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帰郷(祭りは終わらない)

涼人さんの作品

忘却の彼の地

帰郷


「ただいま」
母さんはただ、黙ったまま迎え入れた
石に布団とは、よく言ったものだ
歳の浅かった俺は何も出来ず、生身に布団を掛けた覚えさえない
うっすら雪の積もった墓石に手をやる
雪は俺の手形を残して消えた。

最後にここへ来たのは16年前。
あの事故の後、奴が俺の手を引きながら来た。
奴は涙を流しながら土下座した。
俺はただ分からずに突っ立っている。
奴が土下座しているのは、救えなかった事に責任を感じてかと思った。
それがただの感謝と懺悔の支度だったなんて…。
「母さん、俺はあなたを不憫に思うよ。」
俺が包帯を外す。
その包帯を墓石の上に置いた。
火傷が雪に当たってチクチク痛む。
奴の形見というか、母の形見というか。
忌まわしい記憶が付き纏った。
「俺は母さんの前じゃ母さんの息子だった。
世間からは消された男さ。」
不意にぼやけた視界を拭う。
「だから『俺の棄てた名前』を母さんの隣に置いていくよ。」
真っ直ぐと母さんを見つめた。
もう誰もいない村で淋しかったろうに。
俺には今、これしか出来ない。
暫くして又包帯を巻いく。
いつもと変わらぬ俺になる。
それが初めて、心残りだった。
「さぁ、行こう。ここにもう用はない。」
説得する様に言う。
俺は今、完全にジェフ=ツリーシールドになった。
だが…もう少しだけ『名を貰った俺』で居たかった。
背を向け歩いていた足が止まる。
「…そうだ。もし俺がもう一度ココに戻ってこう言ったなら、
名前をもう一度く れ。」
振り返らずに言う。

「ただいま。ってな」

俺の足は自然と村の一番奥へ向かった。

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最終更新:2016年03月27日 20:19