光輸送問題の定式化には放射分析学(radiometry)による記法と,測光学(photometry)による記法がある.
両者の主な違いは,放射分析学が電磁放射全般を扱うのに対して,測光学は可視光線を中心に扱うことである.レンダリングの分野では,放射分析学による表現を好んで使う.一方で,建築や写真の分野では測光学による表現を好む傾向がある.両者は用語がよく似ているので,資料を読み進めるにあたってはその解釈に注意を要する.
放射分析学の物理量
放射束
放射束

は,単位時間当たり,光源から放射されるエネルギーである.
ここに,

: 放射エネルギー,

: 時間.
放射強度
放射強度

は,単位立体角あたりの放射束である.
ここに,

: 放射方向.
放射輝度
放射輝度

は,単位面積あたり,単位立体角あたりの放射束である.
ここに,

: 光を放射する面の面積,

: 光を放射する面の法線ベクトル.
放射輝度は放射方向から見た微少面の面積を基に定義されている.

は,

にかかっていて,光の放射方向から見た微少面の面積を表している.
放射輝度はある面が,ある方向に放射する光の量を表しており,レンダリングにおいて最も重要な量である.レンダリングとは,カメラから見えている面が,カメラに向けて放射する光の量を求める計算に他ならない.
測光学の物理量
光束
光束

は,放射分析学の放射束に対応する物理量で,放射束を波長毎の視感度

で重み付けすることで得られる.
光束の単位には,SI単位系では

(ルーメン)が用いられる.
視感度

は,観測者(或いは観測装置)によって異なるが,ヒトの標準的な視感度曲線には,CIEの標準観測者がよく用いられる(例えば,理科年表にCIE標準観測者の波長毎の視感度が記載されている).
照度
照度

は,単位面積あたりの光束である.
ここに,

: 受光面の面積.
照度の単位には,SI単位系では

(ルクス)が用いられる.照度は面に入射する光の明るさを表しており,室内照明の設計指標や,写真撮影における設定の指標として広く用いられている.
参考文献
- Henrik Wann Jensen著,苗村健訳.フォトンマッピング―実写に迫るコンピュータグラフィックス.オーム社,2002,215p.
- 国立天文台.理科年表.平成15年.丸善,2002,942p.
最終更新:2014年10月11日 23:30