かつて、世界の終わりと呼ばれる厄災から世界を救った十機の機械人形があった。
その十機の機械人形は英雄機と呼ばれ伝説の機体として、各地に保管されることとなる。
そしてその百年後からこの物語は始まる。
英雄機博物館
第二展示室
ここにはかつて世界を厄災から救ったと言われる英雄機の一つが納められている。
一つの観光客の群れ、ガイドさんらしき人が説明をしている。
「これがかつて世界を救ったといわれる英雄機『レツガイオー』です。この機体は英雄機の中でもリーダー格だった人物が登場していた機体と言われており、かのグランフラン大戦線では―――」
そんなガイドさんの説明の横で無邪気な子供が一人。
「ねぇ、ねぇ、パパこのロボットって凄いんだね。」
「うん、そうだよ、世界を救った、凄い機体なのさ。」
「うーん、なら今、テレビによく出てる、グラシャラボラスとかいう機体よりも凄いの?」
グラシャラボラス、世界政府が今、一戦で使っているという、最先端技術の粋を集めた機体だ。
昨今はテレビで猛烈アピールをされているので知らない人はいないだろう。
その横で、年増なおじさんが笑って父親に代わって答える。
「ははは、坊主、流石にそれは無いよ、この機体は凄いことをした機体だけれど、所詮は100年前の機体さ、大体、こんな昔の機体動くかすら怪しいな、もはや記念すべきオブジェクトだな、これは、ははは。」
おじさんは豪快に笑っていう。
「えー、じゃあ、このロボットは弱いの。」
子供は残念そうに言った。
「まあ、そうだな、たとえ動いたところでグラシャラボラスの前には瞬殺だろうさ、ガハハハ。」
その発言を聞いて子供は泣き出しそうになる。
ショックを受けたのだろう。
そんな子供にポンと肩を叩いてやさしい語りかける男がいた。
「心配するな坊主、こいつは今は眠っているだけだ…伝説の英雄機だぜ、そんな弱い筈ないじゃないか・・・。」
男は黒いマントに黒髪の長髪が特徴だった。
「お兄ちゃん、本当?」
「ああ、本当だ。」
子供に笑顔が戻る…。
「よか―――」
子供がその青年に対して返答しようとした時、大きな爆発音が鳴り響いた。
「きゃああああああああああああああ!!」
その爆発をみてガイドさんが金切り声が上がる。
そうこれがこの英雄博物館を襲う災難の始まりだった。
「はーはっはは、この博物館はこの世界最高にして最悪、そして美しき盗賊団『黒い薔薇には棘がある』が占拠させてもらうよー。」
爆発音の原因、大きなロボットから女性の声がスピーカー越しに鳴り響く・・・。
「あ、あれはグラシャラボラス!!それに黒薔薇だって!!」
観光客の一人が、叫びあげる。
世にも有名な盗賊団、黒薔薇、世界のあらゆるものを盗み、闇市で売り金に変える世界最大の盗賊組織。
世界政府軍の最新鋭機であるグラシャラボラスを持っているのも彼らがそれを盗んだからであるだろう。
さらにグラシャラボラスの中の女性がスピーカー越しに言う。
「さて、私達の要求は一つ、英雄機『レツガイオー』だ。勿論、機体のセキュリティーも含めてだね。」
英雄機はブラックマーケットでは非常に高値で取引されている。
既に二機盗まれており、そのどちらもがブラックマーケットで国二つ買うほどの値段で取引されていた。
そこで黒薔薇もその英雄機に目をつけたのだろう。
付け加えるように女は言う。
「タイムリミットは3分。ああ、勿論、抵抗は無駄だよ?ちょっとは知識があるなら知ってんだろ?この機体の強さをさ!、大人しく機体を渡せばこれ以上、危害を加えない・・・良心的だろう?」
アハハハと女は笑う。
当然だ、我々にはもう盗賊に抵抗する術が無いのだから。
「うわあああああああん、助けて!助けてよ!」
さきほどまで笑っていた子供が泣き出す。
そんな男に再び黒マントの男は優しく語りかけた。
「落ち着け、こんなときの為にこいつがいるんだろう?」
「えっ?」
黒マントの男は英雄機『レツガイオー』の方へと歩み始めた。
観光客のおじさんが言う。
「おい、兄ちゃん!!何をするつもりだ!!!」
「レツガイオーを動かす。」
「何を言っているんだ、兄ちゃん!!、こんな100年近くも整備も何もされていない機体が動くわけがないだろう!それに動いたところでグラシャラボラスとのスペック差は――」
おじさんが大声で忠告する。
だがその声に向けてか、既にレツガイオーの近くまで歩み寄った黒マントの男は言う。
「あんたには聞こえないのか?こいつの叫びが、人を救うために生まれてきたのに目の前で泣く子供の一人すら救えない自分の無力さに泣き叫ぶこいつの叫びが!!」
「な、何を・・・」
言っているとおじさんは続けようとする・
「ああ、泣くな、レツガイオー、今、俺が!この俺が!!お前を闘えるようにしてやる!!!」
男は黒マントを投げる。
黒マントの下から銀色の服が現れる、いや、それは銀色の服なのではない。
その服には数多の工具が付いており、それが銀色の服だと錯覚させるのだ。
「さあ、レツガイオー、俺の技術(ワザ)で蘇れ!!」
男の腕が消える、いや、目に見えぬほどの速さで動いているのだ。
廃れたスプリングには新しいスプリングを、廃れたオイルには新しいオイルを!
