SF百科図鑑

Christpher Evans "Aztec Century"

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July 29, 2004

Christpher Evans "Aztec Century"

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アステカ帝国が滅亡しないまま世界一の先進国となり、20世紀後半に世界を征服する&&という「もしも」の世界を扱った改変歴史SF。英国SF協会賞受賞作。抜群に面白い。
アステカの世紀 クリストファー・エバンス

第1部 悲しみの家

主人公(私)が見るのは燃えているロンドンの夢。実際の状況はもっと平凡で、夫アレクスと主人公はマルボロの家で戦火にあい避難、オケハンプトンでビクトリアと合流、ウェールズ国境へ行き、ウェールズ人の右翼に助けられ邸宅に保護された。だが、アステカ軍はロンドン、サザンプトンを落とした。更にノッティンガムとブリストルに侵攻。父と兄が戦死したか捕虜にされたかで消息不明となる。マーガレットはモスクワでツァー・ミハイルと無事だった。一定地点でアステカと休戦協定。モテクーゾマ皇帝のいとこノウヨトルがロンドン総督となり、三年経過。
ある朝、アレクスが私に「モスクワのマーガレットと連絡が取れ、助けの船が来ることになった」と話す。更に、コンピュータネットワークに入り込み情報窃取や破壊の出来る寄生虫ソフトのフロッピーディスクを見せ、「これでアステカ人に一泡ふかせられるぜ!」と吹聴する。ビヴァンは故障した太陽熱発電機の修理をしている。修理はうまくいかない。私がビクトリアと荷造りをしているとビヴァンが来たので、今日船で行くことを話し、来たければ母もつれてきてもよいと話す。ビヴァンは考えさせてくれと言って下がる。
その夜、アステカ軍の戦闘機三機が襲ってくる。彼らは逃走。アレクスは私にフロッピーを渡し家に戻るが、銃撃戦のあと、家は爆破される。わたしとビクトリアはビバンに案内され排水パイプ?に隠れるが、敵に見つかり拉致されてしまう。ビバンはアズテックのスパイだった?


私は気を失い、起きると医師とチコメツリと言う男がいる。男によるとアレクスらは死んだとのこと。医師は英語を解しないが、男は英語を話す。また、私は妊娠しているようだった。やがて、ビバンとビクトリアが通され、私(実はイギリス国王の娘キャサリン=ケイス)は、ビバンが隠れ場所を密告したと詰り、ビバンは否定する。やがてビバンだけが連れだされ、英国諸島の司令官マクシクスカが入ってくる。この男によると焼跡からアレクスの死体は見つからなかったから生きているはずだと言うことだった。チコメツリによると、フロッピーを入れたジャケットは燃やされたらしい。

飛行艇はロンドンに着陸し、わたしは窓からセントジェームズパークやモールを見た。わたしはまだ、ディスクをなくした自分に怒っていた。荒れた気分を最高に高めるのには、怒りこそうってつけに思えた。

ロンドンで弟リチャードと再会。父は四日前心臓発作で死去。ビバンは私が落としたと言ってディスクを渡す。私らは各自部屋を与えられる。ビクトリアは父の葬り方についてアステカ人への宗教的懸念を示す。


ビバンにディスクを渡し自分の部屋の端末で使ったところ、アレックスのシミュラクラが現れた。


父の葬儀。父の閣僚には死者や追放者もいたため欠席が目だった。英国国教会の協会長はアステカに協力し、弔辞を読み上げた。その後、リチャードの部屋で儀式が行われた。リチャードは次期国王になる気まんまんだ。アステカの傀儡なのに。アステカはカトリックに表面的には従っていたが、実態は雑婚、犬食いと言った風習を残している噂だった。次期首相候補はパークハウス。私は傀儡政権などごめんだというが、リチャードに止められる。
アレクスのソフトの解読は難航の末、ようやくアステカ軍の大量の情報引き出しに成功する。ビバンが味方の一味に渡してみるといい、私は迷った末任せることにする。


