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Robert Charles Wilson "Darwinia"

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September 25, 2005

Robert Charles Wilson "Darwinia"

カナダ在住の米国作家の長篇 確かオーロラ賞受賞作
まあまあだった。
前半は、ディックばりの現実崩壊感覚と、バロウズばりのエキゾチックな冒険話が融合し、超弩級の傑作か? という感じだったのだが、謎が早めに解けてしまったあとは、普通のヴォークト調の形而上アクション小説になってしまった。後半も悪くはないんだけど、普通すぎるし、主人公がモータルな人間の生活を選ぶというラストの価値観も型にはまりすぎていて、意外性がなさ過ぎる(まあ、そのほうが一般受けはいいのだろうけどね)。良くも悪くも期待を裏切らない普通さというか。
前半は、20世紀初頭に「奇跡」によってヨーロッパが突然消滅し、謎の古代風の大陸「ダーウィニア」が出現するというショッキングな事件で始まる。そこにはダーウィンの進化論にしたがって別の進化系統をたどったかのような奇妙な生物が多数生息し、恐竜に類似した巨大爬虫類の骨なども発見され、人々はこぞって探検に訪れては、生物標本を持ち帰り研究した。写真家の主人公ギルフォード・ローは、探検隊に加わり、妻子をロンドンの妻の叔父の家に預け、ライン川を船で上って行く&&。
このダーウィニア大陸の生態系や冒険の描写がわくわくするオモシロさ。毛皮をかぶった蛇類似の動物など様々な奇妙な生物が登場。川で船が座礁したり、盗賊に襲われたりといった冒険を繰り返す。
これと平行して、ロンドンでの妻のストーリー(ギルフォードの乗る船が襲われたとの報を聞き、ギルフォードが死んだと思い、軍人の男と不倫関係になる)のほかに、ヴェイルという男のサイドストーリーが進行する。この男は、不死で、死者と更新し未来を予知する能力があるといわれていた。一見何の関係もなさそうなこの男のストーリーがあとで大きな意味を持ってくる。
第一の書のラストで、ギルフォードは、虫に足を刺されて倒れ、気を失う。その後に「間奏」と題して、いきなり宇宙規模のストーリーが語られ始める。ここで本作がただの改変歴史小説ではなくて、宇宙規模の話であることが明らかになるのだが、実を言うとこの最初の間奏部分(143/372ページ段階)のネタバレが激しすぎるので、謎解きの興味はこのあたりでほとんど失せてしまうのがやや残念。一種の情報宇宙論に近い話で、イーガンやヴィンジやバクスターなどのネタとあまり変わらない。要は、個々の人間精神をノードとして銀河全体で構成する巨大な生命が存在し、そのすべての情報が銀河規模のアーカイブに貯蔵されている(このアーカイブの情報が特殊なフィールドによって伝達され、生命の進化の歴史として再生される)のだが、このアーカイブ内に発生したバグというか、<模擬生命>によって、情報が勝手に書き換えられて再生されるようになってしまっている。ヨーロッパが突如、ダーウィニアにか変貌したのもそれが原因らしい。そして、主人公のギルフォードがただの人間ではなく特殊な存在であることもこの間奏の最後に明記されている。銀河規模の最終戦争の戦士であるというのだ。
第2の書では、「なぜか生き延びた」ギルフォードが更にダーウィニアの奥地に進み、奇妙な古代都市を発見し、そこにある構造物探検中にリーダーを失い、ロンドンに戻るまで(ロンドンは米軍に襲われ壊滅、妻は死に、娘はオーストラリア?に避難している)。これは妻にあてた書簡を随所に挿入する形になっている。ギルフォードは、古代都市探検以来、自分に似た幽霊のような男(<見張り>と自称する)に付きまとわれるが、この男は、ボストン生まれのかつてのギルフォードで、第一次世界大戦で戦死したが、その記憶を持ったままアーカイブ内に入り込み、擬似生命が作り出した様々な偽の歴史(ダーウィニアのある地球を含む)上に自らのアヴァターを送り込み、最終戦争を繰り広げているという。この世界のギルフォードもまたそういうアヴァターの一人であるらしい、という話を聞く。「アヴァターの」ギルフォードはこの話を拒否する。
第三の書では、オーストラリアで再婚し息子をもうけたギルフォードが、20年ぶりに娘と再会するが、正体不明の存在に襲われ、妻子を殺され、自らも銃弾に倒れる。そして、<見張り>ギルフォードによって復活させられ、過去のすべてのバージョンのギルフォードの記憶を持ったギルフォードとしてダーウィニア世界に送り込まれ、最終戦争を戦うという任務を受け入れる。
第4の書は、邪悪なデモン都市を舞台にした最終戦争。ギルフォードは、かれと同様アヴァターとして送り込まれた存在であるトム・コンプトンとともに、デモンたちと戦い、勝つ。サイドストーリーで存在していたヴェイルという男が、デモンの化身であったことが明らかになる。
エピローグで、<アヴァター>のギルフォードは、<見張り>(オリジナル)ギルフォードに、自分を現在のような不死の存在ではなく、普通に年をとって死ぬ人間に変えてほしいと頼み、かなえてもらう。死を前にした老境のかれが<見張り>ギルフォードの訪問を受け、後悔はないかと聞かれ、ないと答え感慨にふける場面で幕となる。
後半の展開が普通の形而上アクションSFになったことと、アヴァターのギルフォードのラストでの選択が陳腐なのが残念だが、アイデアはとてもよく、前半は非常にわくわくしたので、いちおう佳作には踏みとどまっていると思う。同じ作者の他の作品も読んでみたいという気になるほどには魅力を感じた。
テーマ性  ★★
奇想性   ★★★★
物語性   ★★★
一般性   ★★
平均    2.75
文体    ★★★
意外な結末 ★★★
感情移入  ★★★
主観評価  ★★★(31/50)
silvering at 22:07 │Comments(1)読書

この記事へのコメント

1. Posted by slg   September 25, 2005 22:27
さて、本書で「積読解消ノルマ」対象の原書長篇はすべて読んだ。あとは、短編集と、翻訳本のみ。今後は原書長篇に関しては、ゆっくりしたペースで気の向いたものだけを読むことにしたい(むしろ、既読本の再読がメイン)。
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