超高速で機体が修理されていく、その間わずか20秒。
たったの20秒でこの男は全ての作業を終えたのだ。
そうして男はレツガイオーに乗り込んだ。
即座に起動モードに入り、レツガイオーは起動し、立ち上がった。
「あ、あの兄ちゃんカスタマーやったんかいな。」
おじさんが言う。
カスタマー、機械人形の整備士でも常軌を逸した能力を持つもののことだ。
あのような早業が出来るのはカスタマーしかいないだろう。
その様を見たグラシャラボラスの中にいる盗賊は笑った。
「アハハハハハ、いやぁー凄いもん見せてもらいましたわ、動く英雄機だって?凄いはこれは本当に凄いわ、とんでもない高値で売れるのは間違いないわ。
あんさん、その機体、私らに譲ってもらえんだろか?命の保障に加え、お金もそれなりに出してもええで?」
男はその言葉に対して告げる。
「そんな事はどうでもいい、お前はこの機体の前で子供を泣かした…。そのことでこいつはおまえを許せない・・・だそうだ。だから俺はこいつの望みを叶えてやろうと思う。」
「もしかしてそのオンボロで私のグラシャラボラスを倒そうとしてはるん?
アハハ、無理や、絶対に無理や、たとえあんさんがどんだけすんごいカスタマーでもな機体にはどうしても変えられん性能の差ってもんがあるんや。
性能差は軽く見積もっても20倍、そんな機体で私に勝てるわけあらへんやろ、アハハハハハ!」
グラシャラボラスはその高性能さを生かした、高速移動でレツガイオーに接近してくる。
その速さはとても旧型のレツガイオーが反応できる速さではなかった。
「ぐっ・・・。」
機体に大きな衝撃が走る。
グラシャラボラスに蹴飛ばされたのだろう。
「ほらな?戦いにすらなりまへん。大人しく機体渡してくれーな、出来ればその機体傷つけたくないんや、値も下がるなぁ。」
だが、そんな事はどうでもいいかというようにレツガイオーは立ち上がる。
「まだ、闘う気なんかーもう、ええわ、あんた聞き分けわるそうやし、その機体ごと無理矢理もっていく事にするわ。」
そうして再びグラシャラボラスはレツガイオーを捕縛するために再び襲いかかる。
だが、その時、グラシャラボラスは何かの壁のようなものに弾き飛ばされた。
「うう、なんだいこれは!!」
突然の事に盗賊が叫ぶ・・・。
再び、グラシャラボラスを動かそうとするがまた何かの壁に弾き飛ばされた。
「確かに性能差はあるな…だがな、この機体には二つ名があることを知っているか?」
「二つ名ぁ?」
「この機体はな「世界の終わり」と呼ばれた厄災の時に立ち向かうとき、人から旋風のレツガイオーと呼ばれていた…。」
「それがなやいうねん。」
「この機体・・・いや、英雄機と呼ばれる機体にはなロストテクノロジーが使われているという事さ!!」
「ロストテクノロジーだと?」
「ああ、この機体に積まれたロストテクノロジーが可能とするのは・・・・・・。」
盗賊の耳に音が聞こえる、ゴォー、ゴォーとした音が・・・。
「こ、これは・・・」
「そうだ、この機体は確かに現行にいるような機体と比べれると性能面じゃ遥かに劣っている・・・だがなこの機体は風を操ることが出来るんだ。」
「そんな事が機械に!!」
「できるさ、知ってるだろう?『世界の終わり』は天災だったんだ。その天災に立ち向かうのに必要だったのは戦う為の力じゃあない・・・。」
レツガイオーは腕に風を集める、少しずつ風が腕のところで渦を巻き始めていく…。
「その天災から守るための力だった、その為に研究されたものの一つが天候を操る技術だった…そうこの機体のように風を操るような技術をな!!」
「なあにぃ!!」
レツガイオーはグラシャラボラスに向けて拳を突き出す。
風は竜巻となってグラシャラボラスに向けて向かう。
「きぃぃぃぃぃぃ!!」
グラシャラボラスを逃がすために盗賊は必死に機体を操作するが、風の壁にはじかれ身動きがとれない。
竜巻にレツガイオーが突っ込む、そうして竜巻を纏ったレツガイオーはグラシャラボラスに向けて突撃する。
「これで終わりだ!!トルネードォォォォォォォォォブレイカァァァァァァー!!!!!」
「ば、馬鹿なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
竜巻となったレツガイオーはグラシャラボラスの胴体を貫いた。
そうしてレツガイオーは竜巻を断ち、着地する。
「どうだい?これがあんたが馬鹿にしたオンボロの力だ…。」
そしてグラシャラボラスは爆発した。
観光客の子供はそうして立つレツガイオーの姿を見る。
コックピットの部分から男がレツガイオーから降りてきた。
そうして子供はいう。
「助けてくれてありがとう、お兄ちゃん!」
男は笑う…。
「いや、お礼はこいつにいってくれ・・・。」
男はレツガイオーを指差した。
「うん、ありがとう!レツガイオー!」
錯覚なのかもしれない・・・だが
子供の目にはレツガイオーがその言葉に対して笑ったように見えた。
アルティメットカスタマー 「第一話 英雄機『レツガイオー』」 完
運命の悪戯が男に振り捧ぐ
それは誘惑と言う名の美酒か?
次回 アルティメットカスタマー第二話「英雄機『エンレツオー』」
男はその歪みをカスタムする!!
最終更新:2010年01月14日 22:04