「あっれぇ? お二人さん、こんな朝早くにどうしたのぉ?」
ぎくりとし、ネトシルとエルガーツは立ち止まった。まだ誰も起き出さぬ、朝早く薄暗い時間。旅の荷物を携え、村から出ようとする二人の背に声をかけたのは、昨日の旅人だった。
「お、お前こそどうしたんだ」
引きつった笑みのエルガーツが尋ねると、「朝の散歩ってすがすがしいよねぇ」と爽やかな笑みで返された。確かに旅人は、手ぶらの様子だ。
「ちょっと次の街ワイティックまで急ぐ用があって、早目に出る事にしたんだ。ほら、昼間はラーグノム出て危ないしさ」
「ふーん」
まさか、サーカス団をめちゃめちゃにしたので、騒ぎが村まで伝わらない内に慌てて逃げる所です、とは言えない。
「そういえば、昨日もお二人さん連れだって出てったよねぇ、夜中」
もはや笑顔すら保てず、はっとした顔で旅人を見る。この男、どこまで知っているのか。
「もーぉ二人で旅してる上に同じ部屋だったんだから、わざわざ外出て逢引ごっこしなくたっていいじゃん! そっちの君なんか昨日『彼女じゃない』とか言ってたくせに! それとも何、二人でサーカスの小熊とかこっそり見に行ったの!? えーどうして連れてってくれなかったのひどいひどいー!」
ずれまくった旅人の台詞に、二人は揃って脱力した。
「あー、まー、また今度会ったら、うん、仲間外れにしないよう気をつける」
内心ほっとしながら、エルガーツが答えた。地団駄を踏んでいた旅人は、それを訊いて笑顔を輝かせた。
「ほんとに!? 絶対ね! あ、僕はレコ。またどこかで会ったら、よろしくね! じゃあいってらっしゃい、元気でね!」
「ああ」
「またどこかで」
早朝とは思えない元気良さで手を振るレコに見送られながら、二人はドノセスを後にした。
「ま、近い内にまた会えると思うよ、君たちが派手な事してる限りはね……。ふぁ~あ、結局徹夜しちゃったよ、あの二人タフだなぁ。僕は寝よっと」
レコはそうひとりごちて、宿へ戻って行った。報告には小熊の可愛さの事も書いていいのかなぁ、などと呟きながら。
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最終更新:2012年01月23日 13:39