題名:巨人のあくび

概要:
巨人が百年の午睡から目を覚ますと、一匹の兎が彼の足首を齧っていた。兎は歴史家を自称し、泡の王家とその忠臣より命じられた歴史編纂事業に携わっているという。岩石に覆われた巨人の足を石版代わりに、爪先から頭に至るまでその鋭い歯を突き立てて、細かな文字を刻んでいく。巨人は兎の事業を認める代わりに、眠っている間の出来事を教えてもらうことにした。「では、私が寝ている間に何が起きたのか教えてくれるかね。この島はもっと賑やかだったはずだが」「そりゃあすっかり様変わりしたでしょうよ。貴方はちょっと瞼を瞑っただけかもしれませんが、僕ら兎にしてみれば何世代に匹敵するか分かりゃしませんからね」そうして、兎たちは仕事の傍ら、何世代にも渡って齧り続けられた歴史を読み上げていく。

最終更新:2014年06月30日 23:19