「スンスーン♪」
いつも通り、俺は出撃の準備をする。と言っても、服を着替えて準備運動をするぐらいしかすることは無いんだがな。
熱血熱血とよく言われるから、服はタンクトップ、髪はウルフ、おまけにピアスなんかして、ワイルドさをアピールしてみた。
いつもと違う俺に、仲間から痛い視線を向けられる。それだけならいいのだが、あぁ、真面目よ。お前までそんな目を……。
しかも、今回はEUSTだ。GRFの方がオペ子が好みなんだがなぁ……。トラザはEUSTのが攻めやすいけど。
まぁいい。ブラスト用意が出来たようだ。さっそく乗り込もう。
「おい、もうすぐ出撃の時間だぞ。早く乗れ」
GO郎がうるさい。そもそもお前、仕事してんのか? 指差してるだけじゃないか……。
文句を言いつつも、俺はブラストに乗り込む。
俺の機体は、フルガチムチⅢという、防御にのみ特化した重量型だ。俺の性格には合わないんだがな。
「ん? 何かカタパルトがおかしい気がするが……まぁいいか。時間だ」
GO郎が何か呟いていたが、その声はオペ子のアナウンスに掻き消された。……よし、行くか。
「ブラスト起動確認、行くぞ!」
勢い良くカタパルトが射出され、俺のブラストが戦場へと――
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
射出されたのは上半身だけで、下半身はカタパルトに取り残された。
「GO郎てめぇぇぇぇぇ!!」
どうやら、腰にあるカタパルトとの結合部分が離れず、この重みで上半身だけ飛び出てしまったようだ。
ブースターが無くなり、制御の出来なくなった俺の機体は、無残にも頭からコアへと落下した。
……しかし、思ったよりダメージは無い。ガチムチで本当に良かった……。
「どうすっかな……」
簡単に言うと、テケテケ状態になってしまった。味方はさっさとカタパルトで飛んでってしまいやがったし、この場から動く方法が無い。
唯一の救いは、支援で来てたってことだ。もし重火力で来ていたら、頭から落ちたんだから、きっとコロ助が地面に刺さり、もっと酷いことになっていただろう。
「とにかく動かないとな……」
このままコアニートになっても、CPが著しく低下するだけだ。
しかし、何も行動出来ずに、二分程経ってしまった。コア凸野郎が来てくれれば動かなくても稼げるんだが……。
そう思った時、聞き覚えのある音がした。この風を切る音、大量噴出される炎の音、間違いない。
――ACだ。
つまり、コア凸野郎がおいでなすった。
「ちょ、どうすんだよ……」
とりあえず、迎撃するしか……。ワイスマしか無いんだが……。
自動砲台をくぐり抜け、現れたその機体は――
「何……だと……?」
まさかの、フルクーガーⅠだった。この期に及んで、まだ初期装備。
「カッコつけやがって……!」
俺はワイスマを連射するが、この距離だ。全く当たらない。それ以前に、コア凸野郎が俺との間にコアを挟んだ位置で攻撃をしているため、コアが邪魔で俺の弾丸など当たる筈が無い。
「援護してくれ!」
…………。
「ここを死守するぞ!」
…………何故だ。何故仲間が来ない!
しかし、その疑問は直ぐに解決する。また、聞き覚えのある音がしたからだ。この特徴的な音はまさに――
「プラント独占だと……?」
そう、味方がプラントを独占していた。どうりで、何もしてないのにポイントが入る訳だ。
これなら、敵コアを攻める方が手っ取り早いしな……。
「しかし、これは……」
圧倒的に、自軍のコアの方が耐久値が少ない。味方は何を手こずってるんだ……。
そうなると、やはり俺がこいつを倒すしかない。
「しかし……どうすれば……」
俺の武器は、ワイスマ、マインS、ファルコン、普通のリペアと、至って標準的なものだ。
これで何とか倒さねば……。
「閃いたぞ……!」
俺は目の前にマインを仕掛け、ワイスマで起爆する。その爆風で、少し横に移動し、受けたダメージはリペアで回復。これの繰り返しで、何とかコア凸野郎の姿が見える位置まで来た。向こうはまだ気付いていない。
「くっ……!」
ワイスマを撃つも、弾は届かない。近くに移動しようにも、もうマインが無い。もっと長距離のものがあれば……。
「ん……? 長距離……?」
……そうだ、俺には長距離索敵で知られる、ファルコンがあるではないか。元々攻撃用ではないが、今は関係無い。
俺は腕の力で体を傾け、ファルコンをコア凸野郎の首元へと構える。
「喰らえぇぇぇ!!」
そして、懇親の一撃を解き放った。
「ぶっ飛べぇぇぇぇぇ!!」
ファルコンは、真っ直ぐにコア凸野郎へと飛んで行き、首元に重い一撃を喰らわせた。鈍い音がし、コア凸野郎の首が有り得ない方向へと回る。体中が痙攣を起こし、遂には、首が飛んだ。
「や、やった……!」
ファルコンは、そのまま彼方へと消えて行った。
「倒した……ぞ?」
コアの前に横たわっていた首無しクーガーだが、何と、そのまま立ち上がりやがった。
そして、自棄糞にサーペントを乱射する。
「何て執念だ……!」
俺は再びファルコンを喰らわせようと思ったが、そういえば、最初に何となくポイント稼ぎで二発使っていたのを忘れていた。つまり、今の俺には当たらないワイスマをリペアしか無い。
「ちっ……!」
俺も自棄糞気味にワイスマを乱射する。が、しかし、逆にその行為が、首無しクーガーに俺の位置を知らせてしまった。
クーガーは、魔剣を構えてACで真っ直ぐこっちに向かって来る。
「う、うわぁぁぁぁぁ!!」
ガキン
鈍い音と共に、俺の機体は吹っ飛び、大破した。本来なら、魔剣ぐらい耐えるのだが、今回は背丈が低くなっていたため、魔剣は頭に直撃した。つまり、魔剣がHSだ。耐えられる訳が無い。
「あ……あぁ……」
消え行く意識の中、最後に、首無しクーガーからこう聞こえた。
「……また会おう」
続く...
by LockedAsia@B1
最終更新:2010年04月25日 22:09