1-655-657

「まじめさん、リップクリームを貸してくださらないかしら?」
「え? あ、ごめんなさい、それはちょっと…」
「女性同士なんですから、ちょっとくらいは…」
「ごめんね、私、そういうのだめなの」
「まじめさんらしいですわね…わかりましたわ。無理を言ってごめんなさいな」
「おい、まじめ…ん、お嬢が先約だったか、邪魔をしたな」
「あらクールさん、構いませんわ。わたくしの御用は今しがた終わりましたの」
「そうか、悪いな」
「はい、これね」
「ん…じゃあ、後でな」
「…あら? まじめさん? 今、クールさんに渡したの、リップクリームではありませんこと?」
「えっ!? そ、そそそそんなことは…」
「そういうことでしたのね! まじめさんったら、愛しい殿方とそうやって逢瀬を愉しんでらっしゃるのね!」
「ちょ、ちょっ、声が大き」
「みなまで言わなくても結構ですわ! そうですわね! 一つのものを二人で分け合う! なんと素敵な! これこそが愛ですわ!
 きっとまじめさんの部屋には歯ブラシが2本おいてらっしゃるのね! さも未来も決まったも同然のように!」
「ひ、飛躍しすぎです!」
「ああ…わたくしも、わたくしもこの乾いた心と唇に潤いが欲しいですわ…!
 かくなる上は、愛しのベテラン様に癒していただかなければ! そう! まさしく善は急げ!
 まじめさん、あとはよろしくお願い致します! いざ、出撃ですわーーーっ!」」
「…あとはよろしくって、なにをよろしくすればいいのよ…」

「ん? 少年、リップクリームなんか使ってるのか?」
「はい、まじめさんに使ってみたらどうか、と言われたんです」
「なるほどな。ちょっと見せてくれるか」
「はい、どうぞ」

「…ふむ。まじめも気が利いたことをするな」
「熱血さんは必要ない、って言ってたんですが…ベテランさんも使わないんですか?」
「俺は使ったことがないな。だが、こういう身だしなみに気を遣うのもいいものだ。ありがとう、返すよ」
「はい。…あれ? お嬢さんどうしました?」
「…さか…」
「ん?」
「まさか…そんなっ!」
「はい?」
「ベテラン様がまさか少年とリップクリームを共有する仲だったなんてっ!」
「…はい?」
「待て。俺はこんなもの使ったことがな」
「みなまで言わなくても結構ですわ! そうですわね! いくらベテラン様の気を引こうとしても、
 まったくなびいてくださらなかったのは、少年君! あなたの存在が原因でしたのね!」
「な、なんでそうなるんですか! ちゃんと人の話を聞い」
「その唇ですの!? そのぷるぷるぴちぴちの、柔らかそうな唇が、ベテラン様を誘惑してますのね!?」
「お、おい、お嬢落ち着け!」
「かくなる上はそんな唇…こうして差し上げますわっ!! あむっ! じゅ、じゅるるるっ!」
「んむむっ!? むー、むーー!?」
「お嬢!? 少年に何をするっ!? お、おい!」
「んむー! んむううーー!(初めてがー! 僕の初めてがー!」
   (5分経過)
「お嬢! 少年の顔が真っ青だぞ! いい加減に…」
「ぢゅぱっ! …ふう、このくらいでよろしいかしら」
「少年!? 少年! しっかりしろ! おい!」
「はぁっ…忌々しいほどに柔らかくて、嫉妬するほどぷりぷりで気持ちいいだなんて…ベテラン様との
 間接キスをちょっと舐め取るだけのつもりが、堪能しすぎてしまいましたかしら? …さて、ベテラン様?」
「ぎくっ!?」

「わたくし、ご覧の通り唇が乾いておりますの。あなたの口付けでわたくしの心を潤してくださいませーっ!」
「ぬおわっ!?(がしっ) 乾いてるとか嘘だろ! それにそもそも俺には故郷に家族が」
「少年くんと仲睦まじくなさることができて、わたくしとできないはずがございませんわ!」
「だからそれはそもそも誤解だと」
「みなまで言わなくても結構ですわ! そうですわね! ベテラン様が少年となんて誤解に決まってますわね!
 そう! つまりわたくしが結ばれることこそ運命! さあ、ベテラン様、わたくしの熱いベーゼをいまこそ!」
「うおおおなんだこの力は! だ、誰か助けろーーーー!!」
「はいはい救護班インテリさん参上、少年くん回収しまーす」
「お、俺も助けろぉぉぉーー!!」
「もちろんですわ! 今! わたくしが! 少年の毒牙から救って差し上げますわ! んーー!」
「…た、た、助けてぇぇぇええ!」

  * * *

「ベテランさん、まだ出撃まで時間がありますし、メットは脱いだほうが…」
「傭兵たるものいつ如何なる時も備えを怠ってはならんものだ…」
「ベテラン様ーーーっ! 今日こそその唇をわたくしに」
「お、俺はAC慣性の練習に行ってくる!」
「それはもうできなくなりましたよ!?」
「とりあえず行かせてやれ…あんな必死なベテランさんは初めてだ」


+ タグ編集
  • タグ:
  • まじめ
  • お嬢
  • クール
  • ベテラン
  • 少年

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2009年12月13日 18:09
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。