複合庁舎を案内されたあと、エステパンと会見。リチャードをアステカのシンパ国の外交官に会わせていることや、マクシクシカを北部軍の整備に向かわせていることを認めた。エステパンの母ドナ・マリアの絵や映画の話題も出た。


妹と墓参りのあと、エクステパンに町を案内され、パブで放置され屈辱を味わう。アレクスから引きだした情報を伝えたかとビバンにきくが任せろとしか言わない。最終的にビバンは、アレクスのシミュラクラに軍隊の配置情報を書きかえさせようと言いだす。


リチャード、王になる。クリスマスパーティ。マクシクシカは私がナフアトル語を解するのを知らず暴言を吐き、恥をかいて席をはずし、異母兄弟のチマルコヨトルがフォローする。アステカはスコットランド制圧準備を進めているらしい。ビクトリアはトラカヒューペンという男に襲われそうになり私が助ける。エクステパンはクリスマスプレゼントに子馬二頭をくれた。


馬にのって帰る途中、エクステパンが車できて急ぐように言う。行ってみると、夫アレクスの遺体が待っていた。エジンバラ城攻撃中に岩の下敷きになったらしい。

第二部 黒曜石の鏡

私はスコットランドの視察に行った。病院は負傷者と病人だらけ。特に、ニューインドポックス(ヨーロッパで大流行し、アステカの繁栄の一つの要因となった)のワクチンの不足による流行は深刻だ。エクステパンによると新しい立法で優先的に抗体が入手されることになったらしい。更に、エクステパンの伯父でアステカのナンバー2の地位にあるテッァフイトルが訪英するということで、私も半ばロンドン帰還を強制される羽目になった。


ロンドンに戻りビバンに不在中の状況をきく。マクシクシカがコンプレックスの中を家探ししまくったこと、ロシア侵攻計画中であること、エクステパンがメキシコに一時帰国したこと、リチャードとビクトリアがモナコ休養中であること。

「メキシコに一月いて、三月に帰ってきました」
「あら。何をしに?」
「さあ、知りません。みな、彼が戻ってきて喜んでいましたよ。いわば巨悪より小悪がましといったところでしょう。彼の兄にはみなびくびくしていましたから」
「リチャードとビクトリアはどこ?」
「聞いていなかったのですか?」ビヴァンはトレイからケーキを一切れとった。「休暇です。モナコへ」
「不満の遠まわしな表明かしらね」
「私の知ったことではありません」
無作法なビヴァンがまたそばにいることが自分にとっての慰めになることに、私は驚いていた。
「他には何か?」
「どういうことで?」ケーキを口にいれたままビヴァンが言った。
「どんなことでも」
「ロシアへの侵攻の機が熟していると思いませんか」
私はティーカップを取った。「今夜、アレックスに相談しましょう」

