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草木も眠る丑三つ時。街中の明かりが消え、辺りが闇に包まれた頃、
キィィィンッ!
金属同士がぶつかる音が、辺りに鳴り響いた。
音が鳴るたびに火花が飛び散り暗い街を照らし出した。
音は間を空けて数分間続き、爆発音とともに辺りに静けさが戻った。
「お疲れ。…今日はどうだった」
メラメラと燃える炎に照らされながら、男が尋ねた。
「はい。今回は特に損傷らしい損傷はありませんでした」
炎の向こうから声が返ってきた。
「それは良かった。…騒ぎになる前に行くか」
辺りに風が巻き起こり、炎を消し去り、煙が立ち上る。
「はい」
返事とともに、煙の中に二つの光が瞬いた。


『ある男とロボットの話』



カナカナカナ…
太陽が頭上に輝き、遠くで蝉の声が鳴り響く。
男は作業を中断し、首にかけたタオルで額の汗を拭い、自分以外誰もいない工場の中で一人話し始めた。
「やはり、今までの戦闘で動力系統にかなりダメージが来てる。特に可動回路はもうおしまいだ。」
男は片手で顔を抑えると、悲しむように続きを話し始めた。
「昨日はなにもないと言っていたが、重症じゃないか…」
「すみません。あなたを…困らせたくありませんでした」
誰もいないはずの工場から返事がかえってきた。
「そんな…いらん気は利かせなくていいんだよ…っ」
男が声の方へと振り返りながら返事を返す。
そこには巨大なロボットが存在していた。



ロボットは床へと丁重に寝かされていた。
身体のあらゆるハッチは開放され、中では大小さまざまな機械が作動していた。
ロボットをよく見ると、ボディーには傷を隠すように全身に鉄板が打ち付けられ、中の機械は火花を上げたり、焼ききれたり、欠けたりしているのが多々あった。
「すまない…。ここの…いや、現代の技術じゃお前を治してやることはできない…」
男が悔しそうに話し出した。握られた両手が震えている。
「お前が…未来からやって来て、俺たちの為に戦ってくれて…それなのに俺は…」
男の顔から涙があふれてきた。
「気にしないでください…。私も初めはプログラムの命令で戦っていました。しかし今では、あなたを守れることが私の喜びであり誇りです」
表情なんてとても作れそうもないその鉄の顔が笑ったような気がして、男の目から涙が溢れ出した。
男の慟哭をかき消すように、サイレンの音が鳴り響いた。
敵が来たのだ。

男が工場のテレビをつけた。
テレビでは、暴れまわるロボットと、その様子が映し出されていた。
ナレーターが必死に状況を報告している。
「出撃します…!」
立ち上がろうとするロボットを男は必死に制止していた。
「もういいだろう!これ以上戦ったらバラバラになるぞ!
それに…今度の相手は只者じゃない!出て行っても潰さ」
男の言葉をさえぎり、ロボットが話し出した。
「先ほども言いました。あなたを…街のみんなを守ることが、私の誇りです。」
「しかし、可動回路が壊れていては…」
男はなおも止めようと必死だった。が、
「ブースターと飛行回路は無事です。」
無駄だった。

「飛べるな?」
男がロボットへと話しかける。
「はい」
工場の外、ロボットは出撃体制へと入っていた。
「無理だけはしないでくれ…いざとなれば国防軍もいる。
もうこれ以上…大切なものを失いたくない」
「…分かりました。出撃します。離れていてください…」
男が離れると、轟音とともに炎を吹きながらロボットは出撃していった。
恐らく、敵わないだろう。
それでも、行かねばならない。
ロボットは、男が手を振る中、さらにスピードを上げていった。
「大切なものを守る為に」
ロボットが一人つぶやいた。

完



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最終更新:2009年12月11日 08:29