熱血「……………………………」(←床に正座して、脂汗ダラダラ)
お嬢「……………………………」(←そんな熱血の目の前に立ち腕を組み無言のまま冷たい目で見下ろしている)
熱血「あ、あのよ……」
お嬢「お黙りなさい」
熱血「ハイ」
まじめ「え、えーと、その……」(←そんな二人を、おろおろしながら見比べている)
少年「だから、あの……」(←同上)
熱血「……………………………」
お嬢「……………………………」
まじめ「その、熱血も反省してるみたいだし、そろそろいいんじゃ……」
お嬢「まじめさんは黙っていてくださいな」
まじめ「ハイ」
少年「あの、僕も同罪なんじゃ……」
お嬢「あら、少年さんはお優しいですね。いつまでもその純粋な心を忘れないでくださいな」
少年「あ、いえ、その、だったら……」
お嬢「その清い心を汚染しようとする汚物は、こちらでキッチリ処理いたしますから」(やけに迫力のある笑顔)
少年「ハイ」
熱血「な、なぁお嬢……」
お嬢「お黙りなさい」
熱血「ハイ」
ベテラン「……一体これは何の騒ぎだ?」
クール「……正直、俺の口から説明するのも避けたいバカ騒ぎなのですが……
事の発端は、『あのバカが秘蔵ムービーを少年に貸そうとして、まじめに見つかった』です」
ベテラン「……その秘蔵ムービーと言うのは……アレか?」
クール「ええ、R指定の付くアレです」
ベテラン「………………………まぁそれなら熱血にはいい薬だろうが……そのまじめも困惑してるのは何故だ?」
クール「ええ、最初はまじめが説教していたのですが、そこにお嬢が通りかかって事の次第を知ると、無言で激昂しまして」
お嬢「……まったく、こうも立ち続けでは、さすがに疲れてきますわね。普段から節制して保っている私の脚が太くなって
しまいましたらどうなさるおつもりです?」
熱血「だったら、そろそろ」
お嬢「お黙りなさい」
熱血「ハイ」
お嬢「まったく、なんですの? 『乳奴素子 ~占拠の報酬~』でしたか? このいかにも品性下劣そうなムービーは?
こんなものをご覧になるなんて、品性を疑いますわ」
熱血「いや、男なら仕方が」
お嬢「お黙りなさい」
熱血「ハイ」
お嬢「なんですか、この素子さんと仰る方は、我々が報酬として受け取るニュード素子とかけてあると?
まったく、知能と常識の足りない方が考えそうなことです」
熱血「いや俺が考えたわけじゃ」
お嬢「お黙りなさい」
熱血「ハイ」
お嬢「それでこの素子さんが、占拠の報酬として配布されると? なんですか、熱血さんがいつも我々の先陣を切って
飛び出していくのはその方を狙ってのことだと?」
熱血「いや別にそんなわ」
お嬢「お黙りなさい」
熱血「ハイ」
お嬢「それで熱血さんが報酬ボックスを開ける際、『素子さん入ってないかなー』と下劣な期待を抱きながら選ぶわけですのね?」
熱血「だからそんなわけ」
お嬢「お黙りなさい」
熱血「ハイ」
お嬢「いえ? 熱血さんが品性下劣で恥知らずな破廉恥漢であることは存じ上げていましたが? それならそれで誰の目にも
留まらない隅の方で御独りひっそりと生きていくならまだしも、それを少年さんに押し付けるとは、どういう了見なので?」
熱血「いや少年のヤツもそろそ」
お嬢「お黙りなさい」
熱血「ハイ」
お嬢「熱血さんが触るのも汚らわしい汚物であることは仕方ないことですが、それならばせめて他の方に迷惑がかからないよう
感染は控えるのがこの社会の片隅に生存を許された汚物の最低限の礼儀であると存じますが、いかがでしょう?」
熱血「いやそれさすがにヒドくね?」
お嬢「お黙りなさい」
熱血「ハイ」
まじめ「(おろおろ)」
少年「(おろおろ)」
ベテラン「俺もまぁ……男として気持ちはわからんでもないから、見ていて辛くなってくるな」
クール「……ノーコメントで」
ベテラン「で、これは一体いつからやってるんだ?」
ナルシー「私がシミュレーターに入る前からですから、かれこれ三時間になりますか」
ベテラン「さん……!」
クール「戻ったか、ナルシー」
ナルシー「ええ。私もさすがに驚きましたよ。訓練を終えて通りかかってみたら、まだやってるんですから」
ベテラン「さすがにそろそろ止めた方がいいか?」
クール「しかし、事が事です。我々男性が止めに入ったところで、火に油を注ぐだけかと」
ベテラン「確かに……いや待て? まじめも止めてるが、効果はないようだぞ?」
ナルシー「ええ、今回だけはまじめさんでは分が悪い。彼女では逆効果ですし、仮にインテリさんを呼んで来ても同様でしょう」
クール「かといって、こんなことに少女を関わらせるわけには……」
ナルシー「ですからちょっと熱血さんのお部屋にお邪魔して、秘策を拝借してきたところです」(手に持った紙袋を掲げる)
ベテラン「秘策?」
クール「……どうやってヤツの部屋のロックを解除したかは聞くまい」
ナルシー「熱血さん、こちらでしたか。……おや、取り込み中で?」
熱血「ナ、ナルシー助け」
お嬢「お黙りなさい」
熱血「ハイ」
ナルシー「うーん、熱血さんにお返しするものがあったのですが……仕方ないですね、後にしましょう」
お嬢「(ナルシーの持つ紙袋に素早く視線を走らせる)」
熱血「え? 俺ナルシーに何か」
お嬢「お黙りなさい」
熱血「ハイ」
お嬢「ナルシーさん、ちょっとお待ちになって」
ナルシー「はい? なんでしょうか?」
お嬢「その、熱血さんにお返しするもの、というのは……?」
ナルシー「これですか? 熱血さんの秘蔵のコレクションと言うお話でしたが、ちょっと私とは趣味が合わなかったもので」
お嬢「……ちょっと改めさせてもらってよろしいですか?」
ナルシー「これをですか? うーん、ちょっと女性にお見せするのは躊躇する類のモノなのですが……」
お嬢「(目がキラリと光る、まさに獲物を見定めた狩人の目)そこ何とか、お見せいただけませんか?」
ナルシー「うーん……熱血さんが構わないのでしたら」
お嬢「それならば問題ありませんわ。お貸しください」
熱血「え? いや俺の意」
お嬢「お黙りなさい」
熱血「ハイ」
ナルシー「でしたら……どうぞ」
お嬢「こ、これは……!」
熱血「ううう……ひどい目に会った」
ナルシー「お疲れ様でした」
クール「自業自得だ……と言いたいところだが、今回ばかりは同情する」
少年「すいません熱血さん、僕が見つかったから……」
ベテラン「悪いのは熱血だ、気にしなくていい。だが、まぁ……災難だったな、熱血」
熱血「まったくッス。秘蔵コレクションは二本も没収されるし……しかしお嬢のヤツ、なんで急に許してくれたんだ?