即席のアレックスがスクリーンに現れると、私は視線から身を引いた。ばかげているとわかってはいるが、本能的な反応を抑えることはできない。私はまだ彼に「見られる」ことへの心の準備ができていない。
私はビヴァンにID確認をさせた。
「ようこそ」とアレクスが答えた。
アレクスの電子イメージは以前と同じく都会的で、陽気ですらあった。その姿に私はいいようもないほど胸の痛みを感じた。
ビヴァンは私を振り返り、マイクを示した。私は首を振った。
「あなたが話して」私は小声で言った。
ビヴァンは驚いたかもしれないが、表情に出さなかった。彼はスクリーンに向き直った。
「いくつか知りたいことがあります」ビヴァンはアレクスに言った。
「お役に立てるとうれしいです」答えが返った。
「アステカがロシアを侵攻するという複数の噂があります。この件に関し、情報は?」
長い間があった。アレクスは明らかに考え込む表情だった。誰かが耳打ちしているかのように。
「陸軍と空軍は中央ヨーロッパと中国北西部全体に展開しています」と答えが返ってきた。「海軍はベーリング海とバレンツ海で作戦遂行しています。全体の状況を見ると、侵攻は差し迫っているように見えます。しかし、目的は、ロシア共和国連邦の軍をトルコとメソポタミアから撤退させ、パレスチナとアラブへの攻撃の不安を払拭することです。実際にロシア国境への侵攻が行われることはないでしょう」
アラビアとパレスチナはアステカの影響下にあり、数年来緊張が高まっている。アステカは太陽熱発電をものにしてはいるが、未だに産業やプラスチック製造の動力源を大きく石油の供給に頼っているのだ。とはいえ、専守防衛主義のロシア帝国による攻撃を本気で恐れているなど、今までとても信じられなかった。
「間違いないかどうか、きいてみて」私はビヴァンに小声で言った。
ビヴァンがきくと、アレクスは答えた。「確実です。アステカは、西ヨーロッパで奇襲を成功させるに足る兵力も装備も備えていません。手持ちの情報によると、モテクーツォマがあからさまにそれを禁じたとか。アステカは、連邦との間で国境線の攻防を演じるよりも、むしろ、連邦を中立化させることを望むでしょう。西ヨーロッパを征服して間がなく、必要以上の軍事行動は、帝国の資源の浪費になるでしょうから」
アレクスの画像は一瞬点滅し、安定した。ビヴァンは私を振り返った。
「どう思う?」私は言った。
「ご自分でお考えになったほうがよいでしょう」ビヴァンは答えた。
私は考えた。「マーガレットにメッセージを送れるかときいてみて。ロシア皇帝に」
今度はビヴァンも興味を示した。「ご自分でおききになったらいかがです?」
「お願いよ、ビヴァン」
ビヴァンは肩をすくめ、言われた通りにした。驚いたことに、アレクスはこう答えた。「ケイトがご一緒ですか」
「メッセージを送れますか」ビヴァンがなおもきいた。
「私の力の及ぶ範囲内であれば」
ビヴァンが私に言った。「何と伝えたいのです?」
「アレックスがいった通りのことを伝えて」私は答えた。「私からの私信として。私がアステカの極秘ファイルにアクセスした結果、アステカは侵攻を完遂できる資源を持たないと。メッセージは『シャーロット』のサイン付で」
ビヴァンは怪訝に見た。
「そうすればわかるから」

マーガレットへのメッセージを託したあと、アレックスは「盗聴されているから今夜は止めたほうがいい」といい、アクセスを切る。
二時間後私は待ちきれずアレクスにアクセス。テツァフイトルの来る理由をきくが、定かでないという。アレクスの意見は単に統治の状況を知るためだというが、チマルコヨトルが(ドイツへの用のついでとはいえ)来た直後で納得できない。しかし結論は出ず、アクセス切る。
翌日、エクステパンに呼ばれ、テノクティトランが明日来るので姉妹で迎えてくれと言われ、私は引き換えに苦情処理センター設置を求めると、意外にも承諾された。


船でテツァフイトル来る。私達は紹介される。テツァは私にあとで個人的に話したいという。
マクシクシカの私への抑えた敵意は相変わらずで、彼はアレクスを処刑していながら誤って死んだと嘘をついているという私の疑念は深まった。
テツァと食事後に、私は散歩に誘われた。テツァは、私が敵意をあからさまにするからこそ信頼できるといい、帝王の息子二人についてきく、エクステパンの治世ぶりはどうかと。私は、マクシクシカと交代させようとしているのではと敏感に感じ、「他の人よりはよくやっている」と答える。
私とビクトリアとリチャードは翌日のイングランドとアザニアのクリケット試合観戦に招待されるが、戻るとビヴァンに殺されるからやめろと止められる。反アステカ派がテロを計画しているらしい。私はリチャードに言うがリチャードは行くと言う。ビクトリアは不在でつかまらない。ビヴァンに爆破の場所を教えろと言うと「小耳にはさんだだけで知らないが、推論では広場だろう」と答えた。


結局二人はつかまらず、私は試合観戦する羽目になった。ビクトリアも途中で来た。何も起こらないまま午前の部が終わり、昼食になる。そこで、実はリチャードの告げ口で爆弾は撤去され容疑者を逮捕していたことがわかる。私は容疑者をどうすべきか、知っている人だがときかれ慈悲を請うしかないと答えざるを得ない。試合はイングランドがかろうじて勝った。(アザニアは英国の植民地でアステカが解放)


