題名:長い目覚めの物語

概要:
 かつて、女族長が異能者を従える『魔女の国』があった。赤の族長の代、『魔女の国』は文明国の白の女王によって併呑された。何百年もの時の中で民族性は支配的文化に呑み込まれ、『魔女の国』の歴史は美しい御伽噺と化した。そんな時代、『魔女』の娘は長い眠りから目覚めた。
 自分が愛した世界はどこにもない。血族が書物や石碑になり、自分たちが他国の輝かしい歴史の礎のひとつとして語られる。何故自分だけが同胞に置いていかれ、長い時の旅人になったのか。
 時代の遺物のような己自身にさいなまれる彼女に、仇敵の血を引く若き女王は手をさしのべる。文明国が失ってしまった豊かな魂の生きた、亡国の精神文化を伝承し、復興させるために娘の手を借りたいと女王は言う。仇の血筋を、そして自分を独り遺した同胞を赦すことはできるのか。
 書物が過去の真実をはじめて『語る』時、少しなりとも現在も変わることができるのだ――。

最終更新:2016年06月01日 20:10