砂漠と隊商


砂漠の旅は陸の航海。
島のように点在するオアシスや町へ、渡り歩く旅です。
ここにはない、様々なものを求めて、人々は『陸の舟』たるラクダを率い、砂漠を越えていきました。

ここでは砂漠の旅について解説します。

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砂漠と人里

 生物が生きるために不可欠な『水』は、乾燥した砂漠地帯ではとても貴重な存在です。水が湧いていても、塩気が混じった辛い水も多く、真水が湧く水源はことさら貴重です。人々はそんな水源に自然に集まって暮らします。
 そして、水源と水源の間には乾いた砂があるばかり。
 それはさながら、海に浮かぶ島々のようだと例えられます。
 砂漠を旅する人々は、砂の海を、オアシスと言う島を巡って渡る航海者であると考えると、砂漠の旅のイメージがしやすいかもしれません。

隊商と生活

 隊商貿易といってしまうと、金銀や贅沢品を積んで外国へと売りさばく、大きな商売のように聞こえますが、砂漠の暮らしと隊商とはもっと身近で密着した存在でした。
 水の不足は農地の少なさと直結しています。日々口に入る穀物も、育てられるところが限られていました。作物の育ちにくい場所に住んでいる人々は穀物を得るために、自分の街の特産品を載せた隊商を組んで、行商へ向かいました。
 ニジェールのビルマ村では村で取れる塩を、700キロ離れた街まで運んでいるそうです。

 交易そのものを商売とする交易商人は、大きな町に店を構え、いくつものキャラバンを組んで様々な商品を国内外へと輸送していました。

交易路と道しるべ

 隊商が通る、交易路と呼ばれる道は先祖代々伝えられ、旅人が踏み固めて出来上がった自然の道です。
 砂ばかりで何もないと思われる砂漠ですが、意外と目印はたくさんあるそうです。砂漠の民は外国人なら見落とすような些細な違いも記憶しているのだとか。隊商はガイドとして、現地の人間や遊牧民を雇ったりもしました。

  • 木や岩
 木はやはり、圧倒的に少ないからでしょうか。平坦な場所にぽつんと生えてたら、確かに目印っぽい気がします。
 岩は、風や水で削られた、特徴のある形をしたものや、うっすら見える鉱石の筋などを目印にするのだそうです。

  • 星型砂丘
 様々な方向から吹く風によって巨大な山のようになった砂丘。上から見ると放射状に筋がのび、星のように見えるためにそう呼ばれます。砂漠と聞いて思い浮かぶ大きな砂の稜線がそれにあたるのかなと思います。この砂丘はほとんど移動しないので、大切な目印とされているそうです。

 昼間は太陽、夜は星の並びによって方向を見分けて旅を進めている、というのは、星読みさんのいらっしゃるcaravanでは周知の事実。夜は星に加え、月明かりがあれば地形の把握もでき、より的確に方向を定められたようです。

あとはワジ(涸河)の跡とかも目印になりそうな気がします

オアシス

 地下から湧き水で、水脈から滲んで地表にポツリと現れます。水脈に小さな井戸を掘り、人工オアシスとしていることもあります。オアシスは大抵は無人なので、隊商は場所を把握しておかなければなりません。
 しかし頼みの綱のオアシスも、年によっては涸れる事があります。そのためにキャラバンが全滅する事態もあったようです。涸れた水源のそばには、そこで力尽きた者達の亡骸があるかもしれません…。

移動

 移動は昼夜問わず行われていました。むしろメインは昼間の様子。
 夜のほうが涼しくていいのかな、と何となく考えていたのですが、(ネットでもそういう記事を読んだりしましたが)そうでもないようです。
 普通に夜行性の野獣や盗賊がでそうですし、なにより『夜はジンの領域』です。
 本来の意味でのジンは悪霊的な意味合いが強いので、日本人が幽霊を怖がるような感覚で岩陰の気配に怯えたりするとか。caravan世界だと野生のルフにあたります。
 先ほど挙げたビルマ村のキャラバンは、日の出とともに出発し、夜中の一時までずっと歩き続けた日もあったそうです。

襲撃者

 旅の邪魔者と言えば、獣に盗賊。気温のさがる夜中は、とくに野生生物の活動時間です。狼に襲われる、蛇に足を噛まれるなどの危険があるでしょう。(caravanでは蛇は神聖なので、逆にラッキーなのかもしれません)
 盗賊は金品を狙う単なるならず者に加え、実はそばに住む遊牧民だったと言うこともあります。アラブの気質として、略奪はままスポーツ感覚で行われています。略奪者が遊牧民の場合、礼儀として砂漠で旅をする最低限は置いていってくれるようなので、その点は安心…かもしれません。無為な攻撃を防ぐために、彼らの領地を通る時にはみかじめ料を払うのが通例です。
 また激しい気候は、命を奪っていく襲撃者になります。熱い砂を巻き上げる砂嵐や、遠い水源のように見える蜃気楼は、旅人を迷わせ、体力を奪います。

キャラバンソング

 砂漠には音がありません。雪が音を吸うように、砂が音を吸ってしまうのだとか。
 隊商の進む道行きには、ただラクダの足音のみ。
 その寂しさを紛らわすために、一律のリズムを刻む歩調に合わせ歌を歌うことが良くありました。それがキャラバンソングです。
 ラクダは砂漠の静寂の中の生き物のだからか、よい音色に反応するそうです。
 良い声の持ち主が歌えば、人の気持ちは慰められ、ラクダも揚々と進みます。
 詩人さん、出番ですよ!



オススメリンクと参考文献

科学のアルバム 砂漠の世界 片平孝 1985
イスラームの都市世界 三浦徹 1997
ラクダの文化史 堀内勝 1986
商業帝国イスラムの謎 H・ゲオルグ・ベーア著 金森誠也訳 1998

  • 砂漠の旅に関して詳しいサイト、見つけたらご報告くださいっ

その他メモ

食器を洗ったりするのに、砂を使うらしいです。
太陽熱で殺菌されているから清潔!という感覚のようで…
でも普通にトイレとかないし、催した場合その砂の上で用を足すわけですが…
最終更新:2009年07月06日 15:40