戻るとビヴァンは母が危篤でスコットランドに帰ったと言われ、アレクスのディスクもなくなっている。エクステパンはテツァと一緒に帰国し、マクシクシカが代行する。翌朝、ビクトリアは爆破未遂事件でクリケットのキャプテンと共謀したかどで逮捕され国外追放となる。


ビヴァンは10日後帰ってくる、ディスクを持っていた。本当に母が亡くなったといった。私はディスクでアレクスにアクセスし、真相をきくが、アレクスの答えは表面の事象をなぞるばかりだ。諦めて切ろうとすると後ろにマクシクシカがいた。ディスクは踏みつぶされた。

やばいわこれ、面白すぎてやめられん。もう朝だ。


エクステパンは帰ってきた。実は縁談で戻っていたことを告白する。しかし自分には他に意中の人がいるといい、エクステパンは私に求婚した。私が驚き、政略結婚はごめんだというと、エクステパンは、違う、リチャードとチマルコヨトルの娘が婚約したからその必要はないんだ、自分の自由意思なんだといい、私は二度びっくり。リチャードに翻意を迫るが、リチャードは娘にぞっこんで意思を曲げない。

ヤヴァイ、面白すぎる。


エクステパンは結局私にふられ、北米の娘と政略結婚する。リチャードとチマルの娘の挙式。前日、ビヴァンから、式の宮殿の近くに新しい設備ができたから機会があれば見よ、と言われる。式の途中で、私はアステカのザカトラトアに連れだされ、その直後宮殿が爆破される。私はフローターに乗せられ、付近のアステカの円錐型の建物に連れこまれる。その中央には不可思議な鏡のようなもののついた機械があった。ザカトラトアはアステカに滅ぼされたテキサスの民族の生き残りで反アステカ派だった。彼は機械の写真を撮りまくりながら、これをロシアに送れという。しかしその際中追っ手の飛行艇の音が聞こえ私は先に逃げるが、彼は逃げ遅れ爆殺される。私は敵が去ったあと宮殿に戻る。驚いたことに死者はなかった。更にエクステパンによると、ロシアがアステカ側に侵攻したため、アステカもロシアへの侵攻を始めたということだった。

第三部 火の蛇

エクステパンはロシア戦争で不在がちとなり、その妻プレシャスクラウドは妊娠したまま置き去りにされ、侍女のミアと夫の関係を疑う。アステカは元来多婚文化であり、カトリックの妻に合わせ一夫一婦の形をとるようになったとしても安心はできないのだ。そんなクラウドを私は乗馬に誘う(ちょうどビクトリアが追放され、馬が空いていた)。私はクラウドの不安を払おうとするがうまくいかない。ロシア戦役は、南方では侵攻が進むものの、北方のモスクワやペテルスブルグ侵攻に失敗したまま冬に突入し、難航していた。フェツァルコートルの建造物の目的は未だにわからない。マクシクシカは全アイルランドを制圧するが、ロシア侵攻の沿え物扱いでメディアの耳目を集めるには至らない。ロシアの版図は次第に狭まり、ついに降伏は時間の問題という状況になってきた。ロシアが降伏すればアステカは事実上世界を征服し、それを阻む見るべき存在はない。エクシテパン不在のロンドンには母方に英国人の血を引く穏健派の代行が統治し、不干渉政策で民衆に受容されている。日本人大使の交代レセプションが行われ、私はその場を利用してエクステパンにクラウドに気を遣えといさめるが、彼は戦争でそれどころでないとにべもない。そこへ緊急の知らせが入り、エクステパンは席を立つ。パークハウスによると、南方のアステカ2軍の合流地点で戦勝パレードの最中にロシアが都市を抹消する超強力爆弾を落としアステカ軍を全滅させたのでないかという噂だった。


