ニューケインジアンモデルの妥当性について検討した論文を読みました。著者は、実物的景気循環理論のテクニックの部分を支えてきた研究者たちによるものです。ノーベル賞を取った経済学者は、実物的景気循環理論のコンセプトを提示しました。しかし、その後の発展を支えるテクニックを開発したわけではありません。テクニックの開発は、Christiano教授を中心とした研究者グループが担ってきました。著者たちは、この研究者グループの中核です。論文のテーマは、ニューケインジアンモデルの政策の応用の妥当性です。欧州中央銀行は、政策意思決定のツールとして、ニューケインジアンモデルを採用しています。それに対して、著者たちは、ニューケインジアンモデルが、政策意思決定に影響を及ぼすことを批判しています。彼らの主張は、簡単です。政策意思決定のツールになるほど、ニューケインジアンは成熟していないと指摘している。彼ら自身も、ニューケインジアンモデルによる論文を数多く書いています。それだけに、ニューケインジアンの弱点も熟知しています。第1に、ニューケインジアンの弱点は、衝撃の種類を区別できないことです。経済を変動させる要因には、貨幣的要因、財政的要因、技術的要因等色々あります。カリブレーションにより、貨幣的要因により、現実の経済変動を再現することが出来ます。同時に、財政的要因により、現実の経済変動を再現できるのです。つまり、現在の研究水準では、どの衝撃でも、現実の経済変動を説明できるのです。逆に言えば、現実を説明できる複数のモデルを組むことが可能になります。第2に、ミクロの問題です。価格の粘着性は、存在します。ただし、ニューケインジアンが必要とするほどの粘着性は存在しません。最近、バーコードによるデータによる研究が盛んです。価格の粘着性は存在しないという結論が出ています。では、ニューケインジアンの研究は無意味なんでしょうか。そうではありません。モデルをつくることにより、経済をいかに見るべきなのかということを提示することができます。それは、意思決定を直接するものではありませんが、重要な役割を担っています。
最終更新:2011年01月31日 08:17