5 ビジネスプロセスモデリングが進んでいない現状

私がシステムエンジニアの業界で働くようになって10年以上経ちます。 10年の間に、インターネットおよび携帯ネットワークの普及と活用については、大きな進化が見られました。しかし、ビジネスが誰にとってもブラックボックスであるという面には変化が見られないようです。 私は、業務のシステム化や業務分析の過程で様々なお客様とお話しましたが、その中で、ビジネスのメカニズムを、その全体の概要を大きなレベルで把握している人、自分の関連する仕事を詳細に把握している人にはお会いしたことがあります。しかし、全体をある程度詳細に把握している人、となると、まったくお会いしたことがありません。最近になってそういう人に会うことが増えたということもありません。 また、業務の中で、ビジネスプロセスモデリングを行うことが多かったのですが、そのたびに、現場のお客様からも、「なるほど、うちの業務はこうなっていたのか、いままでさっぱりわからなかったよ」という声をいただきます。最初のうちは、お客様からの感謝の言葉をいただくのがただ嬉しかったのですが、10年間ずっと同じ状況が続くので、別の感想を持つに至りました。 プロセスの文書化、ビジネスプロセスモデリングに関して、大方の企業の現状は以下のようではないかと私は考えています。私の手元に統計情報等があるわけではないので、是非皆さんの意見を伺いたいと考えています。

5.1 現状のビジネスプロセスモデルによくある課題

共有がされていない。 情報システムの導入等の際に作成されたビジネスプロセスモデルはあるものの、現場で業務を行う人の目の届かない場所にある。 外部のコンサルが作成した業務フローが、誰の目にも届かないところにひっそりと死蔵されている。 断片的な資料が散在している。 関連のはっきりしない狭い範囲のビジネスプロセスモデルが散乱している。 同じ業務領域に対し、内部統制用、ISO用などで重複する複数のドキュメントが存在し、それぞれ書いてある内容がずれていて、どれが正しい情報なのかよく分からない。 内容の品質が低い。 不正確で現状と乖離している。 内容が古く、現状をキャッチアップしていない。 それを見ても仕事の手順は分からない。

5.2 まとめ

この10年で企業のIT化は進み、相当量のビジネスプロセスが情報システム化されました。次に述べますが、ビジネスを情報システム上で実施するためには、ビジネスプロセスモデリングによるホワイトボックス化は必須の作業であるため、少なくとも情報システム化する間に、大量のビジネスプロセスモデリングがなされたはずです。そのための手法や、専用のツールもあります。にもかかわらず、なぜこれほど状況に変化がないのでしょうか。 ここで、私の頭に浮かんだ考えは、ブラックボックス化するのがビジネスのメカニズムの基本的な性質であり、それはホワイトボックス化する手法が紹介されたとしても、よほどのことがない限り変化しないのではないかということです。

最終更新:2009年05月05日 09:31