私は週に一回ほど市民相談所で苦情をきく。その日、シンシアという老女の教育に関する苦情をきいていた。アステカの圧力で愛国心や自由意思を抹殺するような偏った教育がなされているという。私が調べてみると答えると、突然爆発音がしてエクセルシオルホテルに爆炎が上がる。私は救助活動を指示し、翌日の新聞で賞賛の扱いを受け、ビヴァンにからかわれる。爆発に関してはロシアの遠距離ミサイルだと報じられるが、内側から爆破されていたことから英国人のパルチザンによるテロと見るのが自然だろうと私は思った。この点に関して私はエクステパンに苦情を言ったが、エクステパンはそれどころではなかった。二人の兄弟をロシア戦役で亡くした彼は、直にロシア遠征軍の指揮をとるべき命を受けたというのだ。


クラウドの出産。私は本人の希望で立ちあう。ミアに立ちあわないでほしいといわれ、私はミアを呼びクラウドが恐れているというが、ミアはそれはおかしいと冷たい。エクステパンと結婚したかったのかときくが、立場上そんなことは言えずミアは立ち去る。その間にクラウドは男児を出産する。私はエクステパンに早く伝えねばというが、エクステパンのメッセージは、敵襲を懸念し早くロンドンから避難せよ、というものだった。


私はクラウドらと郊外に移動する。主にクラウドのリハビリのためであったが、自分が子供のための道具にされているという疑念に囚われたクラウドの精神状態は日増しに悪化し、ついには腹に女の子がいるという妄想に囚われる。私は赤子とクラウドを別室に移動させ、クラウドは少し落ち着き、私に乗馬に行きたいという。医師は止めるが私は応じる。クラウドは途中で馬を全力疾走させ森に消え、追って行くと馬だけ見つかり、湖の氷に穴が空いている。しかしそれは偽装で、湖の中にクラウドはおらず、やがて別の場所で、手綱で首をつっているのが遺書とともに発見される。責任を感じた私は、ロシアの前線のエクステパンのもとへ、自ら出発する。


私は小型艇でモスクワ近郊の前線の町に着き、ある邸宅に案内される。迎えた文官パクトリ(メキシコ人ではない)によるとアステカが落とし市長を殺害した、市庁舎であるとのことだが、嘘臭い。市長や市民は真っ先に逃げ出していたようだ。アステカはロシアの爆弾より強力な兵器があるから勝てるというが、その兵器が何かは言わない。夜、向かいの建物で物音がしたのでこっそりいってみると、教会で、中央のろうそくのともったついたての向こうには、アステカの神の絵に、アジア人ロシア兵の心臓のえぐられた死体がいけにえにささげられている。私は慌てて館に戻る途中、数人の兵士が現れるが、どけと叫び館に入る。パクトリに何をしていたかときかれ、散歩と答え自室に戻るが、先の敵か味方かわからない兵士が拉致に来るのを恐れて、徹夜してしまう。


翌朝、エクステパンが到着し、私はニュースを伝える。エクステパンは既に知っていたようだが、息子誕生の知らせに喜び、妻の訃報に悲しんだ。そして愛のない結婚をした自分の責任だと言った。またロシアの兵器は核兵器だということを明らかにした。アステカも昔開発していたが、荒廃しかもたらさない兵器だという理由で禁止され、爆弾以外で同じぐらい強力な兵器を開発した、ロシアが核でヨーロッパを滅ぼす恐れがある以上、威嚇のため局所的に使わざるを得ない、モスクワ近郊の都市に使うことを予告し避難を勧めてある、という。私は一緒に前線に行くことを申し出、列車で出発し、前線につく。その途中、前夜見た生贄の儀式のこと、エクステパンが宗教学校出身であることを指摘し、アステカはクリスチャンに改宗した今も古い信仰を引きずっているのでないか、生贄はエクステパンの指示でないかとの疑念を提示するが否定され、戦時中に虐殺を正当化するため宗教が利用されるのはキリスト教なども同じであると反論され、インド戦役で英国軍にアステカ兵士が大量虐殺され腹を十字型に切られたことなどを指摘される。現地につくとマクシクシカが前線を指揮していた。まもなく、秘密兵器のビームが使用され、天に強烈な光輝が走り、しばらく続いたあと終わる。エクステパンはターゲットの町が消滅したと告げる。


