題名:先付の花
概要:
近所の配送センターにて早朝の仕分け作業員として働く僕は、週に5日、竹藪銀座宛ての荷物をトラックに載せている。
5月の2週目に入り、箱入りの花が届くようになった。母の日が近いのだ。僕は届いた花を片端から先付のパレットの中に放り込んでいたが、センター長から「0丁目の花だけはその都度宅配しなければならない」と指示を受ける。どうやら0丁目の花は全て《偉大なる母のための庭園》で指定日まで保管され、世界中に散らばった子供たちの声を送り届けるという役目を担っているらしい。
委託の坂爪さんと一緒に0丁目へ向かい、花を届けた後、いつものように置き去りにされた僕は、庭園の管理人から母の日まで届けた花の世話を任される。僕の仕事は花に向かって延々とメッセージカードを読み上げ、その花弁に子供たちの言葉を記憶してもらうというものだった。
最終更新:2016年06月27日 06:24