「空間が……!?」 ふとみずかが漏らした言葉に久瀬が敏感に反応する。 空間操作能力に長けるみずかが感じた空間への異変……やはり何か重大な事が起こっている証拠なのか。 魔神との対決をメインにしながらも幾つかの厄介事との関わりを持っていた久瀬。 今回もその厄介事の一つという事だろうか。 「久瀬さん! この空間が別の空間と繋がったわ!」 その言葉に久瀬も空間への意識を強く向け、異変への理解を深めようとする。 久瀬にも空間操作能力があるため、ほんの僅かな変化ではないならば直ぐに分かる筈なのである。 ……成程、確かに空間の持つ力が根底から増幅しているようだ。 「異世界……。つまり、向こうの住人も同じような異変を体感している可能性がある訳か」 「そういう事になるわね」 空間の狭間のような世界に触れた事こそある二人だが、完全な別空間は二人も初めてだ。 それだけに今回の異変に対しどのように動くのがベストな選択なのかというのも分からない。 そして動くにはあまりにも情報が少なすぎた。 「ふふふ……やっと異変に巻き込まれた人を見つけたわ」 突如、久瀬たちの目の前の空間に裂け目が現れ、そこから傘を持った人影が現れた。 特殊な登場シーンと怪しげな雰囲気漂うその彼女に久瀬は驚きを隠せなかった。 「あなたは一体誰なのだろうか?」 「私は八雲 紫。普段は幻想郷って世界に住んでるんだけど、この異変で飛ばされちゃってね。解決の協力者を探してるのよ」 彼女の言う、飛ばされたというのは恐らく空間の事であろう。 久瀬は幻想郷という場の存在は知らないのだが、既に空間結合を感じ取っているので疑心はまるでない。 逆に異変解決の手掛かりとなりそうな紫の登場に内心少し喜んでいたりもする。 「私は久瀬。あなたと同じく異変解決を目指している者だ」 「私は久瀬さんと旅をしてるみずか。私も異変解決には協力したいんだけど、これからどうしたら良いのかしら」 二人の自己紹介に紫は微笑を浮かべる。 協力者を得たことへの喜びという意味合いが強いのか、また全然別の意味合いなのか本人以外は分からない。 「まずは幻想郷の私の仲間にコンタクトを取りたいわね。それと、他の協力者を探すことかしら」 紫は既にこの異変は幾つもの世界が抱えた悩みだという事を悟っていた。 一つ二つ所ではなく数十もの世界同士の複合……協力者は多ければ多いほど良い訳だ。 「心得た。最初は幻想郷という世界を目指せば良いのだな」 新たな仲間の加入と解決への第一歩に満足感を覚えながら久瀬は長い旅への決意を強くした。