秘密兵器とは人工衛星で太陽光線を収束し、都市を一瞬のうちに溶解させるものだった。しかし、ロシアは無条件降伏せず核兵器使用を公言したため、マクシクシカの上申を皇帝が容れ、第二弾のビームが使用された。これによって私の姉マーガレットらも死亡した。ついにロシアは白旗を上げ、われわれはモスクワを制圧した。私は、あの円錐建造物の奇妙な装置はビーム兵器のミニチュアだったのではないか、と思った。

第四部 代弁者

我々は英国に戻り、リチャード夫妻のところへ行く。王妃は妊娠した。エクステパンは、ミアや息子とともにメキシコに戻らねばならぬが、私に一緒にきて皇帝に会って欲しいという。私が答えかねていると、ロンドンで爆弾テロがあり、首相他の閣僚が死亡したのですぐに戻れ、という連絡が入る。


私はビヴァンから、爆破はアステカが英国テロ集団と密通の噂のある首相を葬るための謀殺の噂があることを知らされ、エクステパンに疑問をぶつけるが、エクステパンは、閣僚に多数のアステカ人がいた、自国人を殺すような冷血扱いされるのは侮辱である、証拠を示せと反駁する。一部の異民族嫌いの高官の陰謀の可能性があると指摘すると侮辱の上塗りになると思った私は、それを自制する。エクステパンはメキシコに出発する。


結局私は最後の最後でメキシコに同行する決断をした。ビヴァン、弟夫婦も同行。メキシコの首都、湖上の人工都市に到着する。我々は皇帝に会う。私は皇帝に父のペンを献上し、ビクトリアとの連絡を請い認められる。車椅子の皇帝は我々を散歩に誘う。


ビクトリアの映像が届く。元気そうだが、せりふはシナリオを与えられているようだ。ビヴァンは、ビクトリアの電話番号を盗めないかやってみようという。ビクトリアに返事を出したいという願いは却下される。私はエクステパンにメキシコの名所旧跡を案内してもらう。ピラミッドの頂上で、エクステパンは私に再度求婚し、私は「ビクトリアの釈放」と「円錐建造物の装置の目的を教えること」の二点を条件に承諾する。


アパートに戻るとビヴァンが話があるというが、私は疲れていたので後にしてくれといい入浴して寝てしまう。ビヴァンは休暇に出かけてしまう。私は翌日、皇帝とその弟(副皇帝)の前で結納を済ませ、エクステパンは亡妻のことを詫びに北米に赴く。私はその後、ミアやエクステパンの親族と観光を続けるが、旅先で、エクステパンの交渉が決裂し北米がポトマックに侵攻し、エクステパンはアステカ軍を前線で指揮しなければならなくなったとの報を受ける。途方に暮れ毎日のニュースを見るが戦況は芳しくなく、北米諸国が次々寝返りエクステパンは補給路を立たれ窮地に陥る。私はチコメツトリに何故ビームで脅さないのか尋ねるが、それは双方にとって屈辱である、アステカは不名誉よりも死を選ぶという。ロシア戦役でも現れたアステカの特異な精神性をまたも思い知らされる。そこへビヴァンが休暇から戻る。ビヴァンは、ビクトリアが北京ではなく、メキシコ首都の南方の町に監禁されており、私のよく知っている人物と一緒であることを告げ、私は衝撃を受ける。


アレクスは生きていた、しかもビクトリアと夫婦同様の生活をしている。私と夫婦生活をしていたころから関係していたのでないか。アレクスが死んだというのは私をエクステパンと結婚させるために仕組まれたのではないかとすら私は疑う。私はチコメツトリに頼んでアレクスとビクトリアのいる宮殿に連れていかせ、ビクトリアの出かけたすきに訪問し、アレクスと対峙する。そこで、ビクトリアと同棲していることを知らないふりをして、アレクスに嘘をつかせ、皇帝がエクステパンと私の結婚をいやがっておりアレクスと会いたがっているとのつくり話でアレクスを連れだすことに成功する。


