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ビジネスプロセスモデリングを実施することによって、何がもたらされるのか。そのメリットについて述べます。先ほどAS-ISモデルとTO-BEモデルを紹介しましたが、それぞれにメリットが異なるため、順番に紹介します。
全ての検討や改善の土台となるのが、共通の現状認識なのですが、これが
現状のビジネスプロセスモデルを記述すると、ビジネスのパフォーマンスの適切な評価につながります。ビジネスのパフォーマンスである売上高や利益は、仕組みがブラックボックスでも測定可能ですが、結果としてうまく行ったかどうかを計る指標です。 より能動的にビジネスを進めていくときは、結果が出る前に、先手先手で対応を考えていく必要があるため、より先行的な指標の設定と評価が必要となります。メカニズムの把握は、そういった先行的な指標を測定するためのチェックポイントの特定に役立ちます。
次に、メカニズムを明らかにすることは、メカニズムの継続性を高めます。 例えば、とても高い品質の製品があって、それを支えるメカニズムがある人の門外不出の職人芸であったとしたら、その人が病気になってしまったら、その品質は再現不可能になります。これでは品質の高い製品を提供するというメカニズムの継続性は高いとは言えません。 わかりやすい例で言えば、伝統芸能と呼ばれるものの多くはそのために危機を迎えています。私たちが日頃享受している高品質のサービスも、取り替えの利かないブラックボックスによって実現されていることが多く、何かのきっかけでそれが失われると、それは二度と復元できないのです。 しかし、メカニズムが明らかになっていれば、誰かが病気になっても他の人がその代わりをすることができ、そうした危機を回避することができます。 最近、よくビジネスの継続性向上という言葉を聞きますが、ビジネスの継続性向上にも、そのメカニズムのホワイトボックス化が不可欠なのです。
三番目は、メカニズムの可搬性が高まるということです。メカニズムを把握していれば、それが動いている以外の場所で再構築することが容易になります。 例えば、メカニズムがマニュアルなどで明らかになっていれば、日本で実施しているビジネスを海外で実施したりすることが容易になります。 これまた最近話題になっている業務のオフショア化にも役立つわけです。
もう少し個人的な視点で考えたメリットもあります。自分が日常的にかかわる範囲だけではなく、その周辺のメカニズムをよく把握していると、その人はビジネスをスムースに進めることができます。そういった人は、段取り上手と呼ばれます。 素養のある人、日頃から意識し習練している人は、自然と、周辺のメカニズムに配慮した仕事の進め方をすることができますが、大抵の人はそうはいきません。 段取り上手になりたいと意識している人も、前後のメカニズムがよく分からないと、なかなか段取り上手になることはできません。このときに、ビジネスのメカニズムがホワイトボックス化されていると、そういった人の大きな助けになるでしょう。
最後に、ビジネスに何か問題があった場合の分析や対応が的確にできるようになるという点をお伝えします。 近年では、冷凍ギョーザに対する毒物混入が世間を騒がせましたが、製品に対する品質問題やクレームが発生したときに、メカニズムがホワイトボックス化されていると問題箇所の解析、特定と再発防止が非常にスムースに実施できるようになります。
記述中
まず、最も大きいのが、メカニズムを知れば、正しい改良を加えられるようになるということです。 この10年間でも間断なく冷蔵庫のメカニズムは改良され、進化を続け、様々な機能が付加され、電力消費はますます小さくなっています。これは、冷蔵庫のメカニズムを把握する人が、たゆまぬ改良を続けた結果です。 同様のことはビジネスについても言えます。ビジネスのメカニズムの改良は、画期的な新サービス/製品の開発や企業のM&Aほどの劇的なパフォーマンス向上を生み出さないかもしれませんが、その代わり成果を着実に得ることができ、累計すれば大きなメリットをもたらすことができます。これは、変化の激しい現代においても、もしくはおいてこそ、重要なビジネスのパフォーマンスの向上方法となるでしょう。 今までのシステムエンジニアとしての仕事の中で、私が何度も体験してきましたことですが、ある程度以上の詳細さでビジネスのメカニズムを明らかにすると、サービスの提供までのリードタイム、提供するためのコスト、サービスの品質などを向上させるための改善点が必ず見つかります。こういった基礎的なパフォーマンスの向上は、ビジネス自体のパフォーマンスである売上や利益の向上にも結びつきます。 もうちょっと踏み込んで議論すると、TOC(制約性理論)という考え方においては、ビジネスの一部分の局所的なパフォーマンスの改善は利益の向上に結びつくとは限らず、ボトルネックとなっているプロセスに重点的な改善を実施すべきだと言われています。このボトルネックの特定と改善のためには、ビジネスのメカニズムを把握し、そのパフォーマンスを把握するために最適な箇所に対するモニタリングを行うことが必要となります。ここでも、ビジネスのホワイトボックス化が有効に働きます。
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