スイッチを順次入れていく。暗いコクピットが段々と光に彩られていく。
変わらない。毎日聞いているこの起動音。変わらない。ずっと。
クーガータイプ。支給された機体から、胴と足をⅡ型に換装しただけの、俺の愛機。
よく笑われる。今更クーガータイプなんて、と。ツェーブラやエンフォーサーの方が、と。
知った事か。そう思う。俺が信じるのは、この機体だから
シュライク、ヘビーガードが目の前にいた。合流した友軍との協議。そこに、朱色。
咄嗟に下がった。何かに急かされた様に。瞬間後、爆炎。
気付くのが遅れて、シュライクもヘビーガードも消し飛んだ。二回三回と転がり、傷だらけになりながらも、クーガーの装甲は俺を守ってくれた。
所詮そんなもの。性能がどうとかなんて、たった一瞬の判断の差で消える。ちょっとした運の違いで消える。
そのまま俺は逃げた。ヘビーガードは置き去りに、追いついて来たシュライクを一機ずつ返り討ちにし、それで、生き残った。
運が良かった。それだけだったのかもしれないが、それを経験した俺が、クーガー万歳。そう思い込むのを、誰も止める事は出来ない。
クーガー?シュライク?ヘビーガード?ツェーブラ?エンフォーサー?E.D.G.?ケーファー?知った事か。俺はこれから敵を撃つ。
所詮は工業製品。撃てば壊せる。撃たれれば壊れる。誰も逃げる事が出来ないこのルールと真向から戦う為に、俺は俺の信じたものを使う。
それが正しかったことを証明するのは、今、俺が生きている事。その事実一つで、充分。
目の前のハッチが開いていく。広がる、青い空。その下には、鉄臭い戦場。
メインカメラを左右に振る。右腕を上下左右に振る。いつも通り。何も問題はない。
「ブラスト起動確認。発進する!」
溢れる様な青に向かって、身を投げ出す。今はただ、自分と、この機体を信じて。
最終更新:2010年04月25日 22:28