成でね、一つだけ搭載される武装が足りてなかったんだ。」
 「未完成?」
 「そうそう、別に戦闘行動には何の問題は無い、いわゆる隠し手って奴、切り札っていった方がわかりやすいかな?それがやっと完成したのが工場から届いてね。」
 「ああ、なるほどカタリナはそれの取り付けに行ったのか。」
 ならば別に自分への説明終わってからでも良かったんじゃないだろうか?とクーガは思った。
 「あの人、自分の趣味と煙草の事になると周りが見えなくなるからねぇ。」
 「へぇー。」
 「まあ、あんたと話をしてみたかったというのもあるかな、セイムからここにいると聞いてたしね。」
 「俺と話してみたかった?」
 そう疑問を返したクーガにミナは耳元にまで近寄って囁いた。
 「実はね、だからカタリナを追っ払った。」
 「へ?」
 クーガはミナのその一言に気の抜けた返事をした。 








 ミナが会議室にやってきてから既に二時間ほどが経過していた。
 ミナがしたかった話というのはいわゆる噂話の真偽の確認である。
 なんでもクーガは王名を7年ぶりに受け取った人間という事であった噂からあらぬような噂まで色んな噂がたっているらしい。
 王名とは王族からその人間をたたえるためにかつての王族の王の名を字としてもらうことである。
 これは星名に次ぐ名誉な字とされている。
 だが、この王名には色々黒い噂が耐えない。
 愚騎士ブラッドレイ・クライスなんてのがその良い例で実力も実績も無いのに王名を王家から授けられた事があった。
 このときは大臣や武官達は王名を授ける事にほとんどが反対したのだという。
 だが、王室側がそれを押し切った。
 結局のところ王名は王室がその与えられる者の武勲を賞賛して与えるものであるがために、最大の決定権は王室側にある。
 何故、あんなどうしようもない騎士が・・・という話題が民衆に広まり、それ以降この王名という字は黒い噂にまみれてしまった。
 それゆえにそれ以降、誰もが自身の名誉も含めてこの王名を受け取る事はなくなってしまった。
 そんなわけでクーガ・ラグナグ、若干19歳にしてその名誉と同時に黒い噂を得たという情報が出たときはスーサウ全土の人間が驚いたものだった。
 無名の騎士があの呪われた王名を・・・。
 一体どんな手段で!
 そうして様々な噂が流れた。
 ある人は、彼は名家の出身だったがあまりの無能な為、字が貰える可能性が無かった、それゆえに賄賂で彼に称号を与えたという。
 ある人は、彼は本当に実力者であり、先見の目を持った王家が彼に授けた称号だったという。
 他には妖魔を5世代遅れのS型鋼機で単機で倒したとか、王国の姫君を誘拐して王名を要求したとか、実は宇宙生物ガンダーの生まれ変わりとか、ゲンカイザーにのってムゲンカイザーを立案したとか、俺がガン○ムだとか、まあ根も葉もある噂から無い噂、意味不明な噂までより取り見取りであった。
 ミナが知りたいのはこの真偽であった。
 噂を集めるのが趣味といいつつも別にミナはその噂を鵜呑みにしているというわけでは無い。
 彼女の興味は非常に単純で、その噂がどれほど真実と違っていくるのか?という点だった。
 「まあ、なんというか誇張表現が酷いがいくつか事実は混ざってるな・・・。」
 クーガはその噂の数々に苦悩するように頭を抱えたい気持ちになった。
 そもそも目立つ事をあまり好まない彼からすれば噂の種になるという時点で面白い話では無いものだった。
 それが今の話はどうだ?
 自分が最も嫌うケースでは無いのか?
 ああ、まったくをもって嫌になる。
 「ええ!事実混ざってるの!!まさか本当にお姫様を誘拐して王名を・・・。」
 ミナは驚愕したようにクーガを見つめる。
 クーガはその視線に慌てて叫んだ。
 「やってない!誘拐した罪を被せられたことならあるが・・・。」
 「うわ、それはそれで何気に衝撃発言かな・・・。」
 「・・・・・・もう嫌だ、この部隊・・・。」
 そう嘆くクーガの肩をミナは慰めるように叩いた。
 「まあ、いいよ、思ってたより面白い奴みたいだしね、あんた。」
 「それは喜んで良い話なのか・・・・・・。」
 クーガは飽きれるように呟く。
 「まあ、王名って基本的にろくな奴が持たないって印象があるからなぁー、あんたもその類だと思ってた。だから驚いたよ、こんな最前線に立つような部隊に配属希望するなんて・・・。」
 王名が良い風に思われていないという噂はクーガも知っていた、だがここまで人におかしな先入感を与えるものだと自覚しクーガは脱力する。
 そもそもこの王名、クーガが望んで得たものでは無く、半ば無理矢理とらされたようなものなのだ・・・。
 「あ、へコんでる、へコんでる。」
 その反応を見て面白そうにミナは笑う。
 「大した用無いのならもう帰っていいか、ちょっと長話が続いて俺もくたくたなんだよ。」
 苦笑しつつクーガは言った。
 嘘は無かった。
 何せこの1時間半ほどずっと講話をしていたのだ。
 この際、半分が雑談だったという事は・・・まあ、忘れた事にして・・・だが疲れているというのは事実ではあった。
 ミナは少し考えるようにしてから言った。
 「うーん、じゃあ、最期に一つだけ、うん、これだけはどうしても聞いておきたかったんだ。」
 「なんだ・・・?」
 少々呆れた風な素振りをクーガは見せた、それに構わずミナは最期の問いをかける。
 これだけはなんとしても聞いておかなければならなかったからだ。
 「あなたがゼス・ブラックスターを殺したというのは本当?」
 クーガの顔が強張る。
 さきほどまであったある種のお気楽な雰囲気ではなく、その会議室という空間が即座に殺伐とした空気に包まれた。
 この部屋に充満する空気を作り出したのは間違いなくクーガだ、そしてそうなる原因は今、己が踏んだ地雷にあるのだとミナは直感的に確信した。
 「いいよ、ありがとう、その顔で十分答えになった。」
 ミナはそう答える。
 「――そうか、じゃあ、俺は休む事にするよ。」
 そう言ってクーガは部屋から出て行こうと席を立った。
 そのクーガの後姿に向けて、
 「クーガ、一つだけ忠告しておくよ、仲間内でそんな殺気を出されたら困る・・・いかなる理由があろうともだ、妖魔は恐ろしいほど気配に敏感なモノもいる、今のお前はそんな奴らに見つけてくださいといっているようなものだ、実戦ではそんな癇癪を絶対に起こすなよ。」
 と真剣な眼差しでミナは言った。
 その視線、その一言を受けて、クーガは軽く自嘲気味に背中で笑う。
 「ああ、肝に銘じておくよ。」
 そういって、クーガは会議室から出て行った。
 「はぁー・・・また変なのが入ってきたもんだ・・・。」
 ミナが床にペタリと腰を落としたのはその後だった。





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最終更新:2009年12月09日 08:12