お嬢のドックタグ

私はずっと1人だった。
友達も恋人もいない、両親でさえ滅多に会えなかった。
学校に通うことは許されず、専属の家庭教師がつき、
グループの後継者になるための知識を詰め込まれた。
何もかも全て決められた生活。
耐えられなかった。
だから、私は家を出た。
自分の力で生きていくために・・・


そうして私は傭兵の道を選び、ここに来た。
もちろん傭兵を選んだのには考えがあった。
自分の力で生きていくことができるし、家が介入してくることもないだろう。
娘が傭兵になる。そんなことを何年も会ってない両親が想像できるはずはない。
幸いにも審査で落とされることはなく、すぐに部隊に配属された。
自分の力を示す。心に誓った。


しかし、心が折れるのは恐ろしいほど早かった。
初めての戦い、私は何をしていいかもわからずにいた。
自分の力で、1人で生きていくと決めていたのに、何もできない。
何度背後をとられただろう、何度助けてもらっただろう。
1人では何もできないと痛感させられた。


どうにか戦いには勝利して帰還することができた。
「大丈夫か!?」
隊長が駆け寄ってくる
「ええ・・・あ・・・っ」
安っぽいプライドが邪魔をする。「ありがとう」の一言が言えない。
私はどんな顔で隊長を見ればいいのかわからない。
隊長は私をどう思っているのだろう。
俯いていると首に何か掛けられた。
隊長の・・・ドッグタグ?
「何故私にこれを?」
「まぁお守りとして持っておけ」
それから隊長は淡々と昔のことを話してくれた。
初めての出撃。勝った時、負けた時。仲間との出会い、別れ。
すべての話を夢中になって聞いていた。
「話が長くなってしまったな。何が言いたいかというとだな、お前は決して1人じゃない。
 俺がいる、隊員たちがいる。皆を頼れ、皆お前の仲間だ。一緒に戦っていこう」
「ありがとう・・・ございます」
言えた。自分の中で何かが変わったんだろう。


「へー、そんなことがあったんだ。そりゃあすぐ上達するね」
「隊長には感謝していますわ」
「そうそう、感謝しないとね。でも、さすが隊長だなぁ
 アイツにもそれくらいの気遣いがあればなぁ・・・」
「アイツ?誰のことですの?」
「い、いやこっちの話!じゃ、私もう寝るから!おやすみ!」
「?・・・おやすみなさい」

私はずっと1人だった。
でも、今は違う。
人と接することの温かさを知った。
友達と呼べる人ができた。想いは伝えていないけど、ずっと一緒にいたいと思う人もいる。
1人では何もできない。
でも、一緒にいればなんでもできる気がする。

もう1人にはなりたくない。
また1人になったら私はきっと・・・。

隊長から貰ったドッグタグを握り締め、改めて誓う。
この繋がりを大切にしたい。絶対に・・・失いたくない。


私が、私であるために・・・


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最終更新:2010年02月14日 17:15
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