てっきり二枚目が見つけられて更に大激怒の展開かと思ってビビってたんだが」
ナルシー「まぁそれはいいじゃありませんか。それよりもお疲れでしょう? 今日はもうお休みになるといいでしょう」
熱血「そうだな、今日はそうさせてもらうぜ。サンキューナルシー、助かったぜ」(ふらふらと去っていく)
ベテラン「で? 結局お嬢は何をあんなに怒って、それを何で急に許したんだ?」
ナルシー「それはですね、今回はおそらく出演されてる女優さんが悪かったのですよ」
クール「女優?」
ナルシー「ええ、あの熱血さんのお気に入りのムービーの女優さんは、タイトルの通り日系人で、黒髪だったでしょう?」
ベテラン「……なるほど、そういうことか」
少年「え? え?」
クール「まじめでは逆効果なわけだ」
少年「えーと……?」
ナルシー「しかも、胸も豊かな方でしたからね。インテリさんだったとしても同じだったでしょう。
対して私が熱血さんの部屋から持ち出したもう一方のお気に入りの『ベッドの上のコア凸野郎シリーズ・13
~今日のマップはブロンドモデル~』ですと西洋系の顔立ちの金髪の女性で、ついでに言うならばモデル体型で
胸もややスレンダーだったわけですよ」
ベテラン「まったく、なんというか……」
少年「えーと、その、よく判らないんですけど……?」
クール「お前はまだ知らなくていい」
~次の日~
熱血「あー、昨日は助かったって気持ちで一杯だったが……落ち着いてみると、没収されたお宝が惜しくなってきたな」
クール「贅沢をいうもんじゃない」
ベテラン「また説教タイムが再開しても知らんぞ?」
熱血「うへ、それは勘弁! しかしお嬢、没収したムービーどうするんかな」
ベテラン「保管してるなら、ほとぼりが冷めた頃にでも預かると言って回収してやってもいいが……」
クール「あの激昂具合なら、狙撃の練習用の的にでもするんじゃないか?」
熱血「うー、貴重なデータなんだがなぁ……
! なぁ、ああやって怒って見せて、実は興味津々でこっそり見てるってのはあるかな?」
クール「お前じゃあるまいし」
ナルシー「・・・…いえ、ひょっとしたらありうるかもしれませんね?」
ベテラン「ナルシー?」
ナルシー「いえ、やましい気持ちからという意味ではありませんよ?」
熱血「ん? どういうことだ?」
ナルシー「ええ、なんと言いますか、言わば熱血さんの身辺調査の一環としての興味ならあるかもしれないと、ふと思いまして」
クール「……ああ」
熱血「え? なに? どういうこと?」
ベテラン「判らんなら気にしなくていい」
ナルシー「ま、そんな考え方も出来る、と言うだけのお話ですけどね。どっちにしろ、データはすり替えたおきましたし」
クール「すり替えた?」
ナルシー「ええ、せっかくの熱血さんのコレクションですしね。私が拝借した方なら、パッケージは偽装のために必要でしたが、
中身は無事ですよ。さすがに複製する時間はなかったのですが、手近なデータにすりかえておいたのです」
熱血「まじか! さすがナルシー、やることにスキがねぇな!!」
ナルシー「お褒めに預かり光栄です。さ、元データはこちらです。今度は見つからないようにしてくださいね」
熱血「うひょーーー!! サンキューナルシー!」
ナルシー「いえいえ」
クール「ちなみに、すり替えた中身ってなんだったんだ?」
ナルシー「私自身が厳選した私の艶姿ムービー集ですが」
ベテラン「……夢に見そうだな」
インテリ「あら、お嬢さんは今日はお休みですか?」
まじめ「うん、なんか気分悪いって」
少女「さっきお部屋のぞいたら、なんかうなされてたよー?」
少年「そうなんですか? 心配ですね」
一同「……………………」
一同「……まさかな?」
日付はガン無視の俺、参上
ほんとナルシーさん、狂言回しにもデウスエクスマキナにもオチにも使い易すぎる
最終更新:2010年02月14日 17:39