ご協力ありがとうございました。
月並みな礼を言い、急いで階段を駆け下りる
「先生、今のはどちらの方で?」
「記者だそうだよ。何でも、最近の通り魔についての事を調べてるんだとか」
…という訳で、街でもかなり噂になってるみたいですね――通り魔ロボ。
「成る程。では、更に詳しく調査してくれたまえ」
分かりました。―――はぁ、編集長も人遣いが荒いんだから。
通り魔ロボ。いつから現れたかは分からないが、そう呼ばれるようになった
噂によれば背後から音もなく忍び寄り、グサリ だそうだ
単なるコスプレ好きの変質者だろうが、ネタになるだろうとの編集長の鶴の一声のせいでこうして取材に駆り出されている
……しかしまあ、通り魔とは物騒な響きだ
あ、自己紹介が遅れました
私は記者の早霧(さぎり)ナハトといいます
街頭でいろいろ聞き込みをしている内にだいぶ日が暮れてしまった
早く帰りたい一心から足が早まる
コツコツ コツコツ コツ…?
背後に嫌な気配を感じる。嘘であってほしいが
コツコツ コツ コツコツ コッ
確かにもう一つ足音がする
嘘ではない、危機が現実として迫っている
何者かに後を付けられている
助けを求めようにも、ここは人気の無い通りだ
ならば頼れるのは―――自分の足だ
私はその場から飛ぶように駆け出した
どれだけ走ったろうか、それでも背後からは隠そうともしない足跡が追いかけてくる
一瞬後ろに意識を向け、再び前を向いたところで足が止まる
袋小路に入ってしまった
次の行動を考えている内に、男の声がした
「アンタあ…ちょっと、断面見せてくれないかなぁ…」
黒いトレンチコート、目出し帽、その上に付けているロボットアニメのお面、そして右手のナイフ
その出で立ちにまともな要素は何一つ無い
幽霊の正体見たりとはよく言ったものだ、これが通り魔ロボの実態か
頭の中ではそんな事を考えるほど余裕があったが、今置かれている状況に余裕は持てない
「ふへへへ……切り刻んでやるよぉ……」
それらしい台詞を吐きながらにじり寄ってくる男
距離を取るように後ずさりをしていたが、遂に壁が背に付いてしまった
男がナイフを振り上げる
そして私に向かって振り下ろされ―――なかった
「え……あれ?」
男が手にしていたナイフが宙を舞い、男の後ろから伸びる手に収まった
目の前で起きた惨状に声を上げることが出来なかった
ズシュウァ
男の胸から光る刃の先端部が覗いた
瞬間、ビクンと男の体が跳ね、そして動かなくなった
成る程、確かに背後から音もなくグサリだと感心すら覚えた
一連の行程を終えそこに立っていたのは
とてつもなく異形の者だった
通り魔ロボだ、正真正銘、噂通りの。
2mはある巨体、鈍く光る肌、面で構成された体――明らかに人間ではない
体に付いた血を拭うと、どうやら行ってしまうようだ
待って!
「……」
応じるように、それが立ち止まる
あなたは一体、何者なの?と問い掛ける
それ―――いや、彼と呼ぶことにしよう―――は肉声とも機械音とも取れない声を発し
「……Behinder……」
そう告げると、音もなく去ってしまった
ビハインダー…変わった名前なのね。
それが私と彼の、邂逅だった
最終更新:2009年12月11日 07:33