私はアレクスを部屋に連れこみ、盗聴されていることを期待しながら、アレクスと寝る。翌朝、私の期待通りに、マクシクシカが証拠のテープをつきつけ乱入し、副皇帝の下に連行する。皇帝は前日に死に、エクステパンはポトマックで包囲攻撃を受けている。戦争終了後に処分決定することとなり二人は地下房に収容される。その直前にアレクスが真相を語る。件のディスクははじめからアステカに嗅ぎつけられ、アレクスがアステカと取引して、私を通じて嘘の情報をロシアに流し油断させるために私に渡したこと、ロシアの船がくるというのも全員を館に集めて逮捕しやすくするための嘘だったこと、しかし予期に反して爆撃が行われたこと、メキシコにきたら女が欲しくなりビクトリアを要求し、ビクトリアも応じたこと、自分は女好きで最初からビクトリアと寝ていたこと。


私の独房にビクトリアも収容される。ビクトリアもアレクスの証言を裏付ける罪を告白する。アレクスには最初に酒を飲まされて犯され、脅されて関係を続けたが途中から快楽に変わったこと。アレクスが生きていることははじめ知らなかったこと。アステカの男たちと関係を持ったことをマクシクシカに写真などをつきつけられ脅されて、爆破事件の濡れ衣をかぶってアレクスと一緒になる道を選んだこと、しかしアレクスと一緒になってもやはり愛せなかったこと、ただ単に独りでいられなかっただけのこと。私はすべて副皇帝とマクシクシカが仕組んでビクトリアを誘惑させたと指摘し、ビクトリアも納得する。


数日後私達は連れだされ、乗り物で地下奥深く運ばれた後、上に運ばれる。そこで入浴した後、個室に入れられ、そこで食事を提供され再び監禁される。食事を食べ、酒を飲むうちに酔ってしまう。ビクトリアととりとめなく話しているうちに、エクステパンが現れる。そして二人を連れて別室に行く。そこには副皇帝がいて、エクステパンに皇帝就任の儀式を行う。足元で怪物のように無残な姿になったアレクスが這ってくる。ビクトリアは連れ去られ、エクステパンは、私を連れ円錐型寺院の頂上に出る。そしてあの黒い鏡の機械。エクステパンはそれが、別の地球への入り口であると明かす。私とビクトリアは姦通の罪で、別の地球への追放を言い渡される。私は口に何か甘いものを飲まされる。取り囲む人影の中に、ビヴァンがいたような気がする&&

エピローグ
私はもう一つの地球の故郷に相当する地の家で、ビクトリアと目覚める。一見元の地球と似ているが違っている。アステカは滅んで伝説の存在になっている。環境の違いにビクトリアは絶叫し、ショックで話せなくなる。どこまでが現実でどこまでがドラッグによる幻覚なのかもわからない。数日後、ビヴァンによく似た男が食料を配達に来る。何でも私たちの口座が開設されそこからの支払いの形で、何者かから注文があったという。男はアステカについては何も知らないようだ。私は少しずつ行動範囲を広げ、アステカの痕跡を探すが見つからない。例の鏡機械の建造物のあった場所に行くが、それと同じ物も、トンネルの出口らしきものも見つからない。一方通行なのかもしれない? 失意のうちに家に戻る。そこで、エクステパンからもらった結納品を見る。エクステパンはなぜこれを残したのか? そもそもビヴァンに似た男に食料を配達させるのは何故だ? 我々にまだ利用価値があるということではないか? 恐らく彼らはそのうちこの世界との間に次元の大きなトンネルを空け、侵攻してくるのではないだろうか? 私は来る日も来る日も空を見上げ、それを待ち望んでいる。

(終わり)

いやあ面白かった。ラストが「えっこれで終わり?」という知りきれとんぼなものなのが欲求不満だが&&。つうか短編のようなおちだな。でも面白かったから許す。

テーマ性★★★★
奇想性 ★★★
物語性 ★★★★★
一般性 ★★★★
平均4・0点
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