男は、貼り付けられた写真を見ていた。
色褪せた写真の中ではボーダー達が、真新しいバトルスーツに身を包み笑みを浮かべている。
その写真には、所々に×印が記されていた。
「もう、何年になるのだろうな」
戦場に身を置いて、何年もの年が経つ。
新兵だった男はベテランとなり、今では若いボーダー達を指揮する小隊長。
同期入隊したボーダーは、もうこの世にはいない。
写真の×印は自分以外の仲間達に付けられている。
「…いかん、時間か」
時計を見れば、集合時間まであと数分といった所か。
男は通信用インカムを手にし、部屋を出る。
待機室には、小隊員達が何時でも出撃出来る様に待機していた。
「あ、隊長さんだ~」
常に縫いぐるみを持ち歩く少女が、待ち詫びたと言わんばかりに笑みを浮かべた。
「珍しいですね、私達より遅いのって」
小隊一真面目な女性が、にこりと微笑む。
「今日も援護よろしくな!」
強襲兵装使いの青年が、相変わらずタメ口で話し掛ける。
「…隊長に対してタメ口と言うのもどうかと思うがな」
青年の一言に、狙撃兵装使いの男が苦言をこぼす。
「まぁまぁ、本人がいいと言っているのですから良いのでは?」
自分の補佐を務める男が、彼をやんわりと収める。
「援護の仕方を教えて頂けないですか? 隊長みたいに、的確に援護したいので…」
少年が、部隊に貢献しようと自分にアドバイスを求める。
「隊長、私はどの兵装で出撃すれば良いですの?」
令嬢でありながら傭兵となった女が、何でも使いこなしてみせると言わんばかりに笑みを浮かべる。
「戦術を考えてみたんですけど、後で見てもらえます? 今回のはいい感じなんです」
自らの理論に基づいて戦術を作るのが得意な女性が、自信満々にファイルを渡す。
次々と自分に声を掛けてくるのに、男は苦笑いした。
彼が何か一言掛けようとした、その時。
出撃を告げるサイレンが鳴り響く。
「出撃だ! 行くぞ!」
『了解!』
その一言に、自分を除く全員が一斉に敬礼し、格納庫へと走る。
乗機のコクピットで、男は発進を待っていた。
発進管制が準備完了と通信してくる。
『1番機、GO!』
「…出撃する!」
必ず全員生きて帰還させる。
それが隊長としての、責任だ。
そう決意を秘め、男は眼下に見える戦場を見つめた。
自分の中のベテランはこんな感じだったんでちょっと文にしてみた。
最終更新:2009年12月13日 16:56