もっと自重しないお嬢

  * とある宿舎の稽古場にて *

「熱血、準備できたか?」
「おう! いくぞベテランさん! でやあああ!」
「むんっ!」
「う、うわっ!?」

 ドシーン!

「い、いててて…な、何が起こったんだ?」
「これでも加減したつもりなんだが…熱血、大丈夫か?」
「熱血お兄ちゃん大丈夫ー?」
「だ、大丈夫だけど…物凄く軽い力でぶん投げられたような…駄目だ、わけわかんねえ」
「力任せにぶん投げれば良いものじゃない。相手の力を利用して小さな力で相手を制する、
 それが柔道だって俺は教えられたもんだ。間合いの取り方、相手が突っ込んでくるタイミング、
 いわゆる『間合い』がわかれば、ブラスト相手だろうとやることは同じだな」
「へ~。あたしも練習したら、熱血お兄ちゃんを投げ飛ばせるかな?」
「おいおい、いくらなんでも少女にゃ無理だろう」
「そんなことはない。少女だって練習すれば、お前や俺も簡単に投げ飛ばすようになるぞ」
「ほんと? ほんと!?」
「ああ。俺が教えてやる」
「わーい! それじゃあたしも練習するー!! ベテランさん相手してー!!」
「あーあ、ベテランさん少女をその気にさせちゃったよ。責任とれるのか?」
「フフッ、いいさ。やる気になったんだ、お前も少女の成長が楽しみだと思わないか」
「…さか…」
「ん?」
「まさか…そんなっ!」
「あれ~?」
「ベテラン様が、少女の責任を取るですってっ!」
「また面倒なタイミングで…そうじゃなくてだな、俺は柔道の」
「みなまで言わなくても結構ですわ! そうですわね! いくらベテラン様の気を引こうとしても、
 まったくなびいてくださらなかったのは、少女さんっ! 愛くるしい彼女の存在が原因でしたのね!」
「何言ってんだお嬢。ベテランさんは少女の先生になるってだけで、せきに」
「しかも3人でお揃いの衣装まで! 熱血さん! あなた少女の保護者でありながら、ベテラン様まで
 巻き込むだなんてなんというふしだらさ加減ですの! いいえそれどころか不貞にも程がありますわ!」
「保護者…ってか、それふしだらって言わねえよ! 人の話を聞」
「ああもう少女さん! あなたいつまでベテラン様にしがみついてらっしゃるの! その役目は
 わたくしの役目でしてよ! あなたには熱血さんがいらっしゃるでしょう!!」
「ふえ? あたしジュードーの練習してるんだよ? あ、お嬢お姉ちゃんもする?」
「…そ、そんな、少女さんが、ベテラン様と一緒に、する、だなんて…少女さんも大胆極まりないですわ!(もじもじ」
「何を勘違いしてるのかわからんが、柔道の練習だぞ? お嬢、聞いてるか?」
「お嬢お姉ちゃんも一緒に練習しよーー!」

「というわけで、少女さんに言われるままに着替えましたけれど…随分とごわごわしますわね、この夜着」
「夜着じゃねえよ、柔道着だ」
「お嬢お姉ちゃん、ブジュツ習ってるって聞いたけどほんと?」
「え? ええ、たしなむ程度に」
「(それであの馬鹿力が…)とりあえず熱血、さっき教えた基礎でお嬢と勝負してみろ。お嬢の力が見たい」
「なんだお嬢は経験者か。それじゃ、遠慮なくいかせて貰うぜ! おりゃあああ!」
「き、きゃあっ!(正拳突き」
「あゴっ!?」
「いやあああ!(唐竹割り」
「みけンっ!?」
「ちぇすとおおおお!(後ろ回し蹴り」
「えんズィっ!?(どさああっ」
「ね、熱血!! おい、しっかりしろ!」
「すっごーい、お嬢お姉ちゃん、強ーーい!」
「…ああ、びっくりしましたわ。熱血さんったらいきなり抱きつこうとするんですもの」
「馬鹿、柔道ってのは投げ技や寝技が主体であって、打撃は反則になるんだぞ!」
「あら、そうなんですの!? ああ、わたくしとしたことが…うっかりしていましたわ!
 そういうことは早く仰っていただかないと! 早速! いいえ今すぐに!
 寝技の練習を始めさせていただきますわベテラン様ーーっ!(ばっ!」
「のぅおわっ!(がしっ!) うっかりどころじゃないだろう! それより熱血だ! 熱血を医務室に連れ」
「少女さん、熱血さんを医務室に連れて行ってくださいませんこと?」
「わかったよー♪(ひょいっ」
「お、おい少女! なんでお前が熱血を軽々と背負っていけるんだ!?」
「インテリおねーちゃーーん、熱血お兄ちゃんみてくれるーーー?(たったったっ」
「少女! 少女ー!! どうしてそんな軽やかな足取りなんだ! 少女ーーーー!!」
「………」
「………」
「…ふたりっきり、ですわね…(ぽっ」
「ノォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」

  * * *

「熱血さん、体の具合は大丈夫ですか?」
「おお、だいぶいいぞ。インテリも少女も昨日はありがとな」
「えへへー」
「このくらいはお安い御用ですよ」
「まあ、それよりも、だ…俺のギプスよりすごい人がいるんだが…」
「ベテランさん、その服重そうだよー?」
「全身ギプスみたいですよね…」
「俺にはまだまだ力が足りないことがよく理解できた…やはり日ごろからこうして鍛えなければならん」
「ベテラン様ーーーーっ! わたくしにまたお稽古を」
「お、俺はティアダウナーの素振りをしてくる! 誰も近寄るなよ!」
「…それって練習になるのか…?」
「お兄ちゃん、重要なのはマアイだよ、マアイ」
「そうか! 少女はさすがだな!」
「えへへー」
「(…少女さんの力は間合いとか関係ないと思うんですが…)」


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最終更新:2010年01月24日 23:15
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