「あら? インテリさん、何を読んでらっしゃいますの?」
「普通の雑誌ですよ。ファッション誌です」
「まあ、最近髪を伸ばすようになってから、随分おしゃれに…って、これは男性向けではありませんこと?」
「はい、ちょっとナルシーさんから拝借したんです。髪を伸ばすきっかけを作ってくださったのも
ナルシーさんですし、お礼をし」
「みなまで言わなくても結構ですわ! そうですわね! おしゃれの師匠たるナルシーさんを見習って
おしゃれの勉強をなさってるなんて、殊勝な心がけですわ! そうやって自分を更に磨く姿…素敵ですわよ!」
「あ、そうじゃなくて、ナルシーさんへのお礼の品を」
「わかります! わかりますわ! 素敵な男性への贈り物! インテリさんは今まさしく乙女の階段を
上りつつある…ああ、わたくしには見えますわ! 素敵な恋愛にどんどん美しくなるインテリさんの姿が!」
「ちょっ、い、いつからそんなことに」
「隠すことも恥じることもありませんわ! 恋する乙女は美しいもの…! そう、わたくしも…
愛しのベテラン様のことを思うと胸が張り裂けそうでたまりませんわ…そんな苦しみを経て、
人は成長していくのですわね…インテリさん! わたくし、あなたを応援してますわ!」
「へっ!? お、応援ですか」
「お相手はあの百戦錬磨の古強者…手強いですわよ! 頑張ってくださいましね!(がしっ!」
「はっ!? は、はいっ!?」
「わたくしも負けていられませんわ! わたくしもベテラン様の嗜好調査をしなければいけませんわね!
それでは行ってまいりますわーーーっ!」
「は、はい、ご無事でー! …って、別にそういうつもりじゃなかったんですけど…。
……。
………そ、そうなのかなあ(ぽっ」
(コンコン)
「失礼しますわ」
「ん…お、お嬢か。一体どうした」
「BRの技術教本などを探してますの。ベテラン様でしたら良い本をお持ちでないかと思いまして
お尋ねしたんですけれど…お邪魔でしたかしら?」
「いや、そういうことなら構わん。この棚にいい本が並んでいる、好きなものを選んでいくといい」
「ありがとうございます…あら、この本、だいぶ使い込まれていますわね」
「俺が書き込んだ跡もあるだろうから、少々見づらいかもしれんぞ」
「とんでもありませんわ! 直接ご教授いただくようで光栄…あら、こちらの本は…」
「ん?」
「…これは全部ベテラン様が書いてらっしゃいますの…?」
「ブーーーーーーッ!」
「こんなにたくさん…どれもこれも素敵な詩ですわ…(ぽっ」
「読むな! それは読むな!(ばっ!」
「あっ!? そ、そんな、残念ですわ…それではこちらの」
「それも駄目だ!(ばっ!」
「ああっ、そんな…わたくしはもっとベテラン様のことが知りたくてたまりませんのよ!」
「駄目なものは駄目だ! これは俺のトップシークレットだ!」
「ではわたくしのトップシークレットも公開しますわ!(ば(がしっ」
「って脱ぐな! 落ち着け! まず落ち着け! お前は教本を探しに来たんだろう!?」
「ああ…構いませんわベテラン様! あなたの秘密を知ってしまったわたくしの心は既にあなた様のもの!
ほら、そこに丁度良くベッドが!」
「丁度良く置いてあるわけじゃない!」
「あの詩篇のように! わたくしの体にも愛の言葉を刻み込んでくださいませーーーーっ!!」
「だから落ち着けぇぇぇぇぇぇ!」
* * *
「…?」
「どうしたナルシー」
「…いえ、別に」
「ほう…下駄箱に恋文か、なかなか古風な人物がいたものだな」
「ええ、ですが他言無用ですよクールさん?」
「無論だ。野暮は好かん」
「ベテラン様ーーーー! 今日もあなたのお部屋に」
「俺は個人演習に行ってくる! 留守だ! 常に留守だ!」
「まあ…世の中には対極の人間が存在するものだな」
「どこかでバランスが取れているのかもしれませんねえ。フフフ」
最終更新:2009年12